東京オリンピックを不安がらないで!――ベンのトピックス

多くの人は2020年東京オリンピックを楽しみにしていると思います。開会式が楽しみ、観戦したい競技がある、経済的効果への期待などなど。僕も日常でよくそういう話を日本人の友達としています。
 
けれど、不安に思っている人も少なくありません。交通機関がどうなるのか(田園都市線がこれ以上混雑するなら僕も不安です)、大勢の外国人とコミュニケーションがとれるのか、莫大な税金を投入したスタジアムの採算も気になるところでしょう。
 
じつは、僕はこれらの意見をすべて8年前に聞いたことがあります。ロンドン出身ですからね。
 
だからここでは、自国でのオリンピック開催に悲観的な人たちの不安を少しでも和らげるような話を書こうと思います。

ロンドンの地下鉄より東京のほうが正確です

©iStock.com/MarioGuti

ロンドンオリンピック開催前、僕たちイギリス人は今の東京都民よりも悲観的でした。ロンドナーは常に最悪に備える性質を持っています。当時、オリンピックが悪夢になるだろうと予想する人のなんと多かったことか!僕もその一人でした(笑)。

東京と同様にロンドンも交通機関に問題を抱えています。世界でもっとも古いロンドン地下鉄(通称「チューブ」)は、頻繁に修繕工事が必要で、混雑だけでなく遅延や運休もしょっちゅうです。僕も大学の試験がある時などは、1時間も早く家を出たり、タクシーを予約したりしたものでした。家から大学は約10km、とても高くつきました。まあ、混雑に関しては東京に譲りますが、それでも都内の地下鉄やその他の交通網は、ロンドンよりも正確です。

リーダーがボリス・ジョンソンではなく、小池百合子です

©Barcroft Media / Barcroft Media via Getty Images

当時のロンドン市長はボリス・ジョンソンでした。

彼はなんと言うか……間抜けでした。北京オリンピックの閉会式にヘンテコな服装であらわれたり、無神経な発言を公の場でしてしまったり。僕は彼がオリンピックの準備になんらかのかたちで関わると考えただけで、率直に言って心配でした。

小池百合子都知事を支持しない人もいるとは思います。でも、個人的な見解になりますが、彼女は少なくともボリス・ジョンソン元ロンドン市長のように間抜けではありません。そこまで人を不安にさせることはないでしょう。

東京は、既存の施設や場所をいかしています

©Jamie Squire/Getty Images

ロンドンオリンピックは、主にイーストロンドンで開催されることになっていました。残念ながら治安があまりよくない、ジョンソン元市長がほとんど放置していた地域です。

メインとなったクイーン・エリザベス・オリンピック・パークの建設予定地は、もともと工場用地で土壌汚染などの心配もありました。スタジアムの建設予定地はほとんど使われていない倉庫街、その地域を通っている運河も汚れていました。そんなところにスタジアムやプール、競輪場を建設しても、オリンピックの後は使われないんじゃないかという不安がロンドン市民の間にはあったのです。将来、財政を圧迫することになるのじゃないかと考えていたのです。

一方、東京オリンピックの新国立競技場は、1964年以来長い歴史があり、各種イベントに使われてきた場所です。日本の人々が施設の使い道をさまざまに見つけることは想像に難くありません。そのほかの競技場に関しても、基本的には既存の施設をいかしたかたちで考えられています。

クイーン・エリザベス・オリンピック・パークの現在は……じつはかなりいい感じです

©2019 BEN

現在、北京国家体育場がほとんど使われていないこと、あるいは、エスタジオ・デ・マラカナンがオリンピック後すぐに改修が必要だったことを耳にしたことがある人もいると思います。

では、クイーン・エリザベス・オリンピック・パークは現在どうなっているでしょう?

じつはかなりいい感じなのです。

スタジアムはウェストハム・ユナイテッドFCのホームグラウンドとなっています。スポーツイベントや大きなコンサート(フー・ファイターズやビヨンンセなど)、ラグビーの試合にも使用され、この2019年にはニューヨーク・ヤンキースとボストン・レッドソックスがここで試合を行う予定もあります。
 
この地域はかつてロンドンでもっとも緑が少ない地域として知られていましたが、現在ではオリンピック・パーク自体が巨大な緑のスペースとなっています。ジョギング用の素敵なコースもあります。近い将来には、このパークを利用したフェスの開催も予定されているし、オリンピック前とはいい意味でイメージの違う場所へと生まれ変わっています。

背景には金融危機がありました

ちょっと時間を遡ってみましょう。

イギリスでは、2005年頃から巨額の公的資金がクイーン・エリザベス・オリンピック・パークの建設に費やされました。

しかし、2008年に起きた世界的な金融危機(覚えてますよね?)のために、プロジェクトの目標は壮大な建築物ではなく、地域を活性化させ将来的に継続できるようなものへと変わっていったのです。つまり、持続可能性が重視されはじめたのです。

目標はパーク予定地であるストラットフォード地域を新たな中心地にすること。結果的にパークだけでなく、周辺に大きなショッピングモールを建設するなど、オリンピック後のことを考えた計画になりました。

このようにして、ロンドンオリンピックは無事開催され、国内外からたくさん観客と選手たち、メディアがやってきました。世界記録やオリンピック記録が更新され、素晴らしい開会式と閉会式も記憶に新しいところです。

僕は東京オリンピックが楽しみです!

僕は、そして多くの日本人は1964年の東京オリンピックが日本の近代史におけるもっとも重要な瞬間だったと信じています。

しかし、現代においてはオリンピック自体と同様に、その後に向けた姿勢こそが大事なのだと思います。

英語には「ホワイト・エレファント」という表現があります。それは、持ち主が処分することもできないまま維持するのに莫大な費用がかかり、見栄えは素晴らしいのに実用価値はほとんどないものを指します。

残念ながら、近年のいくつかのオリンピックを経てホワイト・エレファントを抱えてしまった国もあります。しかし、少なくともロンドンオリンピックにおけるクイーン・エリザベス・オリンピック・パークは大きな成功をおさめているのです。

悲観的になる必要はありません。東京オリンピックも正しいやり方で実行されれば、日本にとって誇りとなるはずです。

僕は東京で開催される世界的スポーツイベントを楽しみにしているし、開催国のはみなさんにもそうあって欲しいと思います。

Top image: © Jamie Squire/Getty Images

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