NYのオイシサは、味覚だけじゃわからない――DAG FORCEのナイスタイム

よくこんな質問をされる。

「ニューヨークの食事ってウマイ?マズイ?」

当たり前だけど、ウマイところもあるし、マズイところもたっくさんある。ひとつ言えるのは、味と費用対効果でみれば、日常的に満足を得るには高すぎるってことだ。でも、それは飲食業にもとめる味やサービスに対しての話。

この街で暮らしてみて気づいたのは、食事はもっともシンプルに国境や言語を越えられるコミュニケーションツールだってことだ。誰かと一緒に笑ったり、驚いたり、思い出話をしたり、さまざまな価値観やStoryが交差する食事の時間。味や空間やサービスよりも、この「時間」に対して、満足感を求めるなら、ニューヨークの食事に対する評価は、また違ってくる。

俺がニューヨークで食べたもので、忘れられないほどウマかった料理がある。それはファーストフードチェーンPollo Camperoのテイクアウトのフライドチキン。せいぜい7ドルぐらいだが、今まで食べたどんなチキンより美味しかった。

2つの国境を超え16歳で家族のためにグアテマラから出稼ぎに来た友人と、キッチンの片隅で食べたその味には、彼がここに来る前に何をしていたのかとか、どんな街に住んでいて、家族は何をしているのかとか、口数の少ない彼の話を聞きながらの、たった数分の食事だった。それは食べログで3.9を獲得するラーメンに勝るものがあった。

日本人の職人的に研鑽され洗練された味や味覚とは別の価値観で食事を楽しむことができれば、きっとニューヨークのオイシサを実感できるはずだ。

DAG FORCE/Rapper

1985年生まれ。NYブルックリン在住のラッパー。一児の父。飛騨高山出身身長178cm。趣味は、音楽、旅、食べること、森林浴。 NY音楽生活の中で気付いた日々是ポジティブなメッセージを伝えていきたい。

Top image: © DAG FORCE
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。