モノではなく、「時間」を買うことで幸せになれる(研究結果)

ミヒャエル・エンデの名作『モモ』をなんとなく思い出す。

時間泥棒が街じゅうの人ををそそのかし、人々は無駄な時間をとことん削るようになる。「ぼーっとする時間」「道ばたの花を眺める時間」そういうものを失った人たちはまるでなにかに追われるようにせかせか働くようになって、でも心はどんどん貧しくなって、少女モモが盗まれた時間を取り返すために立ち上がる、とそんな話。

そう。最近、ほんとうに「時間がない人」が増えているみたい。毎日分刻みのスケジュール、溜まっていく未返信のメッセージ、「今日こそ早く寝るぞ」と思っても確保できない睡眠時間などなど、身に覚えのある人も多いんじゃ?近ごろ瞑想が世界中で流行りぎみなのも、もしかしたらそういうことが理由なのかも。

そんななか、オモシロイ研究結果が。

お金で時間を買うと
幸せになれる?

ブリティッシュ・コロンビア大学の心理学教授Elizabeth Dunnさんらの研究によると、「時間の飢餓」に見舞われがちな現代人は、時間をお金で買うことで、より幸せになれるんだとか。

これはアメリカ、カナダ、デンマーク、オランダといった国の人々に、同じ金額のお金をワインや服、本といった「モノを買う」ことと、子どもと遊ぶ、家事や仕事の代行をしてもらうといった「時間を買う」ことにそれぞれ使ってもらって、幸福度を調べた結果なんだそう。

「なるほどね。『モノよりも時間を買え』ってほんとうだったんだ。よし、次からは時間を買おう」となるのはいいんだけど、「待てよ、なんでわざわざお金を出して時間を買わなきゃいけないの?とも思っちゃうのは私だけ?

だって時間って、もともと自分が持って生まれてきたものじゃないか。なのに実際、今は「買わなきゃ時間がない」って人が多いんだもん。おかしくない?

人間も「眠らない」社会

たとえばコロンビア大学の美術史・芸術理論の教授であるジョナサン・クレーリーさんは著書『24/7 眠らない社会』のなかで「人間の不眠化」を指摘している。ネットなどの普及で24時間のサービスが当たり前になった世の中で、生産も消費もおこさない「睡眠」の時間は無意味・無駄なものにされた。

そして世界は生身の人間にも永遠の「24時間、週7日」を求めるようになっちゃった、という話。なんだかまさに『モモ』の現実版って感じ。ほんとうは謎の時間泥棒も、頼れる救世主モモもいなくて、無意識に時間を葬り去っているのも、それをなんとかしなきゃいけないのも、いつだって私たち自身なのだ。

以前、街中に出現する瞑想ブースや、フランスの「オフラインになる権利」の話題も取りあげたけど、こういうのって「時間を失くした現代人」の生々しい悲鳴なのかも、なんてね。

Reference:BBCnews, PNAS
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