ニューヨーク、感謝祭の夜――DAG FORCEのナイスタイム

サンクスギビングデイは、一年の中で最も有名なアメリカの国民的行事で、宗教的な背景がなく、誰もが楽しめる。日本語で表現するなら、感謝祭だ。「サンクスギビングデイってなんなの?」って友人に聞いたところ「アメリカ建国時に食糧難に陥った入植者に、先住民族が七面鳥を差し入れたのが起源。友人や家族との絆に感謝するイベントだよ」と教えてくれた。

毎年11月の第四木曜日がサンクスギビングデイとなっていて、家族や親戚、仲間が集い、七面鳥を中心に様々な料理がテーブルに並べて、みんなでそれを食べる。雰囲気としては、日本の元旦のよう。

俺たち家族はサンクスギビングのディナーに友人のお宅にお呼ばれして、美味しい七面鳥をいただいてきた。

©DAG FORCE
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食事の時間がおわるとスイーツとともに、ウイスキーやブランデーが出てきて、そこからは歓談タイムとなる。

俺はそんなに酒が強くないし、毎日飲むようなタイプではないから、あんまりウイスキーとか、そういう“大人のお酒”を飲んだことなかったんだけど、アメリカの食後の文化で、新しいお酒の飲み方を覚えた。こっちでは、食事が終わると、ざっくりと片付けを済まして、そこから小さなグラスにウイスキーを注ぎ、椅子に腰を落ち着かせて、みんなでいろいろな話をするのが、ひとつの文化になっている。

仕事の話、子どもの学校の話、そしてトピックはだんだんディープな方向に。

今回は、アメリカ人、韓国人、フィリピン人、日本人とニューヨークらしくダイバーシティな食卓だったので、お互いの文化や政治について話が及んだ。しかも、かなりセンシティブなことも話題になる。「日本の天皇制ってどんなシステムなの?」とか「韓国の教育ってどんなの?」とか「フィリピンの軍隊とアメリカの関係」とか。さらには「未来のAIは攻殻機動隊のようなものになるらしい」とか、本当にいろんな話をした。

じつは、以前の俺は、こういった話にほとんど参加できなかった。

というのも、会話の中で出てくる単語がすごく難しいし、センシティブな内容もあるから間違えたことを言ってはいけないと注意していたのだ。

だけど、今は違う。

大事なのは、コミュニケーションに参加することや、自分の意見を持っていること、そして、相手の意見を聞く姿勢を持つこと。わからなくても聞いていると、どんどんわかるようになってくる。子どもが親の話をいつしか理解していくのと同じように、自然と耳や目や脳が慣れていくのだ。

そして、相手の意見を聞くことは、自分の意見や考えをよりはっきりさせることにもなる。興味あることをより深く理解するきっかけになる。興味のなかったことが、自分の知らないところで、自分の生活や夢にとても影響を与えていることを知る。「知らないことがある」と自分で理解するだけでも、成長できると思う。「知らないことを知ることから始まる」と、大昔の哲学者も言っていた……気がする。

知らないことを突っぱねては、自分の知っている範囲がどれだけ狭いか、広いか、深いか、浅いか、推し量ることができない。別の角度からものを見ることで、より立体的に考えることができる。

そういうことを俺は、アメリカで出会った友人たちから学んだ。

彼らからは、大人になっても、何歳になっても、新しいものを学ぼうという意思と姿勢を感じる。常に他人の意見に耳を傾け、謙虚であろうとする。議論は、意見を押し付けたり、競うものじゃない。新しいものの見方を得るためにするものなんだな、ということを、俺は食後のウイスキーを飲みながら学んだ。

この数年、こうして友人たちからの善意によっていろんなことを学ばせてもらっている。彼らは惜しみなく友人に与え、様々な幸福をシェアできることを喜びとしている。それは余裕がないとできないことだと思う。その余裕を勝ち得るために、日々この世界一忙しくて、過酷な街で戦っている。

俺はもう直ぐ35歳になるが、これまでの人生、いつも様々なものを人から与えられて生きてきた。今、一度謙虚な気持ちを取り戻して、一つひとつ階段をあがり、いつか恩返しができる人間になるのだ、と胸を熱くしながら、眠りについた。

そんな感謝祭の夜だった。

DAG FORCE/Rapper

1985年生まれ。NYブルックリン在住のラッパー。一児の父。飛騨高山出身身長178cm。趣味は、音楽、旅、食べること、森林浴。 NY音楽生活の中で気付いた日々是ポジティブなメッセージを伝えていきたい。

Top image: © DAG FORCE
「ポジティブなメッセージを伝えていきたい」NYブルックリン在住のラッパー、DAG FORCEの連載。
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