フリースタイルダンジョンでLIVEしたら、会場が静まり返った

HDDを整理していたら、2017年に『フリースタイルダンジョン』に出演した時の写真をみつけた。

フリースタイルダンジョン
©DAG FORCE

当時、ダンジョンの爆発的人気は、海を飛び越えNYでも感じられるほどだった。俺もNYのBarで日本人に出会って「ラッパーの……」と自己紹介しようものなら、いきなりフリースタイルを仕掛けられたことがある。それぐらいみんながフリースタイルラップにハマっていた。

ちょうどその頃、俺も番組側からオファーをいただき番組にライブアクトとして出演をさせてもらうことになった。ただ、前回のリリースからかなり時間も空いていたし、すでにNYに移住していた俺は国内シーンで活発に活動をしていたわけでもなく、視聴者や会場のお客さんのほとんどが「誰?」って感じるだろうな、と予想はしていた。

だけど、ラップでまともに飯が食えるようになるまでの間、当たり前だけど誰も俺のことを知らないなかで、毎日のようにマイクを握ってステージに立ってきた。そうして実力をつけて、周囲に認められてきた。誰も知らない環境、すなわち逆境というのは、自分のルーツだし、一番アドレナリンが出る。

当日、白熱するラップバトルの中盤、新木場STUDIO COASTのフロアを埋め尽くす数千人のお客さんの前に立った。俺は薄暗いステージの上から会場全体を見渡した。後ろにはスタンバイを終えた盟友DJ BUNがいる。いつものようにマイクを持ち、俺はアカペラで歌い始めた。

俺のライブは、大体アカペラからスタートをする。理由は3つある。

①会場の空気をリセットする

②マイクの感触を掴む

③会場の音の鳴りを確かめ、PAさんと暗黙のやりとりをする

自分のメッセージを伝えるライブだから、客の顔色を伺うようなことはしない。手を無理に上げさせることもない。好きなように楽しんでくれて、心に残るものがあったら本懐だと思っている。

だから、その日もすべてのエネルギーを込めて歌いきった。そして、歌いきった瞬間、司会者が戸惑うほど会場がシーンとしていたのを覚えてる。俺がステージを去った後も、会場全体がまだ戸惑っているかのような空気だった。

ダンジョン収録後、日本でのツアーを終えて帰国した俺は放送を生で観ることは出来なかった。だけど、地上波に俺のライブが流れたことを喜んでくれる仲間やファンの人からの着信音がひっきりなしに鳴っていた。

「Dagのライブ、シリアスすぎじゃね?」

「会場の空気凍ってるけどw」

そんなメッセージがたくさんあった。俺はむしろ、してやったぜと思ってた。

昔から、“お約束”や同調圧力なんか全く気にしない。逆境を好み、異端と言われることがむしろ嬉しい。なぜなら他人が無視できないほどの強烈な個性が俺にあるということだから。オリジナリティとリアリティこそが自分が人生を通してこだわってきたことだ。それこそがラップのカッコよさだと思っている。

時には、自分の魅力が伝わらない。というか、俺は万人に受け入れられたり、伝わるものではないと理解してる。だからこそ、いろんな人の心に残ったり、感想を言ってくれたり、反応があったりするととても嬉しい。

他人に同調して、自分の意見を曲げたり、自分の頭で考えることをやめてしまったら、自分自身である意味がない。

結果がついてくるかどうかなんてわからない。

でも自分で決めて、自分で生きて、最後どう死ぬか、そういうことから目をそらさないで時をすごすことこそが「生きる」ということではないだろうか。

ダンジョンの会場はシーンと静まり返った。だけど、放送があったその月の配信の売上や再生回数は通常の10倍近くになっていた。

「パパ、お風呂のお水出しっぱなしだったよ」

「パパ、コンロの火を消し忘れてるよ。火事になってしまうよ」

「パパ、鍵がしまってなかったよ。ドロボーにはいられちゃうから気をつけようね」

この原稿を書いている今日、家族から言われた言葉だ。音楽もいいけど生活もしっかりやりたい……。

DAG FORCE/ラッパー

1985年生まれ。NYブルックリン在住のラッパー。一児の父。飛騨高山出身。趣味は、音楽、旅、食べること、森林浴。NYでの日常生活で感じたこと。そこからポジティブなメッセージを伝えていきたい。

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