俺が「めちゃくちゃな英語でも自信がある」理由――DAG FORCEのナイスタイム

ニューヨークにきて最初のころは、今よりも全然、英語が喋れなかった。

奥さんの友人たちの子どもが5歳くらいだったんだけど、幼稚園児の言葉すら理解できなかった。郵便局へ言っても言葉が通じず、対応してもらえない。電話がかかってきても、何を言ってるかわからない。知人のレストランでキッチンを手伝っていても、コミュニケーションのミスが多々起きる。何か問題があると、自分のせいにされる。そんなことが続く毎日だった。

中学、高校、ほんとに一般的な田舎の公立校に通っていた。学力的にはいたって普通か、それ以下のおれだったが、英語はどちらかといえば得意な科目だった……はずだった。

義務教育(と高校か)で習ったおかげで、多少の読み書きはできたけれど、会話となると、マジで伝わらない。会話にならない。

最初の頃は日常の小さなことが積み重なって気が滅入りそうになった。これはなんとかしないといけない!そんなわけで、日本から買ってきた英文法の本など少しずつ勉強を始めたのだが……うーん、そういうんじゃないんだよな。

まわりで話されている英語というのは、英会話学習本に載ってるような英語じゃないんだ。もっとゲトーイングリッシュ、HOOD(地元)のやりとり。本に書いてあるようなお上品な表現をそのまま言ってみても「はっ?で???」みたいなリアクション。フランクに話に入っていきたいと思っても、こちらがかしこまってしまったりして、なかなかコミュニケーションが思うようにとれないもどかしさがあった。どうすりゃいいんだよ!

悩んだ俺は、よく行くレストランの清掃係――ナイアという友達に相談することにした。俺にもみんなが話しているような英語を教えてくれって。

ナイアとは閉店後にシャッターを閉じた店内で、爆音をかけてフリースタイルラップをしたりして遊ぶ仲だ。そんな彼が、あの日俺にくれたアドバイスがなかったら、今のように自信満々で、自分の英語を話していない。

彼が言ったのは、こう。

「お前のそのイングリッシュが、お前のスラングだ。お前は、俺のブルックリンの友達よりも、きれいな字で英語を書けるだろ?文字も読めるだろ?文字も書けないヤツだっているし、ブルックリンに40年以上住んでたってマンハッタンになんか行ったことがないヤツもいるんだぜ?なのにお前は日本からやってきて、俺と毎日ラップしてるよな?お前の言ってることなんかわかんなくても、お前が言おうとしてることはわかる。だから、お前の話すそのブロークンイングリッシュが、お前のスラングだと思え。笑われたって、別にいいだろ?それがお前なんだからよ!ダッツ、ワッサーブラー!」

ナイアの言う通りだった。

「Really?」の発音とかいまだに苦手なんだけど、俺はニューヨークでなんとか生きていけている。そもそも言葉なんて、文法なんて、コミュニケーション能力のうちのほんの一部でしかない。相手の目を見るとか、手振り身振りをくわえるとか。表情だけでも感情は伝わるし、人の気持ちなんてその環境に一緒にいればだいたい感じ取れるもんだ。

ニューヨークには本当にいろんな人がいて、多くの人が何かしらの苦労を経て今を生きてる。成功してる人も、これから成功していく人も、他人と自分を比べることはしない。いつも過去の自分と現在の自分を比べて、戦っていく。

ナイアのくれた言葉は、俺の胸に突き刺さったし、今の俺を作っている。

移住して4年目。今でも俺はかなりめちゃくちゃな英語を話しているけれど、それでも自分に自信がある。だって、俺の話す英語は、俺のスラングだから。

Have a nice time!

DAG FORCE/Rapper

1985年生まれ。NYブルックリン在住のラッパー。一児の父。飛騨高山出身身長178cm。趣味は、音楽、旅、食べること、森林浴。 NY音楽生活の中で気付いた日々是ポジティブなメッセージを伝えていきたい。

Top image: © DAG FORCE
実際、ニューヨークではどんなに安いデリでもチキンオーバーライスは6〜7ドルくらい。そこに缶ジュース1〜2ドルと消費税を合わせると10ドルになる。
俺が住んでいるのは、俗にBED-STUY (ベッド・スタイ)と呼ばれるエリアの端っこで、今はニューヨークのなかでも比較的治安がよくなってきている場所だ。
よくこんな質問をされる。「ニューヨークの食事ってウマイ?マズイ?」
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