名物料理は、専門店でも手を出しづらいシシケバブ@練馬

名物料理は、専門店でも手を出しづらいシシケバブ@練馬

ケバブと聞いてドネル(回転式)のファストフードをイメージする人は多い。けれど、ガツンと串刺しの塊肉は専門店で味わってこそ。シシケバブはトルコ料理の醍醐味だ。

肉汁したたる赤肉や香ばしく焼いた若鶏ならば、どんな専門店でも味わえる。紹介したいのは練馬「ドルジャマフセン」。ここでしか味わえない驚きのシシがある。

出会えるかは運次第
子ひつじのハツ

©2019 HIROMU INOUE

ラムハツのチョプシシ 1800円(税込)

 

串に刺さるのは北海道産の子羊の心臓(ハツ)。レバーですら珍しいところ、ハツをケバブで提供する。奇をてらってのものじゃない。れっきとしたトルコ庶民の味。炉端焼き店(オジャクバシュ)の定番ケバブだ。

鮮度が勝負の代物だけに、専門店でも手を出しづらいラムハツが名物料理に。この事実だけで、もう何をオーダーしても間違いなし。では?

ただし、ありつけるかどうかは運次第。なにせ手に入ったときのみのメニューだから。

臭みのなさが鮮度の証。されど、香辛料まみれといった印象は皆無。上品な焼き鳥屋の塩加減のようにデリカシーある味がする。

このまま串ごとかぶりつきたいところだけど、トルコ式にいくならこう。

ラムハツの下に敷かれたエキメキ(トルコの薄いパン)を手のひらに取り、熱々のハツを握るようにして串から抜く。ハツから出た旨みエキスは残らずエキメキがキャッチしてくれる。最後に皿をきれいに拭き取るよりも効率がいい。玉ねぎのサラダも一緒にはさむ。適度な辛味が絶妙。ワインが進む進む。

ベジタリアンも連れて行きたい!

©2019 HIROMU INOUE

一人前からも楽しめる「前菜4種のミニメゼ」1250円(税込)

©2019 HIROMU INOUE

揚げナスに煮込み野菜を詰めた冷製「イマムバユルドゥ」850円(税込)

ちなみに、豊富な野菜料理も外せない。小皿のメゼ(前菜)をアペタイザーにしたり、豆を使ったサラダや冷製をつまみにワインを飲むのもいい。本来はこのあとケバブが正統派スタイルだけど、ベジタリアンでもトルコ料理は十二分に楽しめる。

圧巻は、長ネギをオリーブオイルで煮込んだ「プラサ」。すき焼きでくたくたになったネギに通づる食感が心地いい。もちろん味付けは別物だけど、ネギの甘さが口内に炸裂する。

和食に慣れ親しんだ舌が、トルコ料理に通底する“素材の旨み”をなんなく受け入れる。だからだろう、初体験でも懐かしさを覚えてしまう。

仄暗い照明に理由あり

©2019 HIROMU INOUE
©2019 HIROMU INOUE

ところで、この店の照明は驚くほど暗い。

モザイクランプから漏れる生めいた水彩色が壁を照らすほかは、目立った明かりがほとんどない。ついでに壁にツタが絡まっていたり、スチームパンクな配管がテーブルから伸びていたりする。

言うまでもなく、すべてが演出。
オスマン帝国時代、禁酒政策に反対した庶民たちは使われなくなった酒蔵の地下でこっそり酒を楽しんだ。「マフセン」とは地下酒場やワインセラーの意。穴ぐらのような仄暗いドルジャマフセンは、500年以上前のトルコの地下に通じている。

©©2019 HIROMU INOUE

「ドルジャマフセン」

TEL:03-3992-2030
営業時間:17:00〜L.O.23:30(日曜日のみ21:30)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日休)
HP:https://doluca-mahsen.com/

Top image: © 2019 HIROMU INOUE

おすすめ記事

他の記事を見る
ピザの原型「ラフマージュン」で飲むワイン。トルコ料理専門店にて。
れっきとした世界三大料理のひとつトルコ料理です。
最初にビルの屋上でマイクロファームを始めたのは、ニューヨークだっただろうか。2010年代に入って、都心における農業が注目された。そして今、世界的に注目を集...
前菜からデザートまでウニづくし! 六本木にあるバルスタイルのウニ料理専門店 UNIHOLIC〒106-0032 東京都港区六本木7丁目14-5 大和ビル1...
人によって夏バテは意外に長く続くもの。連日の暑さで疲れた体に、スタミナ満点の食事もいいけれど、胃袋だってお疲れ気味。ならばと紹介したいのが、ヨーグルトを使...
僕のなかのワインのイメージと言えばやっぱりまだ、高級で、ハレの日のもの。でも、今回訪れた「東京ワイナリー」は真逆。東京ワイナリーがあるのは、近隣にコインパ...
缶詰の中でも特に種類の豊富な「サバ缶」。加工技術が高く、生臭さもなく美味しさを逃さず閉じ込めてある分、どんな料理にも応用が利きます。サバを挟んで食べるトル...
フレンチ、中華、そしてトルコ、これが俗に言うところの世界三大料理です。その中でトルコ料理だけ、日本人の印象が薄いのはなぜでしょう。ドネルケバブのイメージは...
阿佐ヶ谷の裏路地で30年、日本人の味覚に合うタイ料理を厳選した専門店です。
もしも2〜3年前にペルー料理の名前やうまいペルビアン・レストランの名前を挙げろと言われたら、きっと僕は「セビチェ……」としか言えなかったと思います。しかし...
あの子が「料理上手」なワケは、このポイントを抑えているから。知ってるのと知らないのとでは、雲泥の差。今日から使える料理知識をまとめてみました。
トルコ語で「はらわたを裂く」という意味を持つ料理があります。それがカルヌヤルク。何だかおどろおどろしい名前ですが、裂くのはナスのお腹。日本でおなじみ「ピー...
東京・練馬区にある「豊島園」に向かって歩いていると、おいしそうな昔ながらのかき氷屋さんを見つけた。店内に入ると「カレーとかき氷のセット」が目に入った。辛み...
高さは369mになる予定で、東京タワーより少し高いくらいです。見た目はとっても未来的。
アフリカ料理を並べたInstagramのアカウント「@kitchensofafrica」。彩りが豊かで、スクロールをしつづけていても飽きない!楽しみながら...
「世界一おいしい料理」そんな最大級の賞賛で知られるジョージア料理。ただ、このシュクメルリに限っては、ちょっと勝手が違うかもしれません。
料理はもちろん、空間、客層、スタッフ、雰囲気と首尾一貫オールThai!!で攻めまくりの屋台メシ。
「地元・浜松の人にも知ってもらいたい」。オーナーの山﨑浩さんがそう語るのは、浜松の春野町を中心に獲れる鹿や猪のお肉を使った「ジビエ料理」のこと。わざわざ足...
西早稲田の人気スリランカ料理店「アプサラ」の名物といえば、スリランカカレーのバナナリーフ包み。バナナの葉を開けば、スリランカがほとばしる!
「このピッツァのために、石神井に住める」。そう本気で思った。「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」は、東京都・練馬区にある名店だ。EUの条約で決まっ...