多島美を見にいく、広島「江田島」

あまり聞きなれないかもしれないが、「多島美(たとうび)」とは、瀬戸内海など内海に浮かぶ、小さな島々が連なる様子を形容した言葉だ。

この言葉を聞くと、私たちの祖先はなんと情緒的だったのだろうと思わずにはいられない。当時の日本人は心の中で島々を俯瞰し、その美しさを感じていたのかもしれない。

連なる島々にはそれぞれ魅力があるが、その中でも今回は広島県の「江田島(えたじま)」にフォーカスしよう。

波が立たない
瀬戸内海の贅沢さ

© 2018 Shun Goto

広島市内から船で30分、もしくは陸路でも移動できる。島外まで通勤するひとも珍しくないというアクセスの良さを誇りながら、100平方キロという広大な面積に対して人口はたった約2万4000人というサイズ感。

ゆったりとおおらかな時間の流れは、島ならではと言えそうだ。

© 2018 Shun Goto

瀬戸内海の海は、波が立たない。とても静かで、まるで湖のような水面は、眺める人の心まで落ち着かせてくれる。そのせいだろうか、島の中にもやさしい空気を感じさせる。

地元の人曰く「日照時間の長さが自慢」という江田島は、食文化も豊かだ。みかんやレモンなどの柑橘類、近年新たな特産品となったオリーブ、海に囲まれているため牡蠣を筆頭にした新鮮な魚介類のおいしさなど、都心のそれと比べることはもはや無意味なほど恵まれている。

そして、江田島に行くなら忘れずにチェックしてほしいのが、夕日だ。

今日も生きたことを感じる
江田島の「夕日」

© 2018 やなぎさわ まどか

太陽はひとつだが、どこから見るかによって表情は大きく異なる。

沈みゆく太陽は視界の中心に位置させよう。両側の水平線にまるで水墨画のように透きとおった濃淡を魅せる島々のシルエットが伸びている。先人たちが美しいと表現したのは、この景色だったのかもしれない。

みるみるうちに沈んでしまう夕日だからこそ、その輝きは今日も一生懸命に生ききった人に響く。まばたきすらもったいなく感じるほどの自然美を、全身で感じてほしい。

自然の脅威を乗り越える
島民のつながり

しかし、2018年7月初旬に西日本を襲った「平成30年7月豪雨」のため、広島市や呉市とほど近い江田島でも、河川の氾濫や断水といった混乱が起きた。江田島市民はそれぞれの立場を超えて協力し合い、この困難を乗り越えるべくすでに歩き出している。

1日も早く、島で暮らす人々に日常の喜びが戻ることを祈ってやまない。そしてまたたくさんの人に、あの夕日と多島美を見に江田島を訪れてほしい。

Top image: © Shun Goto

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