サトウチカさんに「オフグリッドな暮らし」について話を聞いたら、想像以上におもしろかった。

少し前の話になりますが、「自分史フェスティバル 2017スペシャルイベント」に参加してきました。

自分史とは、自分の生き方を記した書物やメディアのこと。それ以外でもコミュニケーション、自己認識や生きがいを見つけるためのツールとしても使われています。

そこで「自分史におけるターニングポイント」をテーマに、参加者が共に語らうセッション企画があり、ゲストとして登壇していたのが、“オフグリッドな生活”を送るサトウチカさんでした。

オフグリッドとは、「オフ=切る」「グリッド=社会に張り巡らされた網目」。

送電網などの張り巡らされた大きなシステムから自立して、自分の暮らしのなかで必要なエネルギーや食料などを生み出すライフスタイルのこと。

チカさんはこの暮らしをしながら、自分を縛っているものから自身を解き放ち、自分の価値観を大切にまっすぐ生きてきたと言います。そんな彼女の人生のターニングポイント、そしてこれからの生き方とは?

(※本記事は「自分史フェスティバル」でのトーク内容に加筆、編集を加えたものです)

「大人は私を、
自由にしてくれない」

「小、中、高と成長していくなかで、大人への反抗心というものがどんどん強くなっていきました。幼少期の家族の関わり方の中で、自分のやりたいことが許されないという窮屈な感覚がありましたね。大人は私を自由にさせてくれない! みたいな。そんな不自由さの中で徐々に反逆的になっていきました。

たとえば学園祭のときなんですけど、クラスみんなで決めたTシャツを作って着るんですけど、着たくない!みたいな感じで(笑)。周りと一緒のことを強要されたりとか先生と親の言うことを聞くということがすごくイヤになっていった中学・高校時代でしたね」

大人に対する疑問や違和感は、一方で本質的なことは何なのか、ちゃんと自分で理解できるくらい考える力のある子どもだったとも言えるかもしれません。その反抗的なエネルギーは、徐々に勉強の道へとシフトしていったそうです。

「親や先生を困らせたり怒らせたりしておく一方で、やることはやる。金髪でも良い成績を出せば文句は言わないでしょ?という感じで大人たちに接していました。中学校でも高校でも部活にも入らず不真面目な生徒でしたが、高校は県立トップの学校へ進学して、大学は現役で慶應義塾大学法学部に合格して入学しました」

 「やることはやる」。

ここで感じるのは、チカさんの意志を貫く強さ。そんな彼女の人生のターニングポイントになったのが、ボストンへの留学でした。

まず2001年、大学4年生のときなんですけど、半年間アメリカのボストンに留学をしました。これは自分のなかで変化が起きたものとしてとても大きかったです。それまで親と先生の支配下というか、そこでもがいていた私が一歩抜け出して、私のことを誰も知らない世界にポンっといったときに、しかも言語が通じない、文化も違う、友だちもいない家族もいない、というところで半年間生きられたっていうのが、すごく自信になりました」

オフグリッドな
「結婚生活」

「そのあと就職するんですけど、やっぱり苦手なんですね。上司の言うことを聞くとか、決められた会社に毎日行くとか。結果的に身心ともに疲れて体調を崩すようになりました。そんなボロボロになったあとに、結婚をします。それを期に退職しました」

結婚をきっかけにライフスタイルが変わり、自分の好きなことができるようになったというチカさん。精力的に活動できるようになったそうです。電力会社に頼らないオフグリッドな生活をし始めたのもこの頃。

「その後は主婦になって好きなことができる時間ができたことで、アロマテラピーやハーブなどを学びました。この経験を通して自然なものと共に生きる土台が出来ていきました。セラピストとして教室を開いたり、アロマショップで働いたり。その後、オフグリッド生活に挑戦したら注目を集めることとなって、今はこちらの活動に注力してます」

見る限り、人が羨むような幸せな結婚生活。しかしこのイベント内で、新たな決断をしたことを教えてくれました。

「結婚して8年なんですけど、今年の5月に籍を抜いて婚姻制度に囚われないパートナーシップにチェンジしました。一般的な離婚とは意味合いが違うので、わたしたち夫婦はこれを『婚姻オフグリッド』と名付けました」

会場中があたたかな拍手に包まれました。ご主人もその場に来ているというなんだか不思議な光景でしたが、チカさんにとっては、国に認められて法で縛られている関係のほうが不思議で仕方なかったようです。

未来もきっと
オフグリッド

オフグリッドな生活を始めてみて、電気の自給も楽しかったんですけど、私がより興味を持ったのはガスとのオフグリッドのほうで、太陽熱を使ったお料理にものすごくハマったんです。ソーラークッカーで作ったご飯は本当においしいんです! なんでお日様ってこんなにもご飯をおいしくしてくれるんだろうと。オフグリッドのお話会や講演会に加えて、これからはお日様料理研究家としてソーラークッキング講習会などをして広めていきたいと思っています」

講演会では、実際にソーラークッカーで作った料理を参加者の方々に食べてもらうそうです。現在のチカさんは婚姻オフグリッドを終えて家を離れ、沖縄をスタートに旅をして講演会をしながら暮らしています。

しっかり自分の心の声と向き合い、自分らしい人生を歩んでいるチカさん。もちろん今までしてきた選択に、恐れや不安がなかったわけではありません。

それでも家から離れて、旅をしながら生きる理由がブログにはこう記されていました。

「わたしが旅をしながら生きてみようと思った理由がハッキリとわかりました。この地球を愛する素敵な人たちに出逢いにいきたかったんだと。血縁を超えた地球家族となる父や母や兄や姉や弟や妹となる人と結ばれたかったんだと。待っていては逢えないまま人生が終わってしまうから、だから大切な夫のもとを離れてでも大好きなお家を飛び出してでも、こうして知らない土地に来たんだと」

ーブログ「チカノミチ」よりー

「オフグリットな暮らし」とは、チカさんにとっては電気の自給のことだけではありませんでした。

自分の心に正直に決断していくことも、ひとつのオフグリッドなのかも知れません。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。