思い出のキス#03 「生徒会室で」
誰にだってある。思い出すと、ほのぼのしたり、なんだか恥ずかしくなったり、切なくなったり、涙がこぼれそうになったり。そういう特別な気持ちが心に生まれるキスのエピソードを、みなさまにお届けしていきます。
#03 「生徒会室で」
「あ、もしもし?」
「うん」
「あのさあ、明日、キスしようよ」
「いいよ。でも、どうしたの急に?」
「雑誌に、13歳から14歳でファーストキスをする人が多いって書いてあったから」
「あ〜わかった」
「じゃあ、明日、ホームルーム終わったら、生徒会室でね。バイバイ」
13歳。まんまとティーン誌の情報に踊らされたわたしは、そんなこんなで、はじめての彼氏と付き合って約2ヶ月目にして、ファーストキスの予定を取り付けた。生徒会室が待ち合わせ場所になったのは、ふたりとも生徒会のメンバーだったから。
そして翌日。約束どおり、ホームルームが終わった後生徒会室に集合した。ただ、「ファーストキスがフルーツの味がするって、よくいうよね。フルーツ飴、買いに行こう!」というわたしの思いつきで、キスの前にコンビニまでフルーツ飴を買いに行った。
無事、フルーツ飴をゲットして、また、生徒会室へ。
飴を食べて、いざキスをしよう、となったとき。なんだか、すごくすごく恥ずかしくなってきた。
「ねえ、目つぶって?」
「やだ!恥ずかしくてつぶれない!」
「じゃあ、目ふさぐから!」
結局、彼に目をふさがれて、しかも、いまでいう壁ドンの状態で、念願だったファーストキスを交わした。
その後は、「キスしちゃったね!」なんてふたりで騒ぎながら、そそくさと生徒会室を去った。
フルーツ飴まで食べたのに、ファーストキスはフルーツの味がしなかった。それは、まるでハプニングのようで、ふたりの距離が急激に近くなったり、より一層好きになったり、なんてこともなかった。
ファーストキスって、案外そういうものなのかもしれない。
協力:R.Nさん(29歳・ライター)