あなたの知らない「日本のクリケット」

スポーツ観戦をひとつの編集テーマとしている自分にとって、サッカー、野球はすでに日常だ。気になるのは“NEXT”。東京五輪を機にエクストリームスポーツは観戦スポーツの新ジャンルになりそうだし、ラグビーに至ってはエンタメとしての可能性をすでに世に示している。

そんな中で、目に留まったニュースがある。

「クリケットU19日本代表 ワールドカップ初出場決定」

©2019 NEW STANDARD

6月、栃木県の「佐野市国際クリケット場」で開催されたU-19ワールドカップの東アジア太平洋予選。日本代表は見事頂点に立ち、来年に南アフリカで開催される本大会への出場権を獲得した。ワールドカップの出場はすべての世代において日本初の快挙だ。

歴史の扉をこじ開けたチームのエースが、高校一年生の高橋和雅。

史上最年少となる13歳にしてフル代表候補に選出された経歴を持つホープで、昨年の東アジアカップにおける15歳でのフル代表デビューも史上最年少記録となった。

今の時代にサッカーでも野球でもなく、なぜクリケットなのか?それは佐野に生まれたからこその運命だった——。

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佐野から世界へ、世界からSANOへ

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高橋は言った。

「佐野に生まれていなかったらクリケットのことなんて知らなかったかもしれない。いい環境、いい人に出会えて本当によかった」

じつは今、佐野は「日本クリケットの聖地」になりつつある。

日本クリケット協会が本部を構え、昨年8月には国内で唯一国際規格を満たした「佐野市国際クリケット場」が開場。市内の小学校では体育にクリケットが導入されており、市内大会も頻繁に開催されている。

市はクリケットを「佐野ブランド」として認証し、「佐野市スポーツ立市推進基本計画」においても、地域の特徴的なスポーツとしてクリケットを位置づけるほどの力の入れようだ。

スローガンは「佐野から世界へ、世界からSANOへ」。

U19ワールドカップの予選を戦ったメンバーには、佐野市在住の高校生3人が名を連ねている。また、佐野市周辺に住むインドやパキスタン、バングラデシュなど、クリケット強豪国と呼ばれる国の人たちが佐野を訪れ、クリケットを楽しんでいる。

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高橋のように幼い頃からクリケットに打ち込んできたプレーヤーがいる一方で、異色の経歴でクリケットにたどり着いた者もいる。

山本武白志。2016年から3シーズン、横浜DeNAベイスターズに所属していた元プロ野球選手だ。

二十歳で戦力外通告を受け野球界を去り、縁もゆかりもない佐野に移住。半年間練習を重ね、現在はオーストラリアでビッグドリームをつかむべく奮闘を続けている。

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山本は言った。

「有名な選手がひとり出るだけで、日本でのクリケットを取り巻く状況は大きく変わる。19歳以下の選手たちがワールドカップで勝つことで盛り上がる可能性も全然あると思います。自分も含めて、これからやっていく人たち次第です」

確かにそうだ。

今や大人気のサッカー日本代表だって、1998年のワールドカップ初出場を機に、右肩上がりの成長曲線をたどってきた。

ワールドカップに6大会連続で出場し、世界の強豪国と渡り合う。ついには、レアル・マドリードやFCバルセロナ所属の選手まで登場する。当時、このような状況を一体誰が予想できただろうか?わずか20年ほどの間に起こった出来事だ。

クリケットはサッカーに次いで世界第2位の競技人口を誇るメジャースポーツ。現時点では日本ではマイナースポーツと言わざるを得ないが、言い換えればその可能性は無限大ということになる。

来年のU-19ワールドカップを機に、日本のクリケットが飛躍を遂げ、いつの日かクリケットブームが巻き起こる——。

そうした未来は誰にも否定できない。

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