あの人が隠れ家でひっそり聴いてる“揺らぎ系”って?
CDラックから音楽的ルーツやその人となりを探る連載企画「GOOD RACK!」。
今回は、NEIL&IRAIZAやCUBISMO GRAFICO、そしてLEARNERSなど様々なユニット&バンドで活躍中、2001年には映画『ウォーターボーイズ』の音楽を手掛け日本アカデミー賞最優秀音楽賞まで受賞している松田“チャーベ”岳二さんが登場!
2010年からは原宿で「kit gallery」も運営。チャーベさんの“アジト”といえる場所であり、格好の音楽リスニング・スペースともなっているこのギャラリーのCDラック、そしてここでよく聴いているオススメの3枚を紹介していただきました。気になったものはぜひチェックを!
おそうじのときは
ラモーンズ!
――kit gallaryのラックを拝見しているのですが、ここには厳選されたCDがあるという?
チャーベ:ここにあるものが順次入れ替わる感じですね。買ってきたCDとか、もらったものをここで聴くことが多いです。
ギャラリーで展示してるものとの関連性も考えるけど、僕、RAMONES(ラモーンズ)がすごく好きなので、おそうじの時とかにかけるとスゴいはかどる(笑)。いまは潮田雄一さんがかかってるんですけど、こういう友達の音源をゆっくり聴いたり、アルバムとして聴くのはここが多いので。kit galleryが僕のリスニング・スペースになってますね。
ーーご自宅ではあまりCDは聴かない?
チャーベ:家では子どもたちが聴いてますね。上の子(中学2年生)は、元々はセカオワ(SEKAI NO OWARI)が好きだったんだけど今はハイスタ(Hi-STANDARD)とハワイアン(HAWAIIAN6)がすごく好きで。
セカオワがHAWAIIAN6の「MAGIC」をカバーしてて、それでYouTubeの関連動画でハワイアンが出てきたみたいで、「HAWAIIAN6って知ってる?」って。「一緒にツアーしたこともあるよ」って言ったらどんどん好きになって、この間はじめて一緒にライブを観に行ったんですよ。
――それは、パパとしてはうれしい出来事ですね。
チャーベ:うん(笑)。友達のバンドを好きになってくれてるから、すごくいいなと思って。ライブに連れて行ってあげることもできるからね。英詞を全部覚えて、もう全曲歌えるんですよ。 下がいま小3なんだけど、僕が手伝ってるアイドルの曲とかを一生懸命聴いて覚えてる。だから家では基本的に自分好みの音楽は夜中にヘッドホンとかで聴いてる感じですね。
――では、ご自宅では家族みんなで楽しめるCDをかけていると。
チャーベ:そうだね。子どもが聴きたいものをかけてる。ご飯作ってる時とかは、奥さんがその辺にあるCDをかけたりしてるけどね。
だから僕が聴きたい音楽を聴くのは自宅じゃなくて、ここ(kit gallery)で。実はここがいちばんアルバムというパッケージを聴くのに適した空間なんです。
歌詞を見て聴いたりするのは
やっぱりいいな。
――デジタル全盛の時代ですが、CDとかレコードにはやはり愛着がありますか?
チャーベ:かさばるけど、レコードは好きですね。ずっと7インチを買うようにしてたんですよ。12インチはDJの仕事上買うこともあるけど、本当にかさばるじゃん?(隣の部屋をさして)こっちの部屋とか、もうレコードの倉庫ですよ(笑)。CDは、日本ではまだ流通もしてるしこれだけ聴かれてるけど、アメリカとか行くともうないよね。だから、どんどんデータになっていくんだろうと思うけど、こうやって歌詞があったり、それを見ながら聴いたりするのはやっぱりいいなって。
でも、聴き方はハードに合わせて時代と共に変わるわけだから、こういうものに抗ってもしょうがないので。その都度その都度、出したいなと思う手段でリリースできれば良いかなと思ってます。勢いで作ったものとかは、別に盤じゃなくて、その日のうちにダウンロードでバンッて出すのもいいしね。そういう意味では、ホント、おもしろい時代だと思います。
この日のkit galleryでは写真家・山川哲矢氏の写真展「myopic」が開催中でした。
#FAVORITE.01
Girl With The Gun / Selftitled
――では、kit gallaryで聴いているおすすめ盤、1枚目は「ガール・ウィズ・ザ・ガン」です。
チャーベ:男の人と女の人のイタリアのユニットで、すごく好きで。“揺らぎ系”っていうキーワードでまとめて紹介している友人に教えてもらいました。日本盤を出したいっていうことで僕がコメントを書いたんですよ。
白昼夢みたいなフワ〜ッとした音楽で、ギャラリーにいる時とかにすごく聴きたくなるんですよ。いい意味で、まるで空気みたいな音楽。
「Fix The Stars」っていう曲が、すごく良くて。何て言うのかな… ひとりぼっちの音楽、みたいな?時間が止まったような感覚というか、特別な気持ちになる音楽なんですよね。
#FAVORITE.02
Dollar Brand / African Piano
チャーベ:これはツネちゃん(恒岡 章/Hi-STANDARDのドラムスなどで活躍)が、昔僕の誕生日か何かにくれたもので。うん、この外袋は捨てられない(笑)。
ピアノのソロ集なんですけど、最近こういったECM RECORDS(ジャズをメインとしたドイツのレーベル)のピアノ・ソロとかがすごい気持ちよく感じて。ECMのものを聴くおもしろさがやっと分かってきたっていうか。
例えばさっきのGirl With The Gunとかも、流れていて心地よく感じる時があって。聴いてるんだけど、聴こえてない瞬間があるみたいな。風景に溶け込んでいるような音楽がとても気持ちいいんですよね。
――言ってみれば、ミュージシャンとしての脳ミソを刺激しない音楽というか。
チャーベ:そうそう。だから今回セレクトしたのは、あまりそういう脳ミソを使わなくていい音楽かもしれない。ギャラリーで流しているものなので、音楽のことから離れている時に聴いているものなんですよね。
#FAVORITE.03
潮田雄一 / 8 songs
チャーベ:潮田雄一くんは、元々QUATTROっていうバンドにいた人で。もう単純にファンですね。めちゃくちゃ良いんですよ。もちろん曲も声も歌詞もスゴいんですけど、最初ライブを観に行った時に、ひとりギターを爪弾いてて。それでインストとかやるんですけど、正に自分の中で“揺らぎ系”の波とパシン!と来た瞬間があって。
若いバンドとかを見ると、こういうところがもっと良くなるんじゃない?って思う瞬間ってたまにあるんですけど。なるべく最近は言わないようにしてるんですけど、聞かれたら「こうだったらこういう風になるかな?」とかっていう意見で語るんですけど、彼の音楽にはもう何もないんですよ。隙がないっていうか。
自分からは絶対出てこない音楽なので、純粋に大好きですね。ライブもおすすめです。