ビジネスで社会を変える。そのために自分が究極的に好きな事と、徹底的に向き合う。-白木夏子(HASUNA)-

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ギャルモデルであり、現役・慶応義塾大学大学院生でもある鎌田安里紗さん。10代、20代を中心に支持を集める彼女はエシカル・プランナーでもあり、多数のファッションブランドとコラボをしたり、「エシカル」に興味を持ってもらえるようなイベントやスタディ・ツアーを手がけたりと、様々な形で発信をしています。

今回、そんな彼女が「この人の発想はこれからの暮らしを考える上でヒントになりそう!」と感じた人たち10人にインタビュー。生活のこと、暮らし方のこと、自然との関わり合いのこと、自分を大切にすることなどについて、じっくりお話を聞いていきます。

第二回目のインタビューのお相手は、ジュエリーブランドHASUNAを手がける白木夏子さん。HASUNAは、表参道に本店を構えるラグジュアリージュエリーブランド。人や社会、自然に配慮した素材を使用することを創業時から心がけています。

限りある自然から生み出される素材、ジュエリー制作に携わる人々、そして身に着ける人への想いをこめて、HASUNAでは素材の産地・採掘工程など制作過程における透明性を大切にすることで注目を浴びています。

社会問題が“自分ごと”に変化した瞬間
自分の命を貧困問題の解決に使おうと決めた

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鎌田 今は、どんどんグローバル化が進み、情報化も進むなかで、多くの人が、世界中にある貧困問題などの社会問題に気付き始めている時代ですよね。ただ、いろいろな問題に気づいても、どうやって自分の生活と社会問題をつなげて考えたらいいかわからない人もたくさんいると思います。

白木さんは、ジュエリーの裏側にある生産者さんの状況に問題を感じてHASUNAを立ち上げられましたよね。その問題に気づいたのは、どんなことがきっかけだったのですか?

白木 海外の大学に進学することを決めて短大に通いつつ受験勉強をしていた時に、あるフォトジャーナリストの講演を聞く機会があったんです。その方は百何十ヶ国も自分の足で歩いて写真を撮られる方で、貧困問題や環境問題など、さまざまな問題を写真を通して教えてくれました。

その時に思ったんです。「私は日本でこんなにぬくぬくと生きているけれど、このような生活を送れているのは、奇跡的なことなんだな」と。甘ったるい環境の中で生きてきたのだと、改めて気づかされました。それまでにもテレビなどでさまざまな社会問題があることは見聞きしていたけれど、その方の話を聞いて初めて自分が生きている世界のこととして問題を認識して、「私も何かしなくては」と思いました。

鎌田 やはり、実際に見てきた人の話を生で聞くと、テレビで見聞きするのとでは違いますよね。

白木 そうなんですよね。その話に影響を受けて、貧困問題に向き合っていくことに自分の命を使っていくことが、自分の生き方なのではないかと思い始めたんです。

行き過ぎた資本主義の歪みが、
物作りの末端にいる人たちを苦しめている

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白木 貧困問題を解決するために、どうして「富める者」と「貧しい者」の差がこんなに大きくなっているのかを学ぼうと思い、ロンドン大学に留学して開発地理学を専攻しました。

1年目の夏休みに、フィールフドワークで南インドのチェンナイ周辺にある、鉱山の村に行ったんです。そこで採掘されていたのは雲母や大理石。大理石は建築に、雲母は「ミネラル成分配合」と書かれた化粧品や携帯電話やカメラのレンズなど、私たちの生活を豊かにするものに使われます。

しかし、その採掘をする人たちは人間の生活できる環境とは思えない場所で生きているのです。1日1食で、子供が病気になっても病院に連れて行くお金がないから、目の前で死んでいくのを見ているしかないような状態。トイレもない、ガスも電気もない、文明も何もない環境で、大人はもちろん、子供たちも強制労働をさせられている。本来、鉱山労働は落盤事故の危険性など大きなリスクを伴う労働なので、安全性の高い装備で行うものなのに、裸足だったり上半身裸だったり、使用する道具もおろそかなものだったり。

その状態でも楽しそうに生きているなら、何も感じることはなかったかもしれないのですが、話を聞くと、みんなネガティブなことしか言わないんですよね。「あなたは日本人なんだからお金を置いていってください」と言われたり、「子供たちの将来の夢なんかない」と言われたり、「私は学校を出たけれど、ここで生まれたからここで死んでいくしかない。絶望的だ」と言っていたり。

悲惨さに衝撃を受けて、どうしてこういう状況が生まれるのかを悶々と考えました。その結果、この状況は誰か特定の人が悪いというよりは、行き過ぎた資本主義のあり方が生み出しているのだなと気づいたんです。

利益を得るために、生産者を買い叩いて物を作り出し、それを売って儲ける人がいる。その連鎖のしわ寄せが、生産の末端にいる人のところに行ってしまっているのだなと。

鎌田 私も貧困問題を入り口に、フェアトレードに興味を持って、今はエシカル・ファッションを中心に情報発信をしているのですが、白木さんのおっしゃっている「行き過ぎた資本主義のあり方が、物作りの末端にいる人を苦しめている」というお話にはとても納得がいきます。

物を売る側、作る側の人たちが「ビジネスの競争に勝たないといけない」、「利益を出さなければいけない」と考えた結果、生産コストを落とすために、人件費を削減したり、環境の悪い素材を使ったりしていますよね。一方、買う側の人たちも、“安いものを買うのが賢い消費者”という意識があるように思います。そうすると、値段の安い物ばかりが売れるようになってしまうんですよね。

その結果、売り手側は販売価格を下げなくてはならなくなるし、さらにそこに利益を出そうと考えると、生産コストもさらに下げなくてはいけなくなる。そういう状況がありますね。

白木 そうなんです。問題は、ビジネスの構造から生まれるのです。しかも、鉱山の労働問題は、インドだけでなくフィリピンや中南米、世界中で起こっています。国連の調査によると、この世の中に鉱山労働者は1,300万人から2,000万人もいると言われています。

鎌田 かなり幅がありますね。

白木 はい。隠れて採掘している人も多いので、実際に何人いるかは誰もわかっていない状態。そして、その中には子供も約100万人含まれると言われています。

この問題をどう解決したらいいか、悶々と考えながらNGOやNPOの活動に参加してみたり、国連のインターンをやってみたりしたのですが、この問題は「ビジネス」でしか解決できないと思いました。

国連でも解決できないことを
「ビジネス」で解決しようと思った

鎌田 国連でも解決できないと思ったのはなぜですか?

白木 国連には様々な機関がありますし、それぞれすばらしい活動をしています。巨額のお金を動かせますし、政府に直接アプローチして、国のインフラを整えたり、大きな枠組みを変えたりすることもできます。

ただ、国連の“得意分野とそうでない分野”があると思ったんです。経済を活性化させるには、国の規制を緩和したり、もっと自由に経済が発展する形に変えたりと、様々な方法がありますが、国連の動きが利益相反になる可能性もあるからです。たとえば、国連から「あなたたちのビジネスには問題があるから変えてくださいよ」といくらアプローチしても、「経済を活性化させないと、国が豊かにならないから変えることはできない」と反論されて議論にならないようなこともあるのです。

私が一番気になったのは、物作りをする業界の中で末端にいる人たちに、行き過ぎた経済の歪みのしわ寄せがきていること。貧困問題の要因は、汚職率が高いとか、インフラが整わないとか色々な要因があって、その中には国連で解決できるものもありますが、私の関心がある「物作りの末端の人たちの貧困問題」を解決する方法は、学校で勉強しても、国連でインターンをしてもわかりませんでした。そこで、ビジネスの仕組みを理解するために、一度就職をしようと思ったんです。

お金は地球にとって血液のようなもの
循環しないと不健康になる

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鎌田 就職なさったのは、金融業界でしたよね。それはなぜですか?

白木 ビジネスってお金が密接に絡んでいますよね。私はお金を「地球に流れる血液」のようなものだと考えているんです。
そのお金の使い方が悪くなればなるほど、地球は病気のように、つまり悪い状態になってしまう。逆に、お金の使い方を良くすればするほど、身体と一緒で健康になっていくと考えました。そこで、お金の流れを知りたいなと思ったのです。

そのためには、お金の流れが見られる場所に行かなくてはならない。お金を持っている人たちが何が好きなのか、何を考えているのか、何にお金を使うのか。これを自分の目で見られる場所として、投資ファンドの会社に就職しました。毎日巨額のお金を動かしている投資家やファンドマネージャーたちの生の声を聞けたのは、とても貴重なことでした。

鎌田 そういった人たちの関心事は、やはりいまだに資産を増やすことなんでしょうか。

白木 資産を増やすこともありますが、その時に気がついたのは、大変な資産家、特に欧州のブルジョワジーたちは、社会貢献活動に非常に熱心だということです。

もちろん投資も戦略的に行われていますが、その傍らで儲けの何割かを孤児院やNPO支援に回すなど、社会貢献活動に熱心な人に多く出会いました。自分の共感したものにはお金を出す人たちなんだな、世界を良くしたいという気持ちがある人が多いんだなと感動し、勇気付けられた経験があります。

何をやっても社会貢献につながるなら
一番好きなことを

鎌田 その後、HASUNAを起業なさったんですよね。白木さんが気づいた社会問題の解決方法として、HASUNAを起業することにしたのはどうしてですか。

白木 すぐに解決方法がわかったわけではないんです。「貧困問題に向き合いたい」という思いははっきりしていたのですが、26歳くらいまでずっと悶々と、「何をしたらいいんだろう」と考えていました。

企業のCSR担当になるとか、外務省に入るとか、NPOやNGOに入るとか、様々な方法があると考えたのですが、私は結局どこにいて何をしていても、何かしらの形で社会に貢献する仕事をするだろう、と思ったんですね。それならば、自分が好きなこと、自分がもっとも力を出せそうなことで貢献をしたいと思いました。

鎌田 「自分が好きなこと、自分がもっとも力を出そうなこと」というのはどうやって見つけ出したのでしょうか。それを見つけられなくて迷っている段階の人ってたくさんいると思うんです。

白木 小さい頃に好きだったことを思い出したんです。私は絵を描いたり、物を作ったりと、0から1を生み出すことが大好きな子供でした。おもちゃ屋さんよりも洋服の生地屋さんが好きで、手を使って何かを作るのがとにかく好きだったんですね。

それから深海の生物図鑑、鉱物図鑑、宇宙の図鑑などを読むのも好きで、時空を超えた世界のことを考えるのが好きでした。加えて、父親が休日になると河原に化石掘りに連れて行ってくれたりして、アンモナイトを発掘したりしていたんです。

鎌田 発掘! 楽しそうですね!

白木 楽しかったですね。拾った貝殻や石を使ってアクセサリーも作りました。だから進路を選択する時に、将来はファッションや芸術の仕事をしたいと思っていたのですが、両親ともにファッション業界で仕事をしていたので反対されたんです。すごく難しい世界だという理由で。

そこで祖父の助言もあって短大で英語を勉強して留学したのですが、その後「自分の究極的に好きなことで社会に貢献しよう」と思った時に、子供時代に好きだった古代の生物、宇宙、旅、ファッション作り、ジュエリー作りを思い出しました。そして、それらは、全部「ジュエリービジネス」に関係があると気づいたんです。

たとえば、今から5億年前の海の生物が堆積した地層からできた水晶があります。そして金は地球上のどんなものを合成しても作ることができない元素。つまり、隕石がぶつかって地球が構成された時に、宇宙から飛んできたものの中に金が含まれていたとしか考えられないと言われています。つまり金は宇宙と繋がっています。

それから旅に関しては、特にHASUNAのビジネスの場合、生産者さんと対面で取引を行うので、あちこちに旅をする必要があるし、人との出会いもあります。ファッションや芸術にも近い業界だし、ジュエリーは見るのも作るのも、いつまで向き合っていても飽きません。「これだ」と思いました。

HASUNAが成功することで
新しい資本主義の形を証明していきたい

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白木 ジュエリービジネスなら、貧困問題に対して、自分の力が最大限に発揮できるのではないかと思いました。鉱山の人や職人さんと対面でやりとりして生産過程における透明性を確保し、フェアな取引をしていけば、HASUNAのブランドが大きくなればなるほど、末端にいる人も幸せになるのではないかと。

こうすることで、今の行き過ぎた資本主義とはまた異なった形の、新しい資本主義の形を、この会社なり、ブランドをもって証明できればいいなと思ったんです。

もちろん1社ですべての世界が変わるわけではないですが、HASUNAが成功すれば、同じような考え方を持つ経営者も生まれるのではないかと。その化学反応の触媒になることを、事業の核としてやっていこうと考えました。

鎌田 HASUNAのお客様はどういった方々なのですか? 良いものにはちゃんとお金を出したいという人たちでしょうか。

白木 社会貢献をしたいから、という理由で買っていかれる人はほとんどいないですね。

鎌田 純粋にジュエリーを気に入った人たちなんですね。

白木 そうです。やはり入口は、本当に素敵な物がほしい、がんばった自分へのご褒美にジュエリーがほしい、などといったことです。まずはプロダクトありきで、社会貢献は二次的、三次的なものとして位置づけることが正しい姿だと思います。

だから、ジュエリーそのものが完璧に美しい物であるとか、こだわり抜いた石を使っているとか、クオリティも追求して、とにかく最高だと誇れるジュエリーを作っていくことが大事なのだなと思っています。良い物にお金を出したい人は必ずいると思いますし、物が溢れる時代だからこそ、こだわり抜いたプロダクトでないと売れないと感じています。

鎌田 資本主義は本来HASUNAのように、売り手が本当に良い物をちゃんと作って、それに買い手が必要なお金をちゃんと払うというものだったはずですよね。ところが、売り手側が利益をあげることを最優先にしてしまうと、物作りが蔑ろにされて、良い物が作れなくなってしまいます。

HASUNAが社会貢献のために買われているのではなく、良い物をちゃんと作ることでお客さんに喜ばれ、物作りを一緒にやる人にも喜ばれているという状況は、すばらしいですね。

これからの時代に
「売れるもの」とは?

鎌田 利益を最優先に考えている人たちが、HASUNAのように「本当に良い物を作って売っていけば良いんだ」というマインドに変わっていけると良いですね。

白木 そうですね。特に経営者の発想が変わることで、何十万人、何百万人ものライフスタイルに影響します。特にここ数年は世の中の人が、ちゃんとした物作りを意識し始めているように思います。トレーサビリティしかり、環境への配慮しかり。

今の時代、企業が労働者、社会、環境への配慮をしていないと、すぐにインターネットなどに情報が流れてしまいます。ブラック企業の店舗が多数閉鎖されているような状況を考えると、「良い物をちゃんと作る」ということを蔑ろにしているところは自然淘汰されていくでしょう。

特に日本は、これから人口も減少しマーケットも縮小していきます。そのなかで生き残っていくのは、本質的に本当に良い物を作っている企業だけだと思います。加えて、消費者の購買傾向の変化もあります。1980年から2000年に生まれた世代をミレニアル世代というのですが、聞いたことはありますか?

鎌田 私もミレニアル世代です。

白木 私もギリギリミレニアル世代です(笑)。この世代の人たちは物やライフスタイルに非常に強いこだわりを持っているのだそうです。食べ物はオーガニックを選ぶとか、着るものもロゴが大きく入っているものではなく、他人から見てどこのブランドか分からなくても自分のリスペクトしているブランドの物を買うとか。基本的に浪費はしないけれど、自分の好きな物にはちゃんとお金を使う人たちなんです。

少し前の世代は「パリコレに出てくるブランドだから」、「有名だから」という理由で物を買う人が多かったようなのですが、ミレニアル世代はポリシーに共感した物を買う人たちだと言われています。この世代が今後の消費の中心になっていきます。そうなると、安かろう、悪かろうという物は買わないし、エシカルではないブランドや店は自然淘汰されていくことが予想できます。

鎌田 配慮のない物作りをしている人たちは、物のストーリーを語れないですからね。買い手の変化は、すでに起こっている印象がありますか? 私の周りはまだ、安い物を買いたいとか、流行りに乗りたいという人が多いと思うのですが、それはまだ若くて実際にお金がないという理由が大きいのでしょうか......。

白木 そう思います。私もそうでしたが、若い世代の人が30代などになって、今よりお金に余裕が出てきたら、きっと変わってくると思います。

それから、買い手が思い入れなく買ってしまう物や作り手の思いがこもっていない物って、簡単に手放せますよね。ミレニアル世代は、なるべく買わないし、持たないし、良い物だけに囲まれて生活していきたい人たち。となると、意味のない物は買わないという選択になります。

売り手としてではなく、
買い手としてもポリシーを持つ

鎌田 白木さん自身も、生活のなかでお金を使うときにこだわりを持って選んでいますか?

白木 食べる物は、妊娠をきっかけに基本的にお肉も野菜も全てオーガニックになりました。少し高いですが、お腹にいる子供が私の食べたもので育つと思ったら危険なものは摂りたくないと思ったんです。

鎌田 危険なものが入っている理由を考えると、高い理由がわかりますしね。ファッションなどはどうですか?

白木 身に付けるものに関しては、ジュエリーは全てHASUNAのものですし、本質的な部分で「このブランドが好き」というものはありますね。

たとえばこのバッグ。JAMIN PUECH(ジャマンピュエッシュ)というフランスのメーカーのもので、特にエシカルをうたっているわけではないのですが、ハンドクラフトで一目一目ものすごくこだわって作っているのが、見るだけですぐに伝わってくるから大好きで。ものづくりへの想いが好きで、愛用しています。

160123_qreators_hasuna09鎌田 エシカル、フェアトレードでなくても、ちゃんと物を作って、作り手を尊重しているブランドってたくさんありますよね。

白木 洋服に関しては、縁を感じた時に買うようにしています。たとえば友人が立ち上げた気仙沼ニッティングのニットは愛用しています。編み手さんの気持ちが伝わってくるようで心地いいです。

鎌田 わかります! エシカルなものを買うとか、オーガニックなものを買うというと、「意識高いですね」「社会貢献的ですね」と言われがちですけれど、純粋に着ていて心地が良かったり、作り手さんの思いが伝わってきてうれしかったりするんですよね。

白木 そうなんですよね。あとはアウトドアグッズを購入する時はできる限りパタゴニアで揃えるようにしています。パタゴニアのポリシーが好きなので。ただ、洋服に関しては全体的にまだまだエシカル・ファッションの選択肢は少ないと感じています。

鎌田 そうなんです。なかなか選択肢が少なくて。私もエシカル・ファッション以外のブランドさんとも一緒にお仕事をしているのですが、そこで伝えたいメッセージは「今流行っているから、安いからという理由で買うというのではなく、本当に好きで来年も着たいなと思うものを買うといいと思いますよ」ということなんです。

白木 すばらしい! 私も、エシカル・ファッション以外のブランドさんで買う時には、「これは10年使えるかな」と考えています。いずれは、すべてのブランドさんがエシカルになることを期待したいです。

自分が本当にやりたいことの探し方
そして本当の豊かさとは?

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鎌田 自分が好きなものを見極めてお買い物をすることと、環境や物作りの裏側にいる人に配慮することは直結するように感じます。そして、その姿勢は、先ほど白木さんが「自分が好きなこと、自分がもっとも力を出せることで貢献をしたいと思ってジュエリービジネスを選んだ」とおっしゃっていたことにも通ずるように思うのです。

白木 そうですね。自分にとって一番大切なことを徹底的に追求することが、結局はその人にとっての幸せにつながり、周りの人たちを幸せにし、社会に貢献することにも繋がっていくと思います。

自分が究極的に好きなことを、わくわくしながら楽しんでいれば、周りの人も幸せになるし、それが社会を良くすることの原点なのではないかと。そのことに気づいて、私は起業前に原点回帰して考えたんです。

鎌田 私もそう思います。自分の好きなものがはっきりわかると、ものの考え方や暮らし方が変わっていきます。ただ、自分の好きなことをしっかり考えることができない人もいますよね。

白木 そういう時に私がオススメしたいのは、小さな頃に没頭していたことを思い出すこと。誰しも、小さな頃に夢中になったことはあると思うんです。

たとえば、料理が好きだったとします。だからといって、すぐにシェフになろうと考えるのではなく、なぜお料理が好きだったのかを考えるんです。おいしい料理を作ると家族が笑顔になるからかもしれない。ぐつぐつ煮えるのをじっと見るのが好きだったのかもしれない。野菜を組み合わせて新しい味を作るのが好きだったのかもしれない。

料理が好きだったのが「家族が笑顔になるのが好きだったから」とわかったら、さらに進んで「なぜ家族が笑顔になるのが好きだったか」と考えてみる。5段階くらい「なぜなのか」を考えると、本質的なことがわかってきます。

鎌田 「料理」という入り口とは違う、「家族を大切にしたい」などの気持ちに気付けるかもしれないですね。

白木 そうなんです。そうやって自分が何をやっていきたいかを決めると、自分にも納得感があるので腰を落ち着けて臨むことができます。幼い頃を振り返って自問自答することによって天命を知る、自分の本当にやりたいことを探求し続けるのは、大事だと思うんです。

鎌田 「探求し続ける」とおっしゃいましたが、白木さんは今でも「今のやり方でいいのか」と自問自答しているのですか?

白木 そうですね。いつも自問自答していますし、これは一生続くと思います。「今の時点ではこれだな」と思うところで、見切り発車で良いからアクションを起こしていくことがとても重要だなと思っています。完璧である必要はなく、ただその時点でのベストを尽くすことを心がけています。

それに、この世の中は日進月歩で、今日考えていることは明日にはもう古くなっている。いつも「何かできるはずだ」「何かできるはずだ」と改善を考えて、新しいやり方を生み出して、常に仕事も自分のあり方も変えていかなくてはならないと思っています。

鎌田 白木さんのように現状を疑って、「こうできるのではないか」と思って、自分のできることから改善して、新しいやり方を生み出す人が増えれば、もっと世界は良くなると思います。

白木 私は自分の人生を、「今生きていることをより豊かにする旅」だと思っています。いろんな経験をして、いろんな人に出会って、いろんな感情を味わって、「ああ、この人生は豊かだったな」と思って死んでいきたいと、最近特に思うようになりました。

そして、どんな小さなことでも自分の起こしたアクション、たとえばお買い物がなんらかの問題解決につながっていたり、マイナスを0にしたり、0を1にしたりすることにつながっていったら、いいなと思います。

鎌田 白木さんにとって、「豊かさ」とは何ですか?

白木 「豊かさ」についてはずっと考えてきたことなんです。たとえばとても経済的に貧しい村に道路を作り、街を整備することが決まったとして、その結果、経済的には村は豊かになったとします。

でも、同時に村人がギャンブルにはまり始めたり、若者たちが村から都会へ出て行ってしまって、村が過疎化したりすることもあります。この状況は豊かなのでしょうか……。

相田みつをさんの「しあわせはじぶんのこころがきめる」という言葉がありますよね。結局、自分の心の状態さえ豊かで幸せだったら、物やお金がなくたって非常に豊かな生き方はできるんです。

逆にお金がいくらあっても人間関係がうまくいっていなかったり、物質的に好きではない物に囲まれたりしていたら、全く豊かではないと私は思います。やっぱり「人の笑顔がたくさんあるということ」が豊かなのかなと、思います。

鎌田 突き詰めていくとシンプルなんですよね。自分に向き合って何が自分にとって幸せかを考えたら、「大事な人がいることが幸せ」などとわかるのに、自分に向き合わないでいると「お金を稼がなきゃ幸せになれない」、「あれを持たなきゃ幸せになれない」と思い込んでしまうんですよね。

白木 情報がありすぎたり、物がありすぎたりする状態だと、自分の外に意識が向いてしまう。そして、外に解を求めてしまうと、今は情報が非常に多いこともあり、わけがわからない状態になってしまいます。最近、日本でも「マインドフルネス」が注目されていますけれど、内省の時間が本当に重要ですよね。

鎌田 内省のために、何かやっていらっしゃいますか?私はヨガをやっていたこともありますが、最近は歩きながら深呼吸すると、自分の内側に向かうことができるなと感じて、実践しています。

白木 私も毎日ヨガをやっています。ヨガの最中に「今、ここの血流が悪くなっているな」と自分の体を確認したり、自問自答をしたりしています。そういう時間が、少しずつ自分の心を豊かにしているなと感じます。

鎌田 一人ひとりが自分なりのやり方を見つけて、自分の内側に目を向けると良さそうですね。今日はとても勉強になりました。ありがとうございました。

コンテンツ提供元:QREATOR AGENT

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。