「大丈夫です」実はNGだった・・・やってはいけない失礼な敬語5つ
大勢の人がコピーする「マニュアル敬語」、ちょっとおかしい「コピペ語」など、周りの人の言葉づかいにつられ、あなたもつい使ってるのでは?ここで、流行語化した語句や表現を見ていこう。
01.
敬語指数マックス?
~して頂ければと思います
「~してもらってもいいですか」と同じように「~してください」の意味で用いられているのが「~して頂ければと思います」である。
「この機会にぜひご入会頂ければと思います」「ごらん頂ければと思います」
依頼、願望、養成の表現として用いられており、使用者はこれば敬意の度合いの高い表現だと思っている。しかし慇懃無礼な表現である。「ぜひご入会ください」や「ごらん頂けますでしょうか」などのほうが低姿勢なのではないだろうか。
この表現は「~して頂ければ幸いに存じます」「~して頂ければ大変ありがたく存じます」などの途中の部分が省略されている。実はそこが肝腎なところなのだが、なぜか飛ばしている。日本人ならではの察しのよさとも言えるが、言葉を発する側にしてみれば、堂々と手抜きできるわけだ。
02.
「感動をありがとう」に影響?
メールをありがとうございます
「ありがとう」の前には「を」が入らないのが普通だ。ところが、ここに「を入れ」現象が見られるようになった。
「メールをありがとうございます」「ご指摘をありがとうございます」
「山田さんがメールをくれた、ありがたい。山田さん、ありがとうございます」からいろいろ省いて、「メールを」「ありがとうございます」だけ残したのか。
ここに「を」入れてしまったのは、スポーツ選手の活躍に感激したときなどに発せられる「感動をありがとう」が頭をよぎったからだと思われる。これは単に「を」を取ればいいという問題ではない。この表現は自分があくまで観客であることを示している。「よかった。感動をありがとう。次は誰が私に感動を与えてくれるのか、楽しみだ」と次の出し物を無邪気に待つお客さんだ。感動をもたらした相手に感謝の気持ちを伝えたいなら、感動の中身に言及して、喜びを具体的に表現すればよい。
03.
抵抗感のある報道用語
~ことがわかった
「~したい考えだ」「~とする」「~ことがわかった」「~が明らかになった形だ」など、報道業界用語とでも呼べる文末表現が複数ある。中でも最も使用頻度の高いものが「~ことがわかった」である。本当にわかったのかと聞きたくなることも多いが、この表現を大学生が授業のコメントに借用するのだ。
「日本語は難しい言語ではないことがわかった」このような書き方をする。授業で学生たちに間違ったことは伝えていないつもりだが、わからないことも山ほどある。物事はそんなに簡単にわかるものではないとも思っている。学生が安易に書く「~ことがわかった」に抵抗を覚えるのはそのためだが、彼らは報道文を手本にしているのである。
大学生はコピペする。自分が書いたり話したりするときに、日ごろ見聞きする表現の一部を借用するという、ごく当たり前の行動だ。そのようにして学習し、自分なりの表現を獲得していく。手本となるものを提示するのが、大人たちの仕事である。
04.
「耳ざわりがよい」はOKで、
「目ざわりがよい」はNG?
「耳障りだ」というのは、耳に入ってきた音や声が不快であることを表す形容動詞である。目に入ったものが不快であれば「目障りだ」となる。音か光景かの違いしかないが、「耳障りだ」のほうだけ「耳ざわりがよい」という表現が使われるようになった。「聞いていて気持ちがよい」という、「耳障りだ」とは正反対のことを表す。
「耳ざわりがよい」の対義語が「耳ざわりが悪い」なのだそうだ。それなら「耳障りだ」と言えばよいではないかと思うが、そう単純な図式ではないらしい。「耳ざわりが悪い」とは「話の内容が、聞き手にとって厳しい」ことのようだ。
「『優しさや思いやりが大事』という言葉は耳ざわりはよいのだが」などと使われる。慣用になりつつあるが、「目ざわりがよい」は使われていない。どうしてなのだろう。
05.
いるの?いらないの?
お茶のおかわりは大丈夫です
人の好意を断るときや辞退するときに「大丈夫です」が使われている。「結構です」を使う人が減ってきている。「いいえ、要りません」などと違って、丁寧に断るときの言い方なのだが、きっぱりと拒絶するときにも使われることから、自体の表現としての使用が避けられる傾向にある。しかし、コンビニで「お箸はおつけしますか」と聞かれ「大丈夫です」と答えたら箸が添えられていたなど、いつでもどこでもだれにでも通用する表現ではない。
では「お茶でもいかがですか」という親切な申し出を「結構だ」も「大丈夫だ」も使わずに断ることはできるのか。もちろんできる。たとえば「ありがとうございます。でもすぐに失礼いたしますので」のような言い方がある。
そして、表現と同じくらい、おそらくそれ以上に大切なのが、口調と表情だ。心づかいありがとう、という気持ちを声や顔で表すのである。「大丈夫だ」を皆が使っているからと安易に模倣するのではなく、自分で表現を工夫してみることを提案したい。
『失礼な敬語 誤用例から学ぶ、正しい使い方』
コンテンツ提供元:光文社