思い出のキス#17 「わたしは、ものすごく鈍感な女」

 

誰にだってある。思い出すと、ほのぼのしたり、なんだか恥ずかしくなったり、切なくなったり、涙がこぼれそうになったり。そういう特別な感情が生まれるキスのエピソードを、みなさまにお届けしていきます。


最近、彼氏以外の人とキスをした。

相手は仕事関係の飲み会で知り合った8歳上の人。話はおもしろいし、まあまあかっこいい。一緒にいて楽しいのはもちろんだけど、何よりも男気のある性格にとても惹かれた。

ある夜、ふたりで焼肉を食べに行った。お酒も飲みながらいろんな話をした。仕事のこと、過去の恋愛のこと、そして今の恋愛のこと。真剣に聞いてくれるのが嬉しくて、いつになく自分をさらけ出すことができた。

「ホテル、行く?」

お店を出て駅まで歩いている途中、彼がこう聞いた。
正直「家じゃなくてホテルなんだ」とがっかりした。でも断る理由はとくにない(その時彼氏のことは頭になかった)。ふたつ返事で「うん」と言い、後をついて行った。

 

部屋に入り、ベッドに座る。
「あ〜俺、これからHちゃんとすんのか!」そう言って、キスをしてきた。

 

全然しっくりこなかった。唇の感触も、ツバの味も、舌使いも、そもそも雰囲気も。何もかもが違った。

「先にシャワー浴びたいです」

逃げるようにわたしはシャワールームへ向かった。そして考えた。このままエッチしちゃっていいのかどうか。

3分くらいで答えは出た。

 

「ごめんなさい!彼氏がいるので、なんか悪いし、やっぱ帰ります」

自分ながら下手な言い訳すぎてびっくりした。とにかく早く家に帰って彼氏に会いたかった。引き止められそうになったけど、「ごめんなさい」を連呼しながら、駆け足で部屋を後にした。

キスまでしないと彼氏の大切さに気づけないわたしはきっと、ものすごく鈍感な女。

 

協力:K.H(24歳、ショップ店員)

Top photo: © oklyasya/Shutterstock.com
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