前代未聞!セリフも字幕もない映画『ザ・トライブ』|耳の聴こえない少年少女の青春を描く

4月公開予定の映画、『ザ・トライブ』は、カンヌ国際映画祭批評家週間で3冠を受賞した作品で、セリフも字幕もなければ、ナレーションやBGMさえない異色の衝撃作。

耳の聴こえない少年少女の青春を描いたもので、性的な描写や暴力シーンなど過激な内容も含まれている。音のないギャング映画とも形容され、出演しているのは、実際にろうあ(耳に不自由のある)の役者達だ。

静寂の中にある
暴力と愛

85singo_スクリーンショット 2015-04-15 13.46.40

耳が不自由な青年セルゲイは聾学校に入学する。一見、普通の寄宿学校ではあるが、裏には麻薬、売春などを生業にしている暴力組織「トライブ(族)」が存在していた。ある日、組織のリーダーから数人を相手にした殴り合いを強要されるが、そこで意外な屈強さを示したことで、グループへと引き込まれることに。

85singo_8516c263a52a411a749186e46ce9ee14

ドラッグの密売や、売春の送迎役をしていたセルゲイだったが、次第にリーダーの愛人であるアナを愛するようになる。ウクライナを離れてイタリアでの生活を夢見る彼女にとってはお金が全てだったが、セルゲイの想いに触れることで、徐々に心の中で葛藤が大きくなっていく・・・。

出演者はすべて、ろうあ者

85singo_スクリーンショット 2015-04-15 13.45.04

アナを演じたヤナ・ノヴィコヴァを含め、出演者全員がろうあ者で構成されている。作品中に描かれているバイオレンスシーンには、言葉や叫び声などがない。生身の人間がぶつかり合う音だけの暴力シーンはかえって生々しく、強烈だ。

85singo_スクリーンショット 2015-04-15 14.31.54

ミロスラヴ・スラボシュピツキー監督はこう語っている。

「これは私の学生時代の想い出と、ろうあの代表者達が語ってくれたことに基づいてつくられたものだ。彼らのコミュニケーションの取り方や、ジェスチャー、喧嘩の仕方に惹きつけられた。ボディランゲージで感情や心情を実現していた。それが吹き替えなし、字幕なしで映画にしたいと思った理由だ。この映画をけっして声の出る俳優達でつくろうとは思わなかった。それでは全く違うものになってしまっていただろう。私たちは発音に必要な顔の筋肉しか使わないが、彼らは体全部を使う。それが自然なんだ」

主演女優
「ヤナ・ノヴィコヴァ」

85singo_4712074e663520c0a134d44f9c014191

ヤナは幼い頃から女優を夢見ており、キエフ・シアター・アカデミーのオーディションでこの映画のミロスラヴ・シュラボツピツキー監督の目にとまった。当初は、過激なシーンがあることも知らなかったという。

「私はこれまでに演技経験もヌードの経験もありませんでしたし、何より、脚本にも書かれていないことだったので最初は断りました。しかし、その後、監督と監督の奥さんと演出について話し合い、裸になることやセックスを演じることがくだらないポルノではなく、映画にとってきちんとしたメッセージを伝えるうえで重要な演出だと説明がありました。それに、私はろうあの役者が耳の聞こえる役者と同じように演じることができるってみんなに証明したかった。それで、私は勇気を持って演じることを決めました」

主演男優
「グレゴリー・フェセンコ」

85singo_スクリーンショット 2015-04-15 14.49.30

元々ストリートカルチャーにとても強い関心を持っていて、実際にパルクール(アクロバティックに街を走るフリーランナー)のプレイヤーであり、ルーファー(吊り橋や鉄塔など、危険な高所に身一つで昇る行為を楽しむ人)でもある。

撮影期間中は、ストリートの仲間達との接触を絶ち、アルコールを飲むことや、抗議デモへの参加を厳しく禁じられていた。後からわかったことだが、それらの禁止令は再三にわたり破られていたそうだ。

85singo_f41c0df1411a91244993632579d06f42

個性的な若い俳優によって描写された、あまりにもピュアで、パワフルな作品。刺激が強いこともあり、評価は賛否両論だ。映画の終盤で席を立ってしまう人も多かったという。

『ザ・トライブ』は4/18(土)より順次全国公開。都心では渋谷ユーロスペース、新宿シネマカリテなどで公開が予定されている。国内でも様々な議論を呼ぶことになりそうだ。

Licensed material used with permission by © GARMATA FILM PRODUCTION LLC, 2014
© UKRAINIAN STATE FILM AGENCY, 2014
配給:彩プロ/ミモザフィルムズ

 

好きな映画から好きなワンシーンを抜き出して描くイラストレーター長場 雄と、好きなセリフを抜き出し好き勝手に解説を描いたライターの鍵和田啓介。6つのジャンル...
ジャケット写真も、出演者の情報もない。たったひとつのセリフだけをみて、心に刺さった作品を選んでみる。
好きな映画から好きなワンシーンを抜き出して描くイラストレーター長場 雄と、好きなセリフを抜き出し好き勝手に解説を描いたライターの鍵和田啓介。6つのジャンル...
いまやコーヒースタイルの定番になりつつある「コールドブリュー」。じっくり時間をかけて抽出するわけですが、これをもっと美味しく飲む方法がありました。
普段何も考えずにつくっていたドレッシング。調味料を加える順番があるって知ってました?
『エターナル・サンシャイン』で監督を務めたミシェル・ゴンドリー。彼がiPhone7のみで撮影した11分の短編映画「Détour」が、Apple社の公式Yo...
 その遺跡は突如として現れる。イスラエルの隣国、ヨルダンにあるペトラ遺跡。ペトラとは、ギリシャ語で崖を意味する。この遺跡は、映画『インディ・ジョーンズ ...
野外映画祭やレストラン併設シアター、動く映画館など、今いろんな形で映画を楽しむ機会が増えています。ここテキサス州・オースティンにも、少し変わったムービーシ...
『タクシードライバー』、『イングリッシュ・ペイシェント』に『シングルマン』。愛を失った男を描いた映画って、これまでどれほどたくさんあったた...
数千のヌード絵をデータとして取り込んだAIが描いた作品が、Twitter上でちょっとした話題になっている。「次世代のアートが生まれたかもしれない」って。
バルセロナにあるデザインスタジオBel&Belがつくった、電動立ち乗り二輪車「Z-Scooter」の紹介です。
「モダン・ダンスの祖」と呼ばれる女性がいる。19世紀末のパリ社交界でトップスターの座に上り詰めて、のちのダンス界に多くの影響をもたらしたロイ・フラーだ。鮮...
コレは大ニュース!宙を浮くスケボー、「ホバーボード」が遂に現実に! Reference:KickstarterSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に...
古今東西のカルチャーについて独自の視点から好き勝手に論じる『ジェフの勝手にカルチャー論』。Vol.57
本作品『危険な関係』は、フランス貴族社会を舞台にW不倫をする夫婦の物語。外交官の夫、美貌の若妻。世間的にみれば眩いパリの社交界で注目を集める2人。だが、密...
私は耳が聞こえないことを障がいだとは思わない。そう語るのは、映画監督の今村彩子さん。彼女は生まれながらにして耳が聞こえない。学校では友達の輪に入ってお喋り...
ビーチに設置された300インチの大型スクリーンで、星空の下、海風を感じながら映画を見る──。ゴールデンウィークにいつもとちょっと違う体験がしたい人には、開...
あんなに小さいのに、こんなに「よくできていた」んだね。
耳の聴こえない人はどうやって気になる人をデートに誘ったり、誘われたりするの?耳が聞こえる、手話ができない人との恋愛は?など、普段は聞けない聴覚障害者の恋愛...
ウクライナにある少年刑務所の壁に描かれたのは、飛行機を操縦する男の子の巨大なイラスト。アーティストのMilloが描いた壁画には、「罪を償いながらも人生の可...
ライオン、クマ、トラが並んでいるこの写真。なぜこんなに仲睦まじい姿で写ってるのでしょうか。不思議ですが、これには理由があったのです。写真の場所は、非営利の...
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』に登場したホバーボードが遂に登場!?しかも、発表したのはあの人気自動車ブランド「レクサス」だ。まずはこの...
「超実験的!」主催元のチームラボがそう言ってしまうほど、前代未聞のイベントがあります。ここまで潔く表明されると、逆に気になって仕方がありません。音楽フェス...
ハロウィンの時期も近づき、ホラー映画で恋人との距離を縮めるためにも、名作ホラー映画を一緒に鑑賞してみてはいかがだろうか。『エクソシスト』、『シャイニング』...