忘れられない「国語の教科書」で読んだ物語(夏のおはなし)
大人になっても忘れられない、小学生の頃に「国語の教科書」で読んだ物語。集まって文章になった日本語から「みずみずしさ」を感じたのは、このお話に出会った時が初めてだったように思います。
「やまなし」
二疋の蟹の子供らが青じろい水の底で話していました。
『クラムボンはわらったよ。』『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンは跳ねてわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『やまなし』作:宮沢賢治(パロル舎)より抜粋
辞書にも載っていない「言葉」が、あたりまえのように出てくる物語。なんだかすごい言葉を知ってしまったような気がして、当時人知れず感じていた、心のざわめき。
結局、大人になった今も、あの名前が指すものが何であるのかはわからないまま。それでも「クラムボン」という言葉は、夏の風物詩のようなものとして自分の中にあります。
そこにあるのに、掴むことのできないもの。ずっとそばにいるのに、まだ目に見えないもの。すこし奇妙で、長い夏休みの白昼夢のような感覚を与えてくれる「言葉たち」が、静かに揺らめいている物語です。
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