台湾でもそうそう出会えない「台湾家庭の鍋」@駒込

台湾でもそうそう出会えない「台湾家庭の鍋」@駒込

漢方をベースにした薬膳鍋の専門店は多いが、鍋としての一体感よりも漢方が染み出たスープ優先の印象が否めない。体のため&ヘルシーには納得も、まずは料理としておいしく味わいたい。

そこで駒込「台湾キッチン かのか」。滋養にばかり気を取られず、食べることに没頭する。台湾家庭に根付いた鍋がたまらない。

食後に元気が湧いてくる

©2019 HIROMU INOUE

「薬膳鍋」4104円(税込)は2人前からオーダー可能。

かのか特製「薬膳鍋」は、鶏ガラベースの出汁にニンニク、しょうが、それと漢方が4種類。滋養強壮、内臓の働きを整えたり、体をあたためてくれる生薬だ。家庭で薬膳というのがなんとも中華文化圏らしいが、根底にあるのは医食同源。

漢方独特の香りや苦さがないわけじゃない。それが主張しすぎていないのがいい。豚肉と豊富な魚介類、台湾つみれ、きのこなどの野菜から旨みが出汁に溶け出しスープと混然一体となる。

具材をよそいスープをすする。じつに味わい深い。最後まで飲み干せば、じんわりと胃袋が温まり元気が湧いてくる。薬膳の考え方はたしかに通底している。でも、台湾家庭の薬膳鍋はそれを忘れて頬張りたくなる。

ちなみに具材は一年中変わらない定番のもの。いつ訪れても同じ味で迎えてくれる(4月以降は要予約)。

ビールと白メシに合う
こちらも台湾の味

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手前は「しじみのしょうゆ漬け」864円(税込)。奥は「ピータン豆腐」756円(税込)。

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「トマ玉」648円(税込)。

当然ながら台湾の味は鍋だけにあらず。

ニンニクの効いた「しじみのしょうゆ漬け」でまずは一杯。台湾の「ピータン豆腐」は、豚肉そぼろとぐちゃぐちゃに混ぜて食す。

トマトと玉子の炒めもの「トマ玉」も家庭を代表する一品だ。材料はシンプルなのに、どうやったってマネのできないフワとトロ。程よく塩と油をまとい、甘さが際立っている。“台湾の母”のトマ玉は、シメでご飯とともにかき込みたい。

「家庭的な味」ではなく
「家庭の味」で勝負

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ところで、「家庭的な味」と「家庭の味」は似て非なるもの。家庭料理をウリにした飲食店を訪れるときは、そこの見極めが重要となる。かのかは後者。外食文化盛んな台湾でもそうは出会えない、本格的な台湾の家庭料理が味わえる。

だが、厨房に立つ台湾の母は、数年前まで迷いがあったと本音をもらす。

「青椒肉絲が食べたい、麻婆豆腐が食べたい。お客さんの要望に応えたいけど、それでは台湾じゃなくなってしまう」。

中国出自のメニューを「家庭的な味」として提供することはできる。でもそれは単に“らしく”しているだけ。駒込への移転を機にメニューを一新。本場台湾の味に絞ったことで、台湾フリークの常連客や、家庭の味に懐かしさを求める台湾人に支持される人気店に。

中国人客も多く訪れる。食事のあと、ついでにお弁当も買って帰るそうだ。厨房に立つ台湾の母の背中に、それぞれの“かぁさん”をダブらせているんだろう。

©2019 HIROMU INOUE
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「台湾キッチン かのか」

TEL:03-5809-0513
営業時間:11:30~14:00(L.O.13:30) 、17:00~22:00(L.O.21:30)
定休日:日曜、祝日、第1第3月曜日
HP:http://taiwankitchenkanoka.blog.fc2.com/

Top image: © 2019 HIROMU INOUE

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