思い出のキス#07 「好き、を確信した瞬間」

 

誰にだってある。思い出すと、ほのぼのしたり、なんだか恥ずかしくなったり、切なくなったり、涙がこぼれそうになったり。そういう特別な感情が生まれるキスのエピソードを、みなさまにお届けしていきます。

 

#07 「好き、を確信した瞬間」

 

「わたし、Rさんのこと、好きです」

 
大学3年生の冬。
たくさんの人が行き交う渋谷の歓楽街。
 
飲み会の帰りだったから、どんな流れでかは覚えていない。だけど、とにかくわたしは、お酒の勢いにまかせて、気になっていたバイト先の先輩にこんな言葉を口走ってしまった。
 
先輩は、5歳上。フリーのカメラマンをしながら、その収入だけでは生活ができないから、とバイトを掛け持ちしていた。自分に自信が持てないわたしとは真逆な、自信に溢れた性格がかっこよくて、とても尊敬していた。何度も就職の相談に乗ってもらったりしていて、つまりは、わたしの“憧れの人“だった。
 
 
 
「なんで今言っちゃったんだろう……!」と後悔しはじめたときには、もう遅かった。
 
「じゃあ、キスしてみる?」
 
先輩は、こう言った。そして、戸惑いを隠せず硬直するわたしの返事を待たずして、すーっとキスをしてきた。
 
 
きっと、わたしの目は、テニスボールみたいにまん丸くなっていただろう。
唇が離れたとき、ギラついた夜の渋谷が、星屑がパラパラと舞う煌びやかな世界に見えた。まるで宙に浮いているような、ふわついた感覚にすらなった。
 
あの瞬間、わたしは、たしかに恋に落ちた。
 
 

協力:T.M(24歳、スタイリストアシスタント)

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。