火星移住プロジェクトのためにNASAがデザインした「ふくらむ温室」
2030年の火星移住プロジェクトにむけ、NASAが「火星での植物栽培」を本格的に考えている、というニュースは何度か見かけたことがあるかもしれません。
地球以外の星に移住するとなると、現地での食料調達は必須になってきますが、水も二酸化炭素もない空間で植物を育てるのは容易なことではありません。
その問題を解決するのが、アリゾナ大学環境制御農業センター(UA-CEAC)と共同で開発した「ふくらむ温室」なのだとか。
農業だけではなく
「空気の循環」もできる
これが「Lunar Greenhouse」と呼ばれる、宇宙空間でも適切な照明と温度管理によって植物を育てることができる温室。
そもそも、スペース的にかさばる温室を宇宙に持っていくこと自体が非常に困難です。一方でこの温室は、畳めることによって省スペースでの輸送が可能になったそう。ひとたび宇宙に到着したら、ふくらませるだけで大きな温室になるというわけです。
さらにこの温室のすごいところは、水や空気を循環させるシステムが構築できるところ。宇宙飛行士の呼気である二酸化炭素を取り入れた植物が、酸素を吐き出すことで空気が活性化し、植物の蒸散で水も浄化されるという仕組みです。
NASAは、宇宙飛行士が1日に必要とするエネルギー量(約1,000kcal)の50%を温室の植物によってまかなうことができれば、水と空気の循環は100%達成できる、と予測しているとか。
ちなみに…
宇宙で育てやすい植物は?
NASAが火星で育てようとしている食物は、レタス、トマト、サツマイモ、イチゴ、ササゲなど。成熟するまでの期間が比較的早く、温室内の空間を有効活用できる植物が選定基準だそう。
注意しなければならないのは、植物の健康状態と成長の度合いについて。地球とは大きく異なる環境のなかで、栄養価などの変化はないのか? NASAはモニタリングとサンプリングのシステムを揃え、温室内の環境制御に取り組んでいます。
今まで複数回にわたって温室の性能はテストされてきましたが、まだテスト段階から抜けられてはいません。より均一な環境条件を整えるために、さらなる改善が続いています。
「Lunar Greenhouse」が
地球と似た環境を作る
2030年のプロジェクトでは、今のところ4名の宇宙飛行士が火星に移住する予定ですが、宇宙で長く生活するためには、いかに地球に近い環境を作り上げるかが鍵になります。
この温室が完成すれば、水と二酸化炭素を循環させ、地球環境に近いサイクルが成立することになります。
「火星で野菜を育てる」なんてまるでSF映画のようですが、その現実はもう目前まで迫ってきているようです。