聴衆の記憶に残るプレゼンとは?心理学的に正しい13の方法(前編)

スーザン・ワインチェク

米ヒューマン・ファクターズ・インターナショナル社UXストラテジー部門の責任者。心理学博士。心理学の最先端研究をデザインに応用する方法を、30年以上にわたって研究し続けている。

あなたはプレゼンを終えた時、大成功だったと思うことが多いですか?それとも「違うことをやればよかった、言えばよかった」と後悔することが多いですか?後者の場合、あなたは一流のプレゼンターになれる素質があります。

すばらしいプレゼンをするためには聴衆の心理を学ぶのが得策です。今回は自分のプレゼンを聴衆の記憶に残したい時に役立つ方法の一部を、拙著『心理学的に正しいプレゼン−聴衆を納得させる99のアプローチ』から紹介しましょう。

01.
先に要約や概要を伝える

プレゼンを行うというのは、通りすがりの人に近寄って、自分の考えをまくしたてるようなもの。相手がそのテーマについてあまり知らないこともあります。また、聞く準備ができていないこともあります。

相手をひるませないためには、予備知識を与えなくてはなりません。
事前に情報の要約を示すことで、これから聞く内容を理解しやすくします。

・簡潔な要点を示すスライドの見出しを提示
・詳しい内容を話す前に、発表の流れを図示
・プレゼンに含むテーマの概要や一覧を提示
・プレゼンの初めに、話す内容の背景を示すストーリーや、短い要約を紹介
ということをしておきましょう。

02.
相手の信じている
物事を利用する

iPhoneで話しながら午後のエクササイズのためにiPodを充電し、MacBookProからiPadに映画を転送する……。私はそんな頑固なアップル信者です。その私に向かって同僚がAndoroid携帯の素晴らしさを唐突に得々と語ってきました。こんな場合、どういう展開が考えられるでしょうか。同僚の話にちっとも聞く耳を持てなかったという状況が、容易に想像できるのではないでしょうか。

人は、自分の信じることを裏付ける情報や合図に、関心を向けます。信念の支えにならない情報は求めず、それどころか無視したり、軽んじたりもします。心理学者はこの選別を「確証バイアス」と呼んでいます。

プレゼンにこの「確証バイアス」を利用しましょう。聴衆が信じているであろうことから話し始め、意外な情報を提示して驚かせるのです。

たとえば、iPhoneはすばらしいということから話し始め、しかしスマホの販売数の50%以上はAndroidだということを提示するのです。聴衆は驚き、聞き耳を持つようになります。

03.
ストーリーを使う

「数年前、私はある教室で、その場にいるのが退屈だと思っている人ばかりを前にして……」と話し始めると、人の注目を引くことができます。ストーリーは情報の理解を助け、因果関係を示すのに有効な手段です。

しかし、何もないところにストーリーが因果関係を作り出してしまうということもあります。たとえば、「ジョーイの母は、ジョーイに怒りを爆発させた。翌日、ジョーイの体はあざだらけだった」という話をしたとすると、直接そう話したわけではないのに、大多数の人はジョーイの母がジョーイを殴ったと認識します。また、多く聴衆は少し経つと、「ジョーイの母親がジョーイを殴った」という話を聞いたと、思い込んでしまいます。

逆にいえば、ストーリーは因果関係を簡単に跳躍させることができるのです。もし、聴衆にある考えを納得させたい、何かの行動をとるように説得したいなら、ストーリーを使うと良いでしょう。

04.
「1度に4つまで」
の原則に従う

ユーザビリティ、心理学、記憶の研究に詳しい人なら、「マジカルナンバー7±2」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。ある論文によると、人は1度に5から9(7±2)のことを記憶できるといいます。しかし、この数字に疑問を持つ研究者は多く、多くの研究が行われた結果、ネルソン・カウアンが2001年に真のマジカルナンバーは4であると発表しました。

マジカルナンバーが4ということは、長期記憶にも短期記憶にも当てはまります。記憶を失われにくくするために、4つ以上の情報があるときは、4以内のグループにまとめるといいでしょう。電話番号が3桁、4桁ごとにまとめられているのは、そのいい例です。プレゼンの発表内容が12〜15項目あるとしたら、大項目を3つか4つに分け、それぞれに含まれる小項目も3つか4つごとに分けられるように設定しましょう。

05.
聴衆の知識に
関連付ける

物事を短期記憶から長期記憶に移すために、基本的には2つの方法があります。1つは何度も繰り返すこと。もう1つはすでに知っている物事に結びつけることです。

新しい情報を、すでに聴衆が持つ情報に結びつけることができれば、それを印象づけ長期記憶に留めるのも、記憶を呼び起こすことも簡単になります。

06.
記憶の崩壊を
最小限にする

プレゼンが終わり、直後に友人と会ってどんな話だったかを聞かれたら、思い出しやすいのはプレゼンの最後に見聞きしたことでしょう。これを「親近効果」と言います。
また、プレゼンの最中に携帯が振動して、少しの間、プレゼンを聞かずにメールを打っていたとしたら、最も思い出しやすいのはプレゼンの始めの部分です。終わりの内容は忘れやすいでしょう。これを「接尾効果」と言います。

このことを利用して、プレゼンの始まりの部分では、たとえこの部分しか覚えていなくても重要なポイントが伝わるようにしましょう。同様に、終わりにも力を込めましょう。プレゼンの中間部分の多くは失われる可能性があります。
残念ですが、それは受け入れなくてはなりません。

07.
記憶は書き換えられる
ことを意識する

もともと仲の良い関係だった従姉と、口論から仲違いしたとします。口論中に傲慢で冷たいという印象を持ち、そのまま数年が経つと、仲違いの前のことを思い出す時、その記憶は知らないうちに変化しています。従姉は傲慢で冷たいという印象が記憶に加わり、事実と同じくらいリアリティをもつでしょう。

記憶はあてになりません。重要な情報を扱う時には、プリントして配ること。そうすれば、プレゼン後にその情報を活用しようとしても、記憶違いは起こりません。

自分のプレゼンを聴衆の記憶に残したい時に役立つ方法として、7つの方法を紹介しました。後半では、上記の7つに加えてすぐに使える方法を6つ紹介します。

コンテンツ提供元:イースト・プレス

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