雪の日を単純に、喜べなくなった私たち。
15時。
ふと窓の外を見たら、思った以上に世界が白くなっていてギョッとした。
電車大丈夫かな、と思いながらパソコンに再び目を向けると「早帰り推奨」とバックオフィスから連絡がきていたことに気がつく。
普段は遅くまで残って仕事をする人たちが、あっさりとオフィスから去っていく。まだ16時にもなっていないのに嘘みたい。
なんだろう、こんなふうに強制的に仕事を終わりにさせられた日は、主婦ってこんな感じだろうか、とか思う。16時に、帰路だなんて。
生足にハイソックスを履いて、ほとんど防寒能力のないスカートを纏う女子高生とすれ違う。そういえば帰宅部はいつも、16時くらいに帰るのか。
普段はすれ違わない、いつもとは違う人たちで溢れる、いつもと同じはずの帰り道。
こんな寒い雪の日に、猛烈に欲しいものがある。ふたつ。
その1
「おかえり。雪すごいね、転ばなかった?」
帰ったら、恋人からのこの一言が欲しい。
早く帰れたのは嬉しいけれど、寒いし、濡れるし、遅延した電車の中で押しつぶされてヘトヘトだし。とりあえず、ぬくぬくした部屋と、ぬくぬくした恋人に包まれたい。
でも、このタイミングで恋人がいて(さらには同棲していて、彼氏の方が早く家についていて)玄関のドアを開けてくれるなんて、そんな都合のいいことある?
その2
露天風呂と熱燗
はぁ〜〜〜!欲しすぎる!!!
この際、熱燗の美味しさを理解しているかどうかなんて大した問題ではない。飲みたい。銀世界に包まれた町並みを見渡しながら、「ふぅ〜〜」とか言いたい。わざとらしく、畳んだタオルを頭の上に置いたりしたい。
町並みを一望できるような露天風呂の温泉とか、都合よく徒歩圏内にあるわけないけど。
このふたつがないのなら、せめて友達と飲みに行きたい。でも電車は規制されてるし、遅くなったら危ないし、結局帰宅ラッシュにうもれながら帰るしかないじゃん!
さぁ、この夜をどう過ごそうか?
映画を見るでもよし、本を読むでもよし、最近サボっていた料理をするのだって。
強制的に手持ち無沙汰にされる日も、たまには無いと、心と体のバランスがおかしくなってしまうから。ぬくぬくした恋人も、露天風呂もないけど、ちょっとお得な気分だけはある。
明日の朝会議、やるのか?なんて心配をしてしまうあたり、私たちは随分、毎日仕事を頑張っている。
だからこんな雪の日の夜くらいは、持て余した時間にどっぷりつかって、ぼけーーーーーーっとするためにある。と、思う。
何が言いたかったって?
働いているすべての人へリスペクトを込めて、雪の日まで、お勤めご苦労様です。気をつけて帰ってくださいね。