恋愛は12世紀の発明だった!?「不倫にまつわる5つの歴史」

私たち人間は、男女問わず、生物学的にも社会的にも複数の相手と愛し合うことができてしまう生き物。人類が繰り返してきた「不倫」に関する豆知識を紹介していこう。

01.
生物にとって
パートナー以外との性交渉は
日常茶飯事

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哺乳類の中で、一夫一婦制=単婚を取っている種は全体のわずか3%とされている。一方、鳥類は種全体の90%が社会的に単婚とされているが、性的には極めて乱脈であり、多重交尾やつがい外交尾は日常茶飯事である。「一夫一婦制を取っている29種の鳥のうち、種によっては、ヒナの70%以上が妻の浮気の子」というデータも出ている。生物の世界では「不倫」は当たり前なのだ。

多くの動物の交尾は数秒〜数十秒程度しかかからないので、人間のようにわざわざ人目を忍んでホテルに行ったり、時間差で退社したり、温泉旅行に行ったりする手間もかからない。パートナーの見ていない隙、縄張りの外の藪の中で、サッと済ますことができる。

02.
一夫多妻制は“ファンタジー”
実は全然うらやましくない!

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一夫多妻制の社会を「複数の女性と公然とセックスできる理想的な社会」と思っている男性も多いと思うが、それは完全な誤りである。

一夫多妻が認められている社会の多くでは、実際に複数の妻を持っている男性は、全体の5〜10%にすぎない。言い換えれば、「ごく一部の社会的地位の高い男性や経済的に裕福な男性が、大半の女性を独り占めしてしまう社会」「大多数の男性は、1人の相手も見つけられず、生涯にわたって独身を余儀なくされる社会」である。多くの男性にとっては、受難以外の何物でもない。

また、一夫多妻制にすれば浮気や不倫はなくなる、と思っている人も多いが、それも誤りである。2番目の妻と結婚する前に交際している期間中は、事実上の不倫である。不倫もまた一夫多妻制と同様に「伝統的」なものであり、文化や婚姻の形態にかかわらず存在しつづけるものである、と述べる歴史学者もいる。

03.
メディアによって大衆娯楽化

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実は「不倫」という言葉が現在のような意味で使われるようになったのは、比較的最近である。1957年に三島由紀夫の小説『美徳のよろめき』が出版された際は「よろめき」という言葉が流行った。1983年にTBSのテレビドラマ『金曜日の妻たちへ』が人気を博し、既婚者の婚外での恋愛やセックスを表す意味での「不倫」という言葉が世間的にも定着した。

「浮気」という軽い言葉では表現したくないが、「純愛」と呼ぶのも無理があるので、それなりに誠実な関係であることが感じられる、良くも悪くも曖昧な言葉として「不倫」が用いられたのだろう。

1993年の日本テレビのドラマ『ポケベルが鳴らなくて』では、主人公と不倫相手の女性が当時浸透期だったポケベルで連絡を取り合う様子が描かれていた。以降、不倫のために用いられるツールは、ポケベルから携帯電話、出合い系サイト、スマホ、SNSと進化していく。

この数十年間、不倫はメディアによって喚起され、大衆娯楽として消費され続けている。しかし、不倫に対する個人的・社会的な防衛策が確立していない中で、ドラマや小説のネタとして不倫を消費し続ける社会は、お世辞にも健全とは言い難いだろう。

04.
恋愛が「発明」された
きっかけは不倫だった!?

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ヨーロッパにおいて「恋愛は12世紀の発明」と言われているが、そのベースは不倫であった。キリスト教の道徳観の支配下で、性の乱れが問題視されていた時代、純粋な恋愛を歌う「トゥルバドゥール」と呼ばれる吟遊詩人たちが登場した。彼らは、身分の高い既婚の貴婦人たちに惹かれ、憧れた。

これらの愛は、報われることは決してない。しかし、それゆえに熱く燃え上がる。このような恋愛は、「騎士道恋愛」「宮廷風恋愛」と名づけられた。騎士にとって恋愛は、自分に試練を課し、困難を乗り越えて精神を高めていく行為だった。この騎士道恋愛が西欧的恋愛の原型である。つまり「不倫」が根底にある。そう、恋愛の母は不倫なのである。

05.
拷問しても
不倫は撲滅できなかった

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歴史的な視点から見ると、古今東西の社会で不倫を禁止・撲滅するために様々な試みが行われたものの、それらの大半が失敗に終わってしまったことがわかる。

婚外セックスに対しては、洋の東西を問わず、離婚や共同体からの追放だけでなく、性器切除、手足や耳鼻の切断、公開の鞭打ち刑、石打ちによる死刑、絞首刑、銃殺、水死刑、火刑などなど、目を覆いたくなるような残虐な刑罰が行われてきたが、それでも不倫に走る人は後を絶たなかった。不倫の情熱や衝動は、法律も宗教も社会規範も軽々と飛び越えてしまうのだ。

はじめての不倫学
コンテンツ提供元:光文社

坂爪真吾/Shingo Sakatsume

一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、性風俗産業の社会化を目指す「セックスワーク・サミット」の開催など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。