ハワイ経験3回以上で、ここを知らないなら損してる!
Googleのクチコミでは、7000件以上のレビューがあるのに評価が「4.6」。TripAdvisorでも、7000件以上なのに「4.5」。食べログだとしたら、間違いなく話題になっているはずの高評価を誇る「ポリネシア・カルチャー・センター(PCC)」。
本当に申し訳ないんですけど、僕はまったく聞いたことがありませんでした……。サイトには以下のようなコメントがずらり。
「当初は全く期待しておりませんでしたが良い意味で裏切られました!」
「ショーが素晴らしかったし、バスガイドさんも、パークガイドさんも素晴らしかったので、是非また行きたいなと思えるパークでした」
あまり名前が知られていない「PCC」。ウェブサイトを見ても、このテーマパークを知らない人にはちょっと分かりづらい作りになっていて、うまく全貌がつかめません……。だから、実際に足を運んでみました。
ところで、シャカの起源って知ってます?
「アロハ〜」と言いながら、シャカサインでポージング。
ハワイの象徴ともいえるハンドサイン「シャカ」。聞くところによると、Hamana Kaliliという男性に起きた事故が、すべての始まり。
彼はサトウキビ工場で働いていた時に、人差し指から薬指までの3本の指をローラーにつぶされてしまいました。そのあと、Kahukuというエリアの駅で保安員となり、汽車に向かって、笑顔でいつも手を振っていたそう。“じゃあね”と使われているシャカの原型です。
Hamanaのちょっと変わった様子を見た通行人や観光客は、3本の指を折りまげて、彼の手を真似するように。最初はからかう意味もあったといいますが、背景を知らない人たちはハンドサインをイケてると思い、島中に広がるほどのムーブメントとなりました。
このハワイ文化が生まれたのは、1940〜50年代。昔から島の人たちが使っているハンドサインかと思いきや、意外と歴史が浅いんですよ。
テーマーパークの入り口付近にあるHamana Kaliliの銅像。
Hamana Kaliliの銅像の前で記念写真を撮る人も。
すべてを楽しみたいなら
3日は必要な「PCC」
ゲートをくぐると、南国に来た感覚に。
シャカサインのようなハワイに関する文化を知れるのが「ポリネシア・カルチャー・センター(PCC)」。ハワイだけでなくポリネシアに属するニュージーランドやサモア、フィジー、タヒチ、トンガの生活を再現した“村”があり、それぞれの文化要素が散りばめられたショーも鑑賞できます。
「PCC」には、ワイキキから北に車を走らせて、だいたい60分で着きます。
すべてのアクティビティとショーを楽しむなら合計で16時間もかかると言われているんです!園内の村が開いている時間は12 :00~18:00、最低でも3日は必要になるってことです。
ちょっと疑っちゃいますよね。そんな気持ちで、施設を歩き回ってみました。
Day 1.01.
未知のハワイを知れる!
ショーでは、簡単なフラダンスを教えてくれます。
まずは、ハワイ村。
ロイ・カロという水田があり、その場でタロ芋をペースト状にした「ポイ」を食べられます。ハワイでは神聖な食べ物と考えている人もいるそうですよ。
ショーで目についたのは、踊っている人の顔つきが真剣で笑顔がまったくないダンス。ウクレレではなく打楽器に合わせて、パワフルな動きを見せてくれます。
フラカヒコや古代フラと呼ばれていて、伝統的なフラダンス。先住民族の武術「ルア」の骨を砕く動きが取り入れられているから、アグレッシブなんです。
また、ショーではウクレレの音色が生まれたワケも教えてくれます。
ポルトガルの宣教師がギターをハワイに持ってきたはいいものの、ちょっとした問題が発生。彼らは正しい音色を思い出すことができずに、うまく調律ができなくなってしまったそう。結果として、今ではリラックスできる音と言われていますが、その歴史には少しマヌケだなと思ってしまう一面も。
3人が踊るフラカヒコ。
ハワイ伝統のコマ回しをしている様子。
手前はコナネという将棋のようなゲーム板。
Day 1.02.
内臓に響く「ハカ」、見入る「ポイダンス」
マオリのタトゥーが入った男性による、大迫力のハカ。
次は、アオテアロア村。
これを聞いて、なんのことだか分かる人は多くはないでしょう。マオリ語でニュージーランドのことを表しています。
彼らの文化で1番有名なのは、やっぱり「ハカ」。ショーでも披露してくれます。
足を踏み込むときの重低音や雄叫びが内臓に響き、踊りが終わったあとには身体で感じていたエネルギーが一気に放出され、ブルッと震えてしまいます。
「ポイダンス」の存在も忘れてはいけません。
ひもの先にボールが付いているというシンプルな道具「ポイボール」を使い、ヌンチャクのようにクルクルと回します。ボールの動きは思わず見入ってしまうほど。演者たちの動きが完璧にシンクロしているのも、そうさせる理由の1つでしょう。
歌いながらポイボールを回す様子。
簡単そうに見えて、実は難しいんです。
ティティトレアという棒を使ったゲーム。
Day 1.03.
悪ふざけがすぎるサモアのショー
ファイヤーナイフダンスの実演。
右側の青いパンツの人がMC。
アオテアロア村の真剣な雰囲気とは異なる、サモア村。
ハイビスカスの木を使った火起こし体験ができるのですが、何度トライしてもかなりハードで、頑張っても煙が立つくらい……。でも、サモア村にいる村人がやったら、あっという間。ほんの15秒くらいです。しかも、「めんどくさいからイヤだよ〜」とジョークを言いながら、ですよ。
ユーモラスさはショーでも発揮されます。キャップさんという「PCC」の人気者が、観客をイジりつつ、サモアの歴史を教えてくれます。でも、彼は笑いを取るのに必死で、肝心の解説をかなり後回しにしてしまいがちです。ま、おちゃらけた雰囲気はご愛嬌ということで。
ショーが終わったあとにはとても笑ったなと思うのですが、内容に関してははっきりと覚えていません(笑)。
ハイビスカスの木をこする様子。
火種をココナッツに。
ジョークを言いながらも、あっという間に火がつきます。
素早い木登りも披露。
じつは、日本語で
楽しめるんです!
ツアー前に打ち合わせをしているガイド3人。
ハワイ村とアオテアロア村、サモア村について、「ポリネシア・カルチャー・センター(PCC)」で得たウンチクを織り交ぜながら紹介しました。
こうした情報は現地で働く日本人ガイドさんから教えてもらったものがほとんど。ディナーと夜のダンスショーだけのパッケージ以外、どのランクのチケットにもツアーは含まれているので、高いお金を追加で払う必要なんてありません。リスニングがイヤなら、英語でおこなわれているショーの通訳もしてくれますよ。
今のところ、「PCC」では10人程度の日本人ガイドが働いていて、そのうちの3人にツアーの内容を聞くことができました。ということで、残りの3つの村の紹介は彼らの言葉でどうぞ!
Day 2.01.
アフロを大切にするフィジーの美意識
1日限りのタトゥー体験。
「フィジー村に入ると、村人が『ブラ ビナカ』って声をかけてくれます。これはフィジーの挨拶で、『あなたがいつまでも健康で元気に過ごせますように』という意味があります。素敵ですよね。
彼らはアフロが美しいと感じていて、カタチを崩さないための専用の枕もあります。だけど、木でできているのでかなり痛そうで、首とか痛めなかったのかな〜って思ってしまいます。
ショーでは『デルア』という楽器を使ったレッスンがあって、これはシンプルに床を叩いて音を出します。カンタンですが、みんなでやると迫力がありますよ」
Day 2.02.
とにかく腰を振るタヒチアンダンス
結婚式で愛を誓うところ。
「タヒチ村で見て欲しいのは、とにかく腰を振る『タヒチアンダンス』です。これをやるのは女性だけですが、男性はめっちゃ又を開いたり閉めたりして踊ります。少し真似してもらえれば分かると思うんですけど、これ、かなり難しいです。
あとはタヒチの伝統的な結婚式も体験することができます。ここでもダンスは披露されるので、見逃さないでくださいね。
あと、彼らは誓いの言葉で『No』と答えるんです。これは『離れたり別れたりしますか?』と聞かれるからなんです。こういう文化の違いもあります」
タヒチアンダンスが始まるところ。
近くではココナッツを使ったパンが食べられます。
Day 2.03.
観客を巻き込んで盛り上げる「トンガ村」
ナファという太鼓について説明している様子。
「実はトンガ村には、トンガの女王の別荘があるんです。彼女がこの場所に来た時に、とっても気に入ったらしく、その場で別荘を建てることを決めたそうです。
ここの屋敷は壁が『タパ』という布で装飾されています。木の皮をひたすら叩いて、うす〜く伸ばして、触り心地はタイベックに似ていますね。
ショーでは3人の観客を前に立たせて、伝統的な太鼓『ナファ』を演奏させるようになっています。日本人の感覚では選ばれたくないってなると思うんですけど、欧米の方は自ら手をあげることが多いですね」
会場にいた日本人の方がステージの上に。
他のお客さんも笑顔で見守ります。
6つの村を紹介したけど
まだ半分しか伝えられてない
カヌーショーが始まるところ。
ダンスをしながら、歴史を教えてくれます。
1つひとつの村を紹介しましたが、個人的な感覚としては「ポリネシア・カルチャー・センター(PCC)」の魅力の50%くらいしか伝えられていません。
あとの30%は、ざっくりと説明するとこんな感じ。
2018年より内容がアップデートした、毎日14:30から開催されている「カヌーショー」。ポリネシアの島々は海によってバラバラになったのではなく海のおかげで交流が生まれてひとつになれた、というメッセージがあります。
「ルアウ」というディナーショーでは、地熱を利用しつつ薪に火をつけて焼き、バナナの葉っぱで蒸した豚が提供されます。火山のエネルギーをうまく使った先人の知恵についての解説を聞きながら、実際に地中から豚を取り出すところも見れます。
そして、残りの20%は世界最大のダンスショーです。
地中から豚を取り出しているところ。
フラダンスも披露。
豪華に盛られたフルーツと野菜。
ルアウの食事はバイキング形式。
元世界チャンピオンに聞く
ファイヤーナイフダンスの意外な歴史
ファイヤーナイフダンス元世界チャンピオンのDavidさん。
「PCC」の名物である世界最大のダンスショー「HĀ:ブレス・オブ・ライフ」。なかでも、ファイヤーナイフダンスの迫力は、他のハワイで見れるものとはかなり異なります。
ショーでファイヤーナイフダンスを披露するDavidさんに、開演前に少しお時間をいただき、その歴史を語ってもらいました。
──ファイヤーナイフダンスの歴史について教えてください。
基本的には戦争と関係があるダンスなんだ。どうやって防御をするのか、どうやって攻撃をするのかを知るためのもの。あとは戦争が終わったときに功績を示すものなんだ。ナイフを手にとって、パフォームをする。どうやって戦争に勝ったのかを示すためにね。これがファイヤーナイフダンスの始まりだね。
──なるほど。ハカのようなルーツがあるんですね。
そうさ。あまり知られていないだろうね。実は今でもその要素を感じることができて、ファイヤーナイフダンスで使うスティックは、刃の部分がある。
──火だけでも危ないのに、かなりデンジャラス……。
もちろん切れはしないんだけど、でも、フックが付いているよ。そして、サモアの人々がスピニングを始めた。このとき、伝統でしかなかったものが、レベルが上がって、いや進化して、ひとつのパフォーマンスになった。
──それが代々と受け継がれているんですね。
そうさ。僕の家族の伝統でもあるね。おじいちゃんもお父さんも親戚もみんなやっていたから、僕も6歳くらいからやり始めるようになった。あ、ちなみに、火を足したのは僕のおじいちゃん。
──え、そうなんですか?
彼は、中国に行った時に、たまたまジャグラーが火のついているモノを投げているのを見て、真似できそうだなと思ったと言っていたよ。
──意外なところにインスパイアされているんですね……。
きっとスピニングだけでは足りないから、少し危険な要素を足したかったんだろうね。そして、今ではエンターテイメントになった。
片手でスティックを回すDavidさん。
笑顔を見せずに、ファイヤーナイフダンス。
──始まりは戦争が関係していたのに、今ではエンターテイメントになってしまったことに対する危機感はありますか?
僕の個人的な意見では、まったくないよ。ファイヤーナイフダンスのルーツを守るために、僕はテクニックを競う大会を開いた。その大会では、どんなに回すのが上手くても、表情が笑顔だったら、ポイントはかなり低くなるんだ。なぜなら、戦争のエネルギーを詰め込まなければいけないから。だから、笑顔じゃなくて、真剣で脅すくらいの表情じゃないといけない。
ナイフの鋭さと火の危険性を乗り越えられれば、より良い戦士になるということでもあるよね。
──なるほど。
でも、今の子どもたちは状況がちょっと違う。ポリネシアカルチャーを知らないことが多いし、欧米文化にも影響されている。ヒップホップとかね。でも、これは間違いでもなくて、否定する気はまったくないよ。何も間違いじゃない。
その上で、このファイヤーナイフダンスに魅力を感じてもらえれば、嬉しいよね。そしたら、「これはどっからきたの?」とかの興味を持ち始めるし、僕たちも伝統を伝えることができる。だから、「PCC」が大好きなんだ。子どもたちにも、他の地域の人たちにも、僕たちの文化を伝えられるからね。
──歴史だけを聞くつもりでしたが、未来にも興味が湧いてきました。ちょっと教えていただいてもいいですか?
この前やったことを話すね。PCCと協力して、ファイヤーナイフダンスにヒップホップ要素を取り入れてみたんだ。とりあえずストリートでやってみたら、600人以上も集まった。あとはニューイヤーズ・イブも同じようなことをした。僕はエンターテイメントが好きで、多くの人を楽しませることができる。これが1つの進化の手段だと思うよ。
──若い世代の興味を引くためですね。
そう。ストリートファイトもやってみたよ。伝統とトレンドの戦いというテーマでね。僕は大会で今のファイヤーナイフダンスを守りつつも、新たなスタイルを生み出したい。そうすれば、僕たちの文化を後の世代に引き継ぐことができる。
Davidさんの娘とその友だち。
彼女たちもレベルが高いです。
──お子さんなどにはうまく伝わっていると思うのですが、他のエリアや国の方にはどうやって広めるのでしょうか?
パフォーミングを通して、僕たちの思っていることや考えていることを伝える。「なんでそんなことをやっているの?」などを思ってもらえたらいいよね。伝統を守るために、やらなければいけないんだ。
──そのひとつがこれから始まるイブニングショー「HĀ:ブレス・オブ・ライフ」ですね。
そうさ。
──どのようなところに注目するべきでしょうか?
今まで話した歴史や未来、僕たちが伝えたいことを知った上で、見て欲しい。ただそれだけさ。こちらから押し付けてしまうと、興味がまったくなくなってしまうだろうからね。
綺麗な弧を描いています。
時差ボケが吹っ飛ぶ
ダンスショー
大人数によるアオテアロアのハカ。
繰り返しになるけど、「HĀ:ブレス・オブ・ライフ」は、「ポリネシア・カルチャー・センター(PCC)」が手がける、100人以上による世界最大のダンスショー。ファイヤーナイフダンスだけでなく、6つの村で学んだ歴史がふんだんに詰め込まれています。このダンスショーの旨みを最大限に味わうというスタンスで、午前中に村を歩き回ってもいいかもしれません。
父親が死んで先祖が集まってきたシーン。
雄叫びをあげ、力強いダンスを見せる主人公。
ショーの終盤のファイヤーナイフダンス。
真剣な顔つきで1つひとつの行動に熱をこめた「フラカヒコ」。手が震えるほどアドレナリンが出た状態で相手を威嚇する「ハカ」。白いボールの動きがシンクロする「ポイダンス」。
そして、フィナーレのファイヤーナイフダンス。
あっという間に時間は過ぎていきました。
飛び抜けた技ではなく、僕たちも真似できるくらいの動きだから、演者と観客との距離がものすごく近いんです。膨大なエネルギーを感じられる理由は、ここにあります。
ショーが始まる前は時差ボケで眠かったにもかかわらず、終わったあとは興奮しすぎて、撮影クルーのみんなで1時間くらい盛り上がってしまいました。
結論、「PCC」の評価が鬼ほど高いのにも納得だし、良い意味で裏切られるのは本当でした。