「僕たちは本当に市場分析を信用していない」FREITAG・CEOにインタビュー

「FREITAG」は1993年に創業してから、25年以上も独自の道を歩み続けてきた。

ゴミとして捨てられるはずの「トラックの幌」を世界にひとつだけの「バッグ」へと変える──。

今でこそサステイナビリティは重要視されているが、他のブランドが大量生産を良しとするなかで、「FREITAG」はアップサイクルの一点突破。僕たちが生きる未来について考えることを決して忘れなかった。

先日、そんなアップサイクルのパイオニアであるブランドのCEO、オリバー・ブルンシュウィラーが来日。トレンドに左右されない姿勢を保つ秘訣に迫ろうと意気込んでいたが……オリバーはとってもユルい雰囲気で僕を迎え入れ、全ての質問に優しく丁寧に思いを込めて答えてくれた。

「素直に“We fucked up”と言える、
それが僕たちのユニークネス」

 
©2019 NEW STANDARD

──今日はよろしくお願いします。

 

ごめんね。僕の日本語が上手くないから英語のインタビューになっちゃって。最近、少しずつ勉強しているんだけど、やっぱり難しいね、日本語は。

さて、FREITAGについて、何を聞きたいんだい?

 

──FREITAGの本(『フライターグ 物語をつむぐバッグ』)を読んで、(創業者のひとりである)マーカス(・フライターグ)が「市場分析を信用しない」と言っていたのがかなり気になった。

 

あ〜、それね。かなり変わっているよね(笑)。

まず、前提として話しておくと、その本が出版された時はFREITAGの規模は今の半分くらいだった。そこから6年から7年経っているから、少し変わっている部分もあるけど、僕たちは本当に市場分析を信用していない。

例えば、道端でバッグを使ってもらってフィードバックを受けることや消費者に何が欲しいのかを聞くこと。これはしかるべき人にやってもらう必要があるんだよね。経験値のある人が言うこととない人が言うことの重みは全く違う。

 

──それは一般的なビジネス方法に反する気もする。

 

そんなのは僕たちにとって、大したことじゃないよ。誰かに何かを聞いてプロダクトを作らないし、自分たちの作りたいプロダクトを作ると決めている。FREITAGが正しいと考える方向に向いていることが一番大切。

たぶん、大手ファッションブランドは多くの人に話を聞いて、今買われる洋服を作っている。リスクだらけだとしても、僕たちは未来を大切にするし、先を考えながら何を作るのかを決めているんだ。

 

──失敗もたくさん経験したのでは?

 

数え切れないくらいたくさんあるよ。本当に(笑)。

でも、失敗はいいこと。僕たちは失敗することをむしろ歓迎している。

何も失敗したことがない人やブランドは学べる機会があるのかな? 僕はそう思わない。一時的には傷つくかもしれないし、恥ずかしいと感じるかもしれないけど、失敗があるからこそ成長できるし、いいプロダクトを作れる。

FREITAGでは利益が出たら、会社のイノベーションに投資されることになっている。究極、失敗しても自分たちの責任になるから、ある程度は許されるんだよね。あと、株主がいないから成長スピードを気にしなくてもいい。

僕はFREITAGがとてもチャレンジングなブランドだとも思っている。一般の人は分からないだろうけど、50%くらいは失敗しているんじゃないかな?(笑)

 

──そんなに!?

 

市場に出回らないから、気づかないだろうね(笑)。

 

──一番思い出に残っている失敗は?

 

いい質問だね。

僕が考えるに……商業的な意味では、ニューヨークに店舗を出そうとしたことかな。

 

──確かにFREITAGの店舗はアメリカにない。

 

アメリカ人はトラックの幌について知らないんだよ(笑)。使わないから。

一時期、「クールな場所はニューヨークだ。早くニューヨークへ行こう!」とか話していたんだけど、リサーチをしたら、僕たちが大切にしているアップサイクルのストーリーが伝わらないと気づいたんだ。

プロダクトのルックスがかっこいいと思って買ってくれる人もいるけど、同じくらい、いや、それ以上にアップサイクルのストーリーに共感して買ってくれる人がいる。

そんなことだから、ニューヨークでは売れないねって話をして、ダメになっちゃった(笑)。

 

──でも、今はアメリカ人もサステイナビリティを気にするようになってきた。

 

そう思うよ。完全に波は来ているから、その波に乗ることもできる。

だけど、FREITAGは広告を出さないと決めているから、本当にアメリカに進出するならちゃんとプランを考えなきゃいけない。実は、今、そのプランを練っているんだけどね。

 

──ついにアメリカ進出?

 

まだ何も言えないけど、僕たちは焦ってはない。株主を満足させる必要がないから。

アメリカ進出の前にやるべきこともたくさんある。例えば、コアマーケットであるイギリスをもっと強化するべきだと僕は考えている。FREITAGが支持されている日本や中国の観光客がイギリスに観光に行っているのに、彼らがFREITAG STOREに足を運んでいない。そこにも世界でひとつだけのバッグが待っているのに。

僕たちはスイスの会社。保守的な国民性からか、あるものを大事にしたり、最大限に活用したりする傾向があるんだ。だから、アメリカ進出はまだ先かな〜。アメリカ人みたいに借金まみれになるのはイヤだし(笑)。

まあ、失敗したらしたで、僕たちは素直に「We fucked up」と言うからいいんだけど。それをFREITAGのユニークネスとしても大切にしているからね。

とはいえ、失敗を振り返らないということではない。ちゃんと何が原因だったのかを分析するようにしているよ。

「バッグは、およそ1/5の値段でも作れる。
だけど、地球を大切にしたいから
絶対にやらないと決めている」

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──FREITAGのユニークネスといえば、アップサイクル。そこへのこだわりは?

 

僕たちがやっていることは本当にコストがかかる。

トラックの幌を見つけるのも時間がかかるし、それを輸送する手間もある。使われた幌は汚いから洗わなければいけないし。もっと言えば、物価の高いスイスでプロダクト製造をおこなっていることは非効率かもしれない。

コストを抑えたいなら、インドに輸送した方が安い。おそらく僕たちのバッグは、およそ1/5の値段でも作れるんだ。だけど、地球を大切にしたいから絶対にやらないと決めている。

 

──というと?

 

輸送するのにも、燃料を使うよね。それは地球温暖化や水質汚染にもつながる可能性がある。

僕たちは未来を考えているからこそ、環境に負荷をかけないように本社から近いところで全てを終わらせるんだ。

しかも、今、利益が出ていないってことではない。嬉しいことに十分な資金があるから、別にわざわざ環境に悪いことをする必要もないんだよね。

 

──トラックの幌を見つけるのも近いところで?

 

全てヨーロッパから。イギリスやドイツ、イタリア、あとはポーランドが多いかな。

よく聞かれるから先に答えておこうと思うけど、トラックの幌を探すのはそこまで難しくない。一番難しいのは、色のバランスを考えることなんだ。

例えば、この店に並んでいるのは青と黄色のプロダクトだよね。棚の中を見れば、違う色もあるんだけど、このレイアウトの仕方は青と黄色が多くなっているということを意味している。

赤色の幌が欲しいからといって、それを買うことはできない。僕たちのアイデンティティに反するからね。

色のバランスを取るときは、必死で運送会社なんかに電話をするんだ。

 

──ちなみに、一番珍しい色は?

 

黒とピンクだね。見つけたら、ラッキーだと思っていいよ。

「僕たちは正しいことをやっていると
心の底から信じているし、
それに対しては絶対に妥協しない」

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──全然話題は変わるけど、FREITAGのカルチャーを全員に浸透させるのは難しいのでは?

 

通常の会社では、ピラミッド型のシステムになっているよね。上から下に命令がいって、どうしても下で働く人の不満が溜まる構造になっている。あと、どんなに優れたアイデアがあっても、それを実行するまでに時間がかかってしまう。

でも、FREITAGではホラクラシーという意思決定権を分散させるシステムを採用している。階級がないとは言わないけど、しかるべき人がそれぞれの部門を統制するようになっている。

例えば、僕には18の役割が与えられているけど、それ以外のことに関しては口出しをできない。独裁者になりたくても、なれないシステムなんだ。

 

──なるほど。

 

デザイナーにはデザイナーの目標があって、それを達成することだけを目指して働いている。もちろん責任もあるけど。

でも、専門知識のない人が無駄なことを言わないようになっているおかげで、それだけでもストレスをかなり減らせる。失敗をしても、周りにいるのは同じ立場の人だから、フィードバックは「きっと、こうすれば僕たちはうまくできたんだよ」みたいに、前を向いて話をすることができる。

誰かの上に立つ役職があったら、自然と「なんで失敗したの?」というコミュニケーションになっちゃうでしょ? ネガティブな要素をなるべく排除するように組織がデザインされているんだ。

大分遠回りな説明になったけど、組織構造こそがFREITAGのカルチャーを反映しているから、それを浸透させるのは大変なことじゃない。みんなに体感してもらえるから。

 

──そこまで自信を持てるのは、なぜ?

 

僕たちは正しいことをやっていると心の底から信じているからさ。それに対しては絶対に妥協しない。

いろんなブランドや企業からコラボレーションの相談がくるんだけど、そういう時にも同じ姿勢でいるんだ。利益とかを考えずに、僕たちと共通する価値観を持っているかどうかを気にする。彼らはFREITAGという名前を使いたいだけの時もあるからね。

 

──とはいえ、似たようなアップサイクル製品も増えている。これから先はどのようにFREITAGらしさを世界に発信するつもり?

 

何もしない。僕たちがオリジナルだから。

実はこの2週間で36のブランドが同じことをやっていることがわかったんだ。いわゆるパクリだね。

でも、そういう存在が僕たちがやっていること、FREITAGのあり方が正しいんだと誇りに思わせてくれる。

オリジナリティのないブランドをどうにかしたい気持ちもあるんだけど、まあ、全然気にならないね。市場を作ったのは、間違いなくFREITAGさ。

最近は、大手ファッションブランドが海に捨てられていたペットボトルを使った素材を開発して、スニーカーを作ったりしているけど、彼らがやっているのはただのマーケティングだよ。ニーズがあるから、環境問題を気にするようになった。それは誠実じゃなくて、ただ波に乗っかっているだけ。

本当に地球を大切にする思いがあるなら、全部リサイクル素材で洋服を製造するべきだし、目の前にある利益を捨てるべきだ。

僕はFREITAGよりも大きなファッションブランドが、どこかひとつでもいいから、サプライチェーンなどを見直して、環境問題に真摯に向き合って、社会を変えて欲しいと願っている。たぶん、今は勇気がないんだろうけど、いつかはやって欲しいね。

それでトラックの幌を使うようになっても構わない。地球に優しいことをするなら文句は言わない。

そう思えるくらいに僕たちFREITAGは、プロダクト製造に関わる人たちと深く濃い関係性を築いてきたから、何も恐れるものはないんだ。

先日TABI LABOに掲載されたFREITAGのCEO、オリバー・ブルンシュウィラーのインタビューから、僕が感動した言葉を紹介します。
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