コロナ禍のNYで仕事を見つけた猫

働かざるもの食うべからずなんて諺があるけど、働こうにも仕事がない人々が溢れている。昨年末の時点でNY市の失業率は約15パーセントにものぼり、非正規雇用者を入れたらとんでもない数の失業者で溢れかえっている。困窮し物乞いをする人たちを、駅や街角のいたるところで見かける。苦しみや怒りを吐露する人々、失意の眼差しで立ちすくむ人々。

そのなかで、かつては野良猫のテスラが、今は大事な仕事をしてる。

テスラが働いているのは、ブルックリンのブッシュウィックにある『Dashi Brooklyn』。

『Dashi Brooklyn』は、ブルックリンの新興地域であるブッシュウィックとイースト・ウイリアムスバーグの間にあるレストランだ。日本食インスパイアの様々な美味しい料理がお手頃な価格で楽しめることで、近隣住民やお腹をすかせたアーティスト達に愛され、店内飲食ができない期間でも繁盛店と呼べるような人気店。ここの店主であるリチャードさんが、テスラの名付け親だ。

『Dashi Brooklyn』が、コロナ禍の直前にオープンした頃、野良猫のテスラはやってきた。

このエリアに現れた当初のテスラは、やせ細りボロボロの風体で、あたりをヨロヨロとうろついていた。NY市の保健局の定めでレストランで動物を飼うことは禁止されているが、近隣の住民やアーティスト達の理解とサポートもあり、テスラは弱った体力を回復し徐々に元気になっていった。

さて、レストランがオープンした当初、この地域にはネズミの軍団がはびこっていたらしい。建設中も、四六時中ネズミが走り回り、リチャードさんも頭を抱えていたが、テスラが来たことで、嘘のようにネズミがいなくなったんだとか。体力を回復したテスラは、野良猫のワイルドの眼光で周囲をパトロールしネズミを寄せ付けない。

テスラのお陰でレストランの天敵であるネズミが一匹もいなくなった。こうしてテスラは自分の居場所と仕事を見つけた。

今では、誰に頼まれたわけでもなく、レストランのドアの前に(勝手に)鎮座し、お客を迎え入れる看板猫になっている。レストランで猫を飼っているいるわけじゃなく、自主的に行動しているのだ。

最近では、人間にも慣れて機嫌がいいと優しそうな人にすり寄っていく。人々に愛想を振りまいて、またパトロールに出かけていく。

ニューヨークの冬はまだまだ厳しい。コロナ禍が収束するまでまだまだかかりそうだ。

大変なことも多いけど、コロナがなかったら気づかなかったこともたくさんある。

例えば、以前は、余裕のある生活や、華やかさを他者にアピールするような投稿で溢れていたSNSも、今自分が出来ることを一生懸命やる人、アイディアを絞ってクリエイティブを楽しむ姿、他者を元気付けようとするような投稿が増えたように感じる。

人も、動物も、希望を探して一生懸命生きていこうとする姿はそれだけで美しいのだ。

DAG FORCE/ラッパー

1985年生まれ。NYブルックリン在住のラッパー。一児の父。飛騨高山出身。趣味は、音楽、旅、食べること、森林浴。NYでの日常生活で感じたこと。そこからポジティブなメッセージを伝えていきたい。