あるとないでは大違い。台湾風卵焼きのポリポリ食感@錦糸町

あるとないでは大違い。
台湾の卵焼きのポリポリ食感@錦糸町

小籠包、牛肉麺、魯肉飯、胡椒餅、豆花、かき氷。どれも日本人に人気の台湾グルメ。外食文化さかんな本場台湾なら、専門店での食べ歩きも悪くない。では、東京でとなるとどうか?

単品勝負ではなくおかずとして、つまみとして楽しむ店に狙いを絞る。錦糸町「台湾厨房 劉の店」だ。華美ではないが緻密でおおらかな大衆料理。台湾庶民の懐へ飛び込め!

素朴な卵焼きの中で主張する
塩漬けの切り干し大根

©2019 HIROMU INOUE

「台湾風卵焼き」630円(税込)

国ごとに“らしさ”がよく出る料理といえば、卵料理をおいて他にない。台湾ならば「菜脯蛋(ツァイポータン)」だ。見ての通りなんのことはない卵焼き。質素そのもの。ところが、これが唸るほどにウマい。

特徴は中身にあり。みじんに切った長ネギと菜脯(日本で言うところの切り干し大根を塩漬けにしたもの)。台湾風卵焼きの肝となる食材だ。ザーサイに近いが食感はもっとポリポリ小気味良い。パンチの効いた塩辛さが卵焼きに輪郭をつくる。

さらには油。鼻の奥をくすぐる香ばしいネギのにおいが油にうつり、まんべんなく卵に付着し半熟の内側からもほとばしってくる。

卵、ネギ、菜脯、そして油。たったこれだけの簡素な具材なのに、ビールジョッキが軽く空き、ごはんが何膳でもいけてしまう。何でもないように見えてじつに奥が深い。

おおらかで緻密な
台湾ソウルフード

©2019 HIROMU INOUE

「三杯鶏」1580円(税込)

こちらも定番の大衆料理。醤油、酒、ごま油、3つの調味料に劉の店では水飴を加えて煮詰めた「三杯鶏」。骨つきの鶏肉にたっぷりのニンニク、しょうが、ネギが甘辛い濃厚なタレと絡みあう。

味にアクセントを生み出すのがバジルの葉。飾りものじゃない。甘辛に終始せず、シャープなアウトラインが浮かび上がる。味の染み込んだ照り焼きに近い感覚は、お酒よりもごはんに手が伸びる。

©2019 HIROMU INOUE

「イカ団子」840円(税込)

ゴルフボールほどのイカ団子(花枝丸)は揚げたてが到着したら即、口に運ぶのが正解。噛めば弾き返されるプリプリの弾力を楽しむためだ。

やんわりと塩コショウを振ってくれてはいるが、これすら不要に思えるほど、イカの風味が鼻腔を駆け抜けていく。これまた何でもない料理のようで、つまみとしては最高の一品。

本格台湾料理に
「エビチリ」「麻婆豆腐」のナゼ?

©2019 HIROMU INOUE

ところで、劉の店では中国本土から渡ってきた料理も登場する。

「もう、これはしょうがない。日本でやっている以上、餃子だってエビチリだってつくるよ。お客さんも喜んでくれるしね」。日本に渡って47年。オーナーシェフ劉 俊茂氏は、台湾料理へのこだわりを貫くよりも日本人から愛される味をメニューに同化させることを選んだ。

中国渡来の料理が台湾で独自の進化を遂げた例は枚挙にいとまがない。となれば、この店で味わう青椒肉絲やエビチリもよく知るそれとは限らない。日本の上品な中華料理は油が控えめだけど、どんな料理にもバランスよく油を使うのが台湾料理。そこに意識を向けて味わってみてはいかがだろう。

出自よりも、寛容でしなやかな劉さんの料理に魅了される人は多い。そのお目当てが卵焼きであり、三杯鶏であり、魯肉飯、線麺、さらには看板メニューとなった鉄道駅弁だという。結局のところ、台湾庶民の味に帰着するということなんだろう。

©2019 HIROMU INOUE

「台湾厨房 劉の店」

TEL:03-5600-2118
営業時間:11:30〜15:00(L.O.14:30)、17:00〜23:00(LO.22:30) 
定休日:年中無休

Top image: © 2019 HIROMU INOUE
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