思い出のキス#15 「最悪なファーストキス」
誰にだってある。思い出すと、ほのぼのしたり、なんだか恥ずかしくなったり、切なくなったり、涙がこぼれそうになったり。そういう特別な感情が生まれるキスのエピソードを、みなさまにお届けしていきます。
「うっげ!!!!!!」
小学5年生。クラスメートの男友達H君と映画館でファーストキスをした感想だ。
わたしにはM君という両思いの男の子がいた。付き合っていたわけではないけど、放課後一緒に帰ったり、おやすみの日はM君のお家で一緒に宿題をしたりしていた。それなのにどうしてH君と映画館に行ったか。
キスの練習がしたかったから、だ。
当時、わたしの周りではキスが一大ブーム。友達も続々とファーストキスを済ましていた。一人取り残されるのは嫌だし、わたしもM君とキスを交わすことを決意した。が、その前に練習をしておきたかった。初めてだから下手で仕方ないのに、むしろ下手でいいのに、変にプライドが高かったわたしは、M君に「キス、上手だね」と褒めてもらいたかったんだと思う。
という訳で、ただただ友達として仲が良かったH君と映画館へ出かけた。
キスをしたのは上映中。スクリーンに釘付けな彼の肩をトンっとたたき、こちらを向いたタイミングでわたしからキスをした。
しっとりやわらかいものが自分の唇に重なる。小学5年生のわたしにとって、その感覚がとてもとても気持ち悪かった。
態度にこそ出さなかったけど、心のなかで叫んだのが冒頭の言葉だった。
結局、その後誰とも口ずけすることなく小学校を卒業した。もちろんM君とも。
協力:S.H(25歳、カフェ店員)
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