読めない街の「らくがき」をきれいに清書してみたら・・・

建物の壁面や商店のシャッターにスプレーやフェルトペンでなぐり描いたグラフィティ(文字だけのものはタギングとも)を読解するのは至難の技。あえて読みにくく描いているとさえ思えてくる。だからこそ単なるらくがき感が強調され、美観を汚すものとして嫌われもする。

では、もしもそれが誰でも読みやすい書体で描かれていたらどう?もちろん、らくがきなことに変わりはない。けれど、整然と並んだ文字の羅列を見ていると、あまりノイズに感じられないのはなぜだろう。

らくがきを「上書き」すると
誰の目にもノイズにならない

読めない文字に着目したのがフランス人のMathieu Tremblinさん。彼は、街に描かれたグラフィティを一度ペンキで消したあと、書いてあった文字を解読して、それを誰もが読みやすい字(楷書)に書き換えるプロジェクト「Tag Cloud」を、2010年より開始した。文字通りらくがきを「上書き」するアーティストだ。

たとえば、こんな感じに。

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Mathieu Tremblin. Tag Clouds “Rue Montesquieu”. 2016. Lyon (FR).

1996年、10代のMathieuさんはノーマン・メイラー著『The Faith Of Graffiti』と出会う。ニックネームや所属するチーム名、怒りやスラングをスプレーに込めてなぐり描く。自身の存在意義を示そうとする文字は、根無し草のような彼らが示すアイデンティティそのものだと気付いたと言う。

Mathieuさんもスプレー缶を手にした。けれど彼には意図があった。

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Mathieu Tremblin. Tag Clouds “Rue de Gaillon”. 2010. Rennes (FR).

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Mathieu Tremblin. Tag Clouds “Kruisstraattunnel”. 2013. Eindhoven (NL).

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Mathieu Tremblin. Tag Clouds “rue du Frout”. 2012. Quimper (FR).

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Mathieu Tremblin. Tag Clouds “Colombier Optique”. 2010. Rennes (FR).

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Mathieu Tremblin. Tag Clouds “rue Jules Ferry”. 2012. Arles (FR).

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Mathieu Tremblin. Tag Clouds “Gontardstraße/Karl-Liebknecht-straße”. 2010. Berlin (DE).

どこか、サインボードや広告のように見えなくもない。

単なる「自己欲求」から
「共有」できるアイコンへ

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Mathieu Tremblin. Tag Clouds “Place publique”. 2011. Toulouse (FR).

「街の壁やシャッターを汚すだけのグラフィティは、単なる自己欲求に過ぎない。でも、それを美しく見せることで“統制”が生まれるんです。僕は、誰にも読めないような文字をそのままにしておきたくなかった。誰にでも読みやすい記号に置き換える、それがプロジェクトのコンセプトです」。

単なるいたずら書きから、誰もが解読でき理解できる文字へ。このMathieuさんの実験芸術は、必ずしもグラフィティを否定するものではないようだ。グラフィティやタギングのすべてがらぐがきで、景観を汚すものとも限らない。けれど、彼が目指しているのは、読まれず理解できないグラフィティをデザインの力でタイポグラフィー化することだそう。「Memefest」のインタビューに対する応えからもそれは読みとれる。

「このプロジェクトを手がけている時、自分も気分はグラフィティ・アーティストになっています。無秩序の中から整合性を生み出していく作業です」。

都市の景観のなか、認識できて初めて「ストリートアート」だとMathieuさん。グラフィティを正当化しているか?といえば、そんなこともない。もしかしたら、彼のプロジェクトにより、街中でよく目にするような消してはまた描かれの“イタチごっこ”にも変化が訪れるかもしれない。

Reference:Memefest
Licensed material used with permission by Mathieu Tremblin
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