見よ!この銅像を。ブリュッセル市のなんと寛大なことよ
何年か前、大阪御堂筋に並ぶ銅像の何体かが、一夜にして赤い服をまとっていたという珍事が起きた。誰かが洋服を着せたいたずらだが、らくがき同様、日本では勝手に衣類などを着せる行為はご法度だそう。どこか寂しげな銅像や石像をかわいらしくしてあげたい、そんな気持ちがはたらいたとしても、まあ不思議じゃないのかもしれない。
どうやら世界には同じような考えをする人たちがいるようで、ベルギー・ブリュッセルでも、市内の銅像がトンデモないことになっている!
主張がスゴい銅像たち
たとえばこの公園にたたずむ頭像。遠目から見ると分かりにくいが、近づいてみると、頭からすっぽり、ニットのような帽子をかぶっている。
よく見れば、ダリアに似た黄色いキク科の花に多肉植物でできたカツラ。
銅像にいのちが宿る瞬間がある
他にも、ピンクのあごヒゲをあしらった胸像。
よく見てほしいのだが、これらどれもが生花でできている。ブリュッセルを拠点に活動するフローリストGeoffroy Mottartによる、手の込んだ“いたずら”…ではなく、れっきとしたインスタレーション。名もなき銅像たちに市民の目を向けさせるためのプロジェクトなんだとか。彼は、こうして市内のあちこちに立つ銅像にフワラークラウンやヒゲをつける作品を、不定期ながらもう2年も行っているそうだ。
もちろんゲリラ的な活動ではない。きちんと市にお伺いをたて、許可が下りた場合は一日だけ、この花まみれになった銅像たちが登場する。Geoffroyによると、許可が降りない公園や銅像も多々あるそうだが、辛抱強く首を縦に振ってくれる日を待っているそう。
こうしてお許しを得ると、花冠やヒゲの制作のに向けて、まずは銅像の頭囲や顔のサイズを測ることからスタート。自身のアトリエで花を紡いでいく。
第2代ベルギー国王レオポルド二世のたくましいあごヒゲも、Geoffroyの手にかかればご覧の通り。
物言わぬ銅像たちはさておき、完成度の高いGeoffroyの花冠やつけヒゲは、やがて多くの市民の目に止まり、ついに昨年、若手アーティストらによるエキシビジョン(企画展)に、彼と銅像のコラボアートが作品として出展するまでに。
誰が得するわけでもないし、もしかしたら意味のないことと思われても仕方ない。それでも、このプロジェクトを続けていきたいとGeoffroyは意欲的だ。ブリュッセル市の寛大さもあってこそだけど。そういえば、こちらもわざわざ許可を得てのことだそうだが、渋谷で行われるファッションイベントの際に、あのハチ公もおしゃれしてたっけ。