思い出のキス#06 「行ってきます、の」
誰にだってある。思い出すと、ほのぼのしたり、なんだか恥ずかしくなったり、切なくなったり、涙がこぼれそうになったり。そういう特別な感情が生まれるキスのエピソードを、みなさまにお届けしていきます。
#06 「行ってきます、の」
彼の家にお泊まりした翌朝の出来事。
パタパタと出かける準備をして、先に家を出ようとしたら、まだベッドにいた彼が、まるで小さい子どもみたいに駄々をこねはじめた。
「ねえ、行ってきますのハグはー!行ってきますのチューはー!ねえねえー」
「しょうがないなあ」と思いながら、チュッと軽いキスをした。だけど、そのまま彼がぐるっと首に手を回してきて、もっとキスをおねだりしてきた。
わたしは本当にはやく行かなきゃいけなかったから、「むりだよ〜」と言って、手をほどこうとするんだけど、できない。無理やりベッドを離れるという強硬手段に出たら、そのまま彼も一緒にズルズル引きずられてきた。
なんかもうおかしくて、笑えてきちゃったわたしは、彼の要望に答えて、もう一度だけ、キスをした。
「ありがと。じゃ、行ってらっしゃい!」
ようやく満足したのか、ニヤッと微笑み、やっと手をほどいてくれた。
ちょっとわがままだなーと思うところもあるけど、わたしは彼のそういうところが大好きなんだよなあ。
協力:Y.Fさん(19歳、大学生)