レムとノンレムの仕組み|レム睡眠で目覚める2つのメリット【専門家監修】
目次
レム睡眠とノンレム睡眠。単語だけは聞いたことがあり、なんとなくレム睡眠で起きたほうが良いという噂もよく聞きます。
しかし、多くの方はレム睡眠とノンレム睡眠の仕組や、レム睡眠で起床すると良いとされるロジックを知らないのではないでしょうか?
本記事では、上級睡眠健康指導士の加賀照虎先生にインタビューし、その疑問をぶつけてみました。睡眠の知識が全くない人にもわかるように丁寧に説明いただいたので、ぜひ最後までご覧ください。
睡眠の役割とは?
──レム睡眠とノンレム睡眠ってそれぞれどのような睡眠なのでしょうか?
わかり易く説明するために、睡眠の役割から説明しますね。
睡眠っていわば脳の休ませることなんですよね。
人間の活動はすべて脳によって管理されているのですが、脳をずっと活動させてるわけにいきません。そのため睡眠という「脳が脳を眠らせる行動」をとっているんですよね。睡眠には3つの役割があるといわれています。
この3つの役割自体がまだ仮説なのですが、井上昌次郎先生という睡眠界のレジェンド的な方が唱えていた説で、一線で活躍する方も賛同している説なので、かなり信憑性は高いと思います。
睡眠におけるレム睡眠の役割
レム睡眠は睡眠の3つの役割のうち、脳の開発をしているのではないかといわれています。
具体的には脳の開発、体の休息、脳の情報処理の3つです。
ノンレム睡眠は残りの2つを役割を担っており、具体的には脳の休息、脳の老廃物を流す作業、成長ホルモンの分泌調整、免疫調整に関する物質の分泌調整の4つがおこなわれているといわれています。
──そんなところまで判明しているんですね。
【年齢により適切な睡眠時間や、レム睡眠、ノンレム睡眠の割合が変わる】
スタンフォード大学の研究。
参照:https://sci-hub.tw/https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17779492
そうなんです。
レム睡眠が脳の開発をしているといわれる理由は「年齢によってレム睡眠の割合が変化すること」にあります。
レム睡眠の割合は年齢が若いほど多く占めており、新生児ですと50%程度、成人の方ですと20%程度であることがわかっています。幼児期にたくさん取ろうとするところからレム睡眠は脳の開発・情報処理をおこなっているのではないかと考えられています。
また、レム睡眠が体の休息をしているといわれる理由は、レム睡眠時に脳から体を麻痺させる信号が出ているためです。
ノンレム睡眠のときは、寝返りをうったり筋肉の動きが確認できますが、レム睡眠に入ると筋肉がダラ~ンと弛緩し、完全にバタンと倒れた状態になります。
そのためレム睡眠には体を休息させる役割があり、筋肉を弛緩させて体を完全に休ませているのではないかといわれています。
睡眠のおけるノンレム睡眠の役割
──反対にノンレム睡眠はどのようなことをしているのですか?
先ほどいったように、ノンレム睡眠はレム睡眠は睡眠の3つの役割のうち「脳を守り修復すること」と「脳をよりよく活動させること」という役割を担っており、具体的には脳の休息、脳の老廃物を流す作業、成長ホルモンの分泌調整、免疫調整に関する物質の分泌調整の4つをおこなっているといわれています。
ノンレム睡眠が脳の休息をしていると考えられている理由は年齢とともにノンレム睡眠の割合が増えていくからです。
発達した脳のエネルギー消費量ってとんでもなく多いんですよね。
人間のエネルギーの20%を脳が使っています。人間の体重でいうと5.6%くらいしかない脳が、全体の20%近いエネルギーを使っているって、いかに脳のエネルギー消費が多いかわかりますよね。
そのため成長が進むにつれ、ノンレム睡眠を増やして脳を休ませているのです。
「レム睡眠ノンレム睡眠」と「寝起きのスッキリ感」
──レム睡眠の役割については理解できました。では、レム睡眠で目覚めると、具体的にどのようなメリットがあるかを教えてください!
レム睡眠で起きる最大のメリットは、単純に起きやすいということです。
人は目覚めるときって、パチンとスイッチが変わるように起きるわけではなく、睡眠状態を引きずりつつ徐々に完全に起きている状態に変わっていくんですよ。この睡眠を引きずっている状態を「睡眠惰性」と呼びます。
レム睡眠のときに起きると、この睡眠惰性が少ないためスッキリと目覚められるといわれています。
というのも、レム睡眠のときって脳はすごく活動をしているんですよ。
ヨーロッパでは逆説的睡眠(パラドキシカル睡眠)なんていわれているのですが、寝ているようで脳は起きています。脳が活動しており、限りなく起きている状態なので、あまり睡眠を引きずらずそのままスッと起きることができるのです。
──ノンレム睡眠で起きてしまうとどうなるのでしょうか?
先ほど説明いたしましたが、ノンレム睡眠ときは、脳みそが休息しています。
なので、目覚めてもすぐには脳が完全に起きておらず、疲れが溜まってるように感じてしまいます。
レム睡眠で起きると脳がクリエイティブになる?
──そのほか、メリットはあるのでしょうか?
レム睡眠のときに起きると脳がクリエイティブになるといわれています。
こちらのメリットに関しては、仮説程度の話で確定的な話ではないので、ご注意ください!
夢というのはレム睡眠の時にみるのですが、夢をみる時(レム睡眠のとき)って脳の論理性をを司ってる部分弱まってるといわれています。
たとえば夢のなかで、いきなり日本にいたのがいきなりニューヨークに行ったりとか、むちゃくちゃじゃないですか。
──たしかに、夢のなかでは普通にしてたら考えつかないような展開になりますね。
レム睡眠のときにみる夢から、レム睡眠時のの独創性やクリエイティブさに目をつけた学者がいまして、以下の実験をおこなっています。
【実験の概要】
ハーバード大学の研究。 「レム睡眠で目覚めた人」と「ノンレム睡眠で目覚めた人」と「すでに起きている人」の3つのグループを作成。3つのグループにテスト(試験)をおこない、採点した。
結果からいうと、ノンレム睡眠で目覚めた人の点数が低く、レム睡眠で目覚めた人と目覚めてから数時間経っていた人は同じ点数だったんですよ。
ノンレム睡眠で起きた人の点数が低いのは寝起きというマイナス条件があるので当然です。
一方レム睡眠で起きた人はマイナス条件がありつつも、起きている人と同じパフォーマンスを発揮したということになります。このことを踏まえて、レム睡眠で目覚めた場合、脳のクリエイティビティーを担っている箇所の働きが強くなっているという論文が出ているですよ。
レム睡眠を活用した偉人「エジソン」
──このクリエイティブな瞬間を、活用できたら面白そうですね!
実際にレム睡眠で起きた直後のクリエイティブな状態を活用していたのが発明家の「エジソン」なんていわれています。
エジソンってショートスリーパーっていわれていたんですけど、結構昼寝をしていたみたいなんですよ。そして、昼寝をするときは右手にボールベアリングを握り、右手の下にフライパンを置いていたらしいんです。
レム睡眠に入ると、筋肉がダランと弛緩するって先ほど説明しましたよね?
──そうか!自然とボールを手放すことができますね
そうなんです。
落としたボールがフライパンに当たる音で目覚めて、研究を再開していたという話があります。
なので、もしかしたら彼が偉大な発明を生み出せたのは、レム睡眠のおかげなのかもしれないですね(笑)。
レム睡眠で起きると健康的にも良いの?
──ここまで「起きやすいこと」「クリエイティブになれること」の2つのメリットを紹介いただきましたが、レム睡眠で起床すると健康的にもプラスの影響があるのですか?
レム睡眠で起きるメリットはあくまで寝覚めの良さと、クリエイティブになれるという2点で、健康的な効果は聞いたことがないですね。
──反対にノンレム睡眠、起きたときに眠気を引きずる以外に、健康的な悪影響はありませんか?
そちらも聞いたことがないですね。
──そうなんですね。老化防止とか美肌作りに良い?悪い?みたいな話は噂に過ぎないのでしょうか。
そう......ですね。
美肌や寿命には関係ないんじゃないかなって思いますね。そういう実験があったという話も聞かないので。
レム睡眠・ノンレム睡眠の周期
──レム睡眠で起きる魅力を理解できたので、実際にレム睡眠で起きてみたいと思いました!レム睡眠ってどういったサイクルでやってくるのですか?
ノンレム睡眠の始まりから、レム睡眠の終わりまでが第一周期と呼ばれていまして、よく90分周期だなんていわれていますよね。
──90分のサイクルはなんとなく聞いたことがあります。
あれって全体の平均値なので、あてにはならないですよ(笑)。
睡眠の周期が80〜110分(90分前後)の人は全体の約40%程度で、過半数にも満たないんですよね。
なので、レム睡眠で起きるためにはとりあえず90分感覚で起きれば良いという話ではないんです。
さらにいうと、同じ人でも今日と明日も違う可能性だってあります。
コンディションや季節などの外的要因であったり原因は詳しくは分かりませんが、レム睡眠の周期は色々な条件で変化します。
レム睡眠やノンレム睡眠の良くある勘違い
──じゃあ、浅い眠り(レム睡眠)で起きることは難しいんですかね?
よくレム睡眠やノンレム睡眠で「浅い・深い」といいますが、単純に浅い眠りがレム睡眠、深い眠りがノンレム睡眠というわけではないんですよ。
ノンレム睡眠のなかに浅い深いという概念がありますが、レム睡眠はノンレム睡眠とは別物です。脳が起きているイコール浅いのだと誤解されているんです。
・ノンレム睡眠の深い状態
・ノンレム睡眠の浅い状態
・レム睡眠
レム睡眠で目覚めるための方法
話がズレてしまいましたが、レム睡眠で目覚める方法はあります。
確実にとまではいえませんが、簡単にできる方法なのでぜひ試してみてください。
【タイムウインドアラーム法】
・用意するもの:
目覚まし2台、またはアラーム機能付きのデバイス1台・設定方法:
片方の目覚ましを小さめの音でセットし、もう1つの目覚ましを大きめの音でセットする。音が大きい目覚ましを起床する時間ピッタリにセットし、小さい方の目覚ましを起床時間の20分前にセットする。
まず朝方の眠りについて簡単に解説しておきます。
朝方の眠りって「浅いノンレム睡眠」か「レム睡眠」しか基本的にないんですよ。
より細かく分けると「①浅いノンレム睡眠(やや深め)」「②浅いノンレム睡眠」「③レム睡眠」の3つになります。
先に鳴る小さな音のアラームで起きれた場合は、②か③の状態となります。恐らくスッキリ目覚められているので、そのまま起床してください。
小さい音で起きられなかった人は①の状態となります。そこから20分も経てば高い確率で②の状態に移っているはずなので、2つ目の目覚ましでスッキリ起きる事ができるでしょう。
──こんな方法があるんですね!ぜひ試してみたいと思います。
僕も実際に「バイブ機能のみ」と「通常のアラーム」の2つで試しています。
結構バイブ機能だけで目覚めることが多いのですが、スッキリと目覚めることができますね。
もちろん、レム睡眠で起きることだけではなくきちんと適切な睡眠量を取ることも大切です。
しっかりと睡眠時間を確保したうえで、こういった起き方の工夫を試してみてください。
まとめ
・睡眠には3つの役割があり、①脳の開発がレム睡眠、②脳を守り修復するがノンレム睡眠で、③
・レム睡眠の時間は年齢を重ねるほど短くなる
・レム睡眠で起きるとスッキリと目覚めることができる
・レム睡眠で起きると脳がクリエイティブになるという説もある
・レム睡眠で起きるためには「タイムウインドアラーム法」の使用がおすすめ
以上、上級睡眠健康指導士の加賀照虎先生へのインタビューの様子を紹介しました。
インタビューを通じて、レム睡眠で起きることの2つのメリットを明確に理解することができました。誰もが知っている発明家エジソンもレム睡眠で起きることにこだわっていたなんて驚きでしたね。みなさんも今日教わったアラームのセット法を使って、レム睡眠で目覚め、クリエイティブな1日を過ごしてみてはいかがでしょうか。