不法移民の友人――DAG FORCEのナイスタイム

俺の身の周りで起きたちょっと悲しいお話。

ニューヨークには沢山の移民が暮らしている。「人種のるつぼ」とか「人種のサラダボール」とか呼ばれているのは聞いたことがあると思う。あらゆる国のあらゆる地域から集った移民たちが暮らす街なのだ。

そしてその移民のなかには、違法に入国、または滞在しつづける“不法移民と呼ばれる人たち”がいるが、彼らの労働力なくしてニューヨークという街は機能しない。

多くのレストランのキッチンや工事現場では不法移民たちが活躍している。

彼らのなかには、母国に残してきた家族に仕送りをしながらニューヨークで日々働き、出稼ぎをする生き方を選んだ人たちがいる。いつか地元に大きな家を建てる日を夢見ながら。俺の友人にもそういう人たちがいる。

仕事の合間に家族とテレビ電話する彼らをよく見かける。スペイン語で、小さな画面の向こうの我が子と会話する時の顔は、普段の生活では見せないような、柔らかくて暖かい表情だ。生まれてから一度もあったことのない我が子とスマフォのアプリゲームを楽しんでいる姿は、切なくも美しく感じる。

また、別の友人は、毎日会話をしていても、まだ一度も腕に抱いたことのない我が子が、ついに大学にいくことになったと喜んでいた。彼は地元に大きな家を建て、お店を作り、遠い街から一家を支えている。ニューヨークの片隅のキッチンのなかや建設現場で、人知れず汗をかきながら。

俺はひょんなことから行きつけのレストランのメキシコ人のキッチンマンと仲良くなった。彼はいつも陽気なハードワーカー。母国メキシコにも、そして今暮らすニューヨークにも家族があり、どんなときでもマイペース。明い性格で弱さを一切見せないような男気溢れるやつだ。

レストランへ行けば必ず彼の明るい笑顔が待ってる。しかしその日は、彼はお店にいなかった。お店全体になんだかどんよりとした空気が流れている。ほかのスタッフに、彼はどうしたかと聞くと、どうやら親父さんが亡くなったらしい、と。だから今日は来ないだろう、と。

翌日、またレストランに顔を出してみると、彼がいた。

それまで見たことのないような、鉛色の空のような暗い表情で淡々と働いていた。自分を生み育ててくれた父親の死は、海を越えて彼のもとに届いたが、彼は母国の父に会うことはできない。国境を越えこの街に来てから一度も会っていない父親との死別。それでも、不法移民である彼は、一度母国に戻ったら二度とは戻ってこられないだろう。

こんなに切ないことがあるだろうか。気持ちを察しようにも言葉が見つからなかった。俺にはいつだって帰れる母国や、会える家族がいる。どんな言葉をかけたらいいのかわからなかった。

その時、彼の同僚でブラジルから来たボンボンのおぼっちゃま留学生がやってきた。そして「Oh My Friend」と言いながら、彼を笑顔で深く抱きしめた。そしたら、彼の表情は少し明るくなって、いつもの彼に戻っていった。

俺も、彼がそばに来た時、お悔やみの気持ちを込めて、握手し肩に手を当てた。何も言わなかったが、気持ちは通じたようで、彼の目は「ありがとう」と言っていた。彼の苦しみや悲しみを知ることはできないし、癒すこともできないけど「大切に思っているよ」という気持ちには、言葉は必要ないんだとあらためて思った。

ニューヨークにも人情がある。最近それをよく感じる。

あらゆる国の地域から、あらゆる理由があって、移り住んできた人たち。
またそれぞれのストーリーを持って、ここに暮らし続ける人たち。

この街に暮す人の数だけ無数のストーリーがあり、ドラマがあり、そして「今」がある。

誰しもが人生の中で辛い経験をするだろう。それは、ある人から見れば辛くないかもしれないし、ある人からすれば大変耐え難いことかもしれない。他人に成りかわりはできないし、比較もできない。

だからこそ、相手のことを思いやる気持ち、寄り添う心、人情が生まれるのだ。と思った。

DAG FORCE/Rapper

1985年生まれ。NYブルックリン在住のラッパー。一児の父。飛騨高山出身身長178cm。趣味は、音楽、旅、食べること、森林浴。 NY音楽生活の中で気付いた日々是ポジティブなメッセージを伝えていきたい。

Top image: © DAG FORCE
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「ポジティブなメッセージを伝えていきたい」NYブルックリン在住のラッパー、DAG FORCEの連載。
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よくこんな質問をされる。「ニューヨークの食事ってウマイ?マズイ?」
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