銀行口座の残高を見るのが怖すぎる、で大ブレイク!「Louis Cole」
3度目の来日となる12月の東京ソロ公演のチケットはすでに完売!京都公演も売り切れ必至な大人気のルイス・コールってどんな人? というわけで、本人にインタビュー。
「銀行口座の残高を見るのが怖すぎる」と繰り返し歌ったYouTube動画が、レッチリのボーカル、アンソニー・キーディスの目にとまり、直接ツアーのオープニングアクトをオファーされたのは1年半ほど前。あれよあれよと言う間に人気アーティストに。
一風変わったシンデレラストーリーの持ち主ですが、その評価はクインシー・ジョーンズやサンダーキャットといった名うてのジャズミュージシャンも太鼓判を押すほど。決して色物ではなく、実力派なのです。
音楽はもちろん、クレイジーなMVをつくるクリエイターとしても知られている彼。まずは彼が手がけた下のMVを一度再生してみて。
「Overtime (Live Band sesh) - KNOWER」。ルイス・コールのMVはこの“some guys house(ある男の家)”でよく撮影されている。タイトでファンキーなリズムに、ゲームミュージックのようなサウンド、マイケル・ジャクソンのような歌などが特徴的。
――12月の東京・京都でのソロ公演、もうすぐですね。
ベストを尽くす! エネルギー全開で楽しいものになると思うな。
日本で演る時は観客の人たちとつながるのが簡単でみんなクールだから、僕自身もすごく楽しめるものになると思ってる。ドラムを叩いてキーボードを弾いて歌って全部いっぺんにやって。楽しいライブになると思うよ!
――こちらも楽しみです。さっそくいろいろと伺わせてください。まず、ブレイクのきっかけとなった「bank account」ですが……。
歌詞の「銀行口座の残高を見るのが怖すぎる」っていうのは、当時の僕の生活を反映しながら、その心境を歌ったものなんだ。
まあ、ものすごく深刻だったというわけじゃないんだけど、実際に口座の残高がかなり減ってたのはたしかで(笑)。考えたくない、見たくないって状態になってた。
じつはこれってほんの1年半くらい前の話なんだよね。
――経済的に苦しい状況から一変。レッチリのツアーに同行し、今では世界中でライブができるようになりました。今年の5月にKNOWERでジャパンツアーをしたばかりで、今回の再来日です。
たしかに、あのMVをアップしてから、たくさんの人が僕のことを知って、いろんなことが連鎖していった。
でも、今も当時もやってることはまったく同じだよ。自分の内面を見つめながら、自分にとって最高の音楽をつくろうとしているだけだから。
東京に行くのはこれで3度目。全地球上で最も好きな場所のひとつだから楽しみだよ。
――東京のどんなところがお気に入りなんでしょう?
楽しいことがたくさん待ち構えてるところかな。
なんと言っても、セブンイレブンの食べ物がおいしいのがイイ!LAはひどい(笑)。変な服を探すのも楽しいよね。前回もたくさん買い物をしたよ。例えば、絶対に日本にしかないようなユニークなメガネとか。
あとは、刺身が好きだから、魚もたくさん食べたいと思ってる。そうそう、前回の来日では、座間にも行ったんだけど、ちょっとした田舎って感じで自転車乗ったのが気持ちよかったな〜。
食べ物も文化も好き。でも、やっぱりライブに来てくれる人たちが、本当に毎回すごくいい感じなんだよ。
――ユニークなメガネっていうのが気になりますが(笑)、あなたのMVからもユニークネスを感じます。新曲の「F it up」も脱力系の振り付けに、Fワード連発。しかも律儀にFワードカウンターが表示されています。アレ、わざわざ設置したんだと思うと、おかしくて。
単純におもしろいかなと思ってやっただけだよ。
ドライブ中にアイデアが浮かんだんだ。別に、自分の人生を台無しにしようとまでは思わないけど、すごくおもしろい経験をしたいと思うんだったら、時にはリスクを冒すことも必要で、生きているうちにやってみなくちゃダメなんだっていう……。まあ、とにかく、運転中にそういうふうに考えて。で、それを歌詞にしたら、Fワードが増えていった(笑)。
――出演者の人数が多くて、そういう意味でも挑戦的だったのかなと。
今回は、管楽器もリズムセクションも含め、全部のパートを僕が書いたから、いつもと比べて仕事量は多かったよね。参加人数が多い曲はアレンジに時間がかかるから。この次こういう大所帯の曲を演る時は、すでにある自分の曲をセルフカバーすると思う。
初めからあんな大掛かりなホーン・セクションとビッグバンドを念頭に書いた曲ではなくて、あとから大人数で録ったらカッコイイかもしれないって思いついたんだ。
なんでも思いつきが多いね(笑)。
――これまでのオリジナリティ溢れるルイス・コールの楽曲の中に、あえて共通項を見出すとすれば、ゲームミュージックサウンドが挙げられると思うんですが?
ゲームミュージックは大好きだ!
日本のゲームも、スーパーニンテンドー(※スーパーファミコンのこと)を持ってた。とにかく音楽がカッコよくて、そこからかなり影響を受けてると思う。64もすごく好きで、とくにマリオカートはハマったな〜。
……うん、たしかにミュージシャンとしての僕の大きな部分をゲームミュージックが占めてると思うよ。
――当時そういったゲームをプレイしていた世代やその下のYouTube世代は、あなたのようなマルチプレイなスタイルを好む傾向があるように思います。同様のルーツを感じるJacob CollierやVulfpeckといったアーティストも。
彼らとは間違いなく共通点はあるし、同じようなことをしていると思う。つまり、DIYというか、YouTubeキャリアを突き進んでいるというか。
今はメインストリームじゃなくても、あらゆる音楽をやっているあらゆる人が成功する可能性がある。それってすごくいいことだと思うよ。
僕が所属しているレーベル、Brainfeederにもいろいろなタイプのアーティストがいるけど、誰もが自分自身のサウンドを追求して深く掘り下げていて、それはすごくクールなことだと思う。
自分がやりたいことをやって、そういうものを使ってファンに発見してもらうっていうのがいいよね。
ちなみに、YouTubeに“YouTube Poop”っていうジャンルがあるの知ってる?
簡単に言えば、サンプリングしてきた映像を自由な感性で編集しておもしろくするっていうものなんだけど、僕はそういうのを観てきたわけ。Noisepuppetって人のビデオが特に好きでかなり影響を受けてる。
――あなたの楽曲「When You’re Ugly」のMVもYouTube的で、振り付けなんかはモンティ・パイソンみたいだなと思って観ていました。
まあ、僕にダンスの知識はまったくないし、あんな感じで踊りたいと思っただけだね(笑)。
言われてみると、「Weird Part of The Night」って曲のMVでやった変な歩き方とかは、モンティ・パイソンのバカ歩きに影響を受けてるかも。
かなり小さい頃に、姉がものすごくハマってて、父と姉と3人でよく観てたから、あの感じはかなり吸収したと思う。
――ゲームやYouTubeの影響を受けたというアーティストは多いですが、あなたの場合はそのなかでも音楽に軸足を置いた活動をしています。音楽をはじめたきっかけは?
音楽をはじめたのはかなり早くて、たぶん4歳〜5歳くらい。
キッチンにあるポットとかフライパンとかを叩くようになって、それからドラムを叩き始めたのが8歳くらい。音楽を自分で書き始めたのも11歳くらい。
きっかけがあったというよりも、もともとただそれをやるのが好きで、やらないと気が済まなかっただけなんだよね。考えてからやったというより、気付いたらやってたというか。
で、17歳くらいの頃にトニー・ウィリアムスの『エマージェンシー!』というアルバムを聴いて、自分も音楽をやって生きていこうと思った。もっとマジメにやろうと思ったんだ。それが僕の人生を変えた。
あとはやっぱり父親から受けた影響が大きい。考えてみると一番影響を受けた人物は彼かもしれないね。父はしょっちゅうピアノを弾いてたし、いつも音楽を聴いていた。クラシックとかジャズとか、あとはジェームス・ブラウンとか!
だから、ある意味音楽的に僕をつくったのは父だと言えるかもしれない。
――今の作風からは想像もつかないルーツですね(笑)。
もちろん、それからいろいろな音楽を聴いて育った。
なかでも、2011年にスクリレックスを聴いた時は、音楽に対する考え方が変わったというか、うん、それはよかったね。
彼のサウンド・デザインの方法論は、僕がそれまで聴いたことのある音楽とまったく違っていた。他にもカッコイイ、独自のサウンド・デザインでエレクトロニック・ミュージックをつくってる人たちはいるけれど、彼は音をメロディや曲に変化させるというか……とてもグルーヴがあって、僕の曲作りは彼の影響を受けてガラッと変わった。
――僭越ながら、あなたの作品は見どころが多いと思います。演奏やMVにおけるパフォーマンスなどなど。でも、お話を伺っていると、やはり“曲を作る”という作業がベースにあるんですね。
うん、やっぱりソングライティングだよね。それが今、僕がここにいられる理由だと思うよ。自分が一番気にかけているのは作曲だし、誇りを持っている。
――なんでも、その作曲能力を認められてあのクインシー・ジョーンズの自宅に招かれたとか?
彼の自宅では、KNOWERというバンドで一緒にやってた仲間のジェネヴィーヴと、リビングでマイケル・ジャクソンの「P.Y.T」のカバーを披露させてもらった。クインシーはワカモレを食べながら座ってそれを聴いてて……とにかくノリノリだったのはよく覚えてるよ。
部屋には3人だけで、今思えばそれがオーディションみたいなものだったんだろう、って感じだよね。
――クインシー・ジョーンズの自宅でパフォーマンス!!ミュージシャン冥利に尽きるというか……。
でも、一番強烈な思い出っていう意味では、レッチリのツアーでメキシコシティに行った時のほうが、インパクトが大きかったかも。あんなにものすごい数の観客を前にしてライブしたことはなかったからね。
――緊張した?
そりゃ緊張したよ!
だって、僕は去年までは人前で歌うことに慣れてなかったんだから。それが急にすごい数の観客を前で歌うことになっちゃったもんだから。むちゃくちゃ怖かった(笑)。
でも、あれ以降、ステージ上ではそんなに緊張しなくなったかな。
――度胸がついたんですね(笑)。
というよりも、曲を書く時のほうが緊張するんだ。あらゆることに気を配ってるからかな。
歌詞もメロディもコードもビートもサウンドも。
自分の魂をギュッと絞るようにして、僕の中にある可能なかぎり最高の音楽を見つけようとしてる。
――やはり作曲家というか、クリエイターとして音楽を作ることがもっとも重要だと考えているんですね。
ライブの時はすでに曲がそこにあるから、もうちょっとリラックスできるんだよね。
とはいえ、ベストなパフォーマンスをすると同時にその場で何か新しいものを生み出そうという意識も強く持っているけどね。
だから、ライブを楽しみにしてくれているファンのみんなには、僕の音楽を信じて聴いてくれて本当にありがとう! って言いたい。
――ライブがますます楽しみになりますね。ありがとうございました。
さて、ルイス・コールさんの日本公演は、12月13日(木)渋谷WWW X、12月14日(金)京都 METROと2日間にわたって開催予定。東京公演はすでに完売、京都公演も売り切れ必至なのでお問い合わせは早めが吉です。
彼の最新アルバム『Time(タイム)』やYouTubeのMVも、この機会にあわせてチェックしてみてください。
>>>ルイス・コールのMVはこちら。
>>>KNOWERのMVはこちら。