ニューヨーク随一の空中庭園が妙に和むのは、雑草のせいかもしれない
リノベーションや、街のリ・デザインはいまや世界的なブーム。日本の木造家屋ではなかなか何度も使用用途を変えることはありませんが、石造りの欧米ではそのブームも加速し続けています。
なかでも、マンハッタンのヒップな地域にある空中庭園は、かつて肉を運んでいた線路をリノベしたもの。超気持ちいい空間に仕上がっていて、いまや観光名所。その名も「ミートパック・ディストリクト(肉詰め地域)」にある「ハイライン」です。
線路でゆったり
平日から多くのニューヨーカーがおとずれ、ハドソン湾を眺めながら和んでいます。線路脇には、ブルーボトルをはじめとした多くの人気ショップが出店を連ねていて、そこでゆったりできるのがポイント。
高架線路なので、アクセスするには階段から。どこにも、はっきりと禁止事項が書かれています。チェアやベッドのないところで座ってはダメ、乗り物を持ち込んではダメ、モノを投げてはダメ…。おもしろいのは、ガラスのボトルを持ち込んじゃダメ。
また、緑化保護が徹底されていて、ボランティアスタッフもたくさん歩いています。
その甲斐あって、ハイラインは快適そのもの。噴水ではなく、水がしみ出す回廊があったりして、まるで川のほとりのような居心地なんです。
それも芝などの人工的な庭園ではなく、まるで藪の中かのような多種多様な植物が群生していて、要は雑草なんですが、それらがアーティスティック。
違和感があるのに、居心地がいい
「緑のトンネル」
これらの植え込みデザインは、25年間列車が走らずに放置されたことによって、自生してきた植物にインスパイアされたもの。これを、色やテクスチャーで植え替えながら、育ててきたものだそう。
だからまるで自然界のようでありながらも、居心地のいい都会的な空間になっているのです。野性味あふれる緑のトンネルとの違和感が、本当にフシギ。
ハイラインは、住民愛あふれる空中庭園
1934年、34番街からジョンズパークターミナルまで、マンハッタンの工業地域を結ぶ列車が高架で建設されました。このあたりは精肉業が盛んで、マンハッタンでも当時は最果て。
1980年代になり、商業化が進んで工業が追いやられる形で、列車は営業を終了。チェルシーが開発されるにつれ、1999年に「フレンズ・オブ・ハイライン」基金が設立。2002年から住民によるアイデア募集を経て、リノベが始まったのです。
チェルシーの住民愛があふれるこの地は、現在NYの中でも注目される名所。ホイットニー美術館も、ハイライン南側に移転してきたほどです。ぜひ、観光の休憩に訪れてみては?
Photo by Inagaki Masanori