ベストな睡眠時間とは?自分にとって最適な時間を見つける方法
世の中には睡眠に関するさまざまな情報が溢れており、適切とされる睡眠時間にも多様な意見があります。しかし、これらの意見は一般論や平均値に過ぎず、自分にとっての最適な睡眠時間は自分でみつけなくてはいけません。
そこで、睡眠の専門家である上級睡眠健康指導士の加賀照虎先生に、自分にあった睡眠時間を見つける方法をインタビューしました。本記事ではその様子をまとめているので、ぜひ参考にしてください。
最適な睡眠時間は何時間?
──いきなりなのですが、人にとっての最適な睡眠時間ってどれくらいなのですか?
平均は7時30分〜8時間くらいなのですが、人によってそれぞれです。
平均値を参考にするのではなく、自分の適切な睡眠時間見つける方法があるで、自分にあった睡眠時間を見つけるのがいいかなと思います。
自分にとって最適な睡眠時間を探す方法
──さっそく自分にあった睡眠時間を探す方法を教えてください!
まずは、最適な睡眠時間を探すうえでの考え方について簡単に説明します。
以下が、アメリカのスタンフォード大学でおこなわれた人の睡眠を長くしたときの実験です。
【実験の概要】
・試験者
約8名・実験前の平均睡眠時間
7時間36分・内容
1日14時間以上はベットで過ごすように指示。好きなだけ眠ることを許可し、睡眠時間の推移 を計測する。
──なんてうらやましい実験…
そうですよね笑。
試験者の方も初日や2日目は13時間くらいの長い睡眠をしています。初日の睡眠時間が長くなるのは、今までコツコツ貯めてきた睡眠不足(睡眠負債)の返却をしているためです。
しかし、3週間もすると睡眠時間はグッと短くなり最終的に8時間15分ほどに収束しました。
当初、この時間が人間の最適な睡眠時間であり、この方法が個々の最適な睡眠時間を測る方法だと思われました。
──なにか問題があったのですか?
自由に寝ていいという条件のうえで、収束した時間(8時間15分)では眠りすぎの問題が出てきたんですよ。
僕は「満腹睡眠時間」と自分で呼んでいるのですが、お腹がいっぱいまで寝てしまうと、夜寝ようとしても寝つきが悪かったり、眠っても夜目が覚めるといった状態になってしまうのです。
なので、満腹睡眠時間が8時間15分だとすると、そこから毎日15分くらい睡眠時間を減らしていくことで、本当に自分にあった睡眠時間を見つけることができます。
【ベストな睡眠時間を知るための方法】
1.睡眠負債を返済する
2.満腹睡眠時間を知る
3.15分刻みで睡眠時間を短くしてみる
最適な睡眠時間のチェック項目
──15分刻みで睡眠時間を短くしていくうえで、何を基準にすればいいのですか?
チェックポイントは「日中の眠気」と「入眠までの時間」、この2つが大きいです。
日中に眠気に関しては有無を確認してください。食後は例外です。
寝つきにかかる時間は10〜15分前後が良いとされています。5分以内に眠れると睡眠時間が足りない。寝つきに20分以上かかるなら眠りすぎといえます。
適切な睡眠時間を確保するために
最近「いい考え方だな」と思ったことがあるんですよ。
──どんな考え方なんですか?
1日って24時間ですよね。
1日8時間が適切な睡眠時間の人は、睡眠時間の8時間を差し引いたうえで、1日は16時間しかないって認識で行動するという考え方です。まず先に適切な睡眠時間を確保した上で、その残りの時間で今日やるべきことを片付けられるように動いていただきたいです。
どうしてか睡眠時間って1日に必要な行動をしたうえでの余りの時間みたいになってしまいますが、快適な毎日をおくるためにこの考えが浸透してくれるといいなと思っています。
睡眠時間の短長による健康影響
──適切な睡眠時間を知る方法について教えていただきました。ではもし睡眠時間が長すぎたり、短すぎるとどのような影響が出てしまうんでしょうか?
まず、睡眠時間が長い分には健康への影響はあんまりないって考えられているんですよ。
下記の画像が睡眠時間の長さと死亡率のグラフです。
──あれ?睡眠時間が長い人の死亡率高くないですか?
この図をみて睡眠時間が長い人は早死するなんて勘違いをする人がいますが、これは論理の誤謬であって、因果関係はないですよ。
簡単に説明すると、睡眠時間が長いと病気になって死亡率が高まるのではなく、病気の人の睡眠時間が長いため、結果的に睡眠時間が長い人の死亡率が高くみえるだけなんです。
例えば、精神的な病気の方がストレスで眠れなくなったり、睡眠障害や呼吸器系の病気の方が寝ている間上手く呼吸できなくなることで、睡眠の質が下がり、長い時間睡眠が必要になることがあります。
たくさん寝ること自体は”そこまでは”健康リスクはないと考えられています。
反対に、最適な睡眠時間よりも短い時間しか睡眠を取ることができない場合、健康へのリスクはかなり大きいです。
睡眠時間が短いと下記のような症状が出ると考えられており、重度となると「脳疾患」や「心臓疾患」などの病気を引き起こす可能性もあります。
・ストレス増加
・自律神経の乱れ、交感神経の興奮
・食欲増加、肥満
・疲れ、運動不足
・インスリン感受性の低下、血糖値上昇
【関連記事】睡眠不足
睡眠不足による健康リスクについては「睡眠不足の危険性と効果的な改善方法【専門家監修】」で詳しく解説をしています。
睡眠の時間と質、どちらが大切?
──睡眠時間と質どちらが重要なのでしょうか?
僕のスタンスとしてはもう本当に睡眠時間の方が大事だと考えています。
睡眠の質を上げる取り組みをするより、睡眠時間を伸ばした方が効果が大きいです。日中の眠気を解消し、健康リスクを下げ、
睡眠の質を上げることで、
睡眠の質を上げる工夫はあくまで十分な睡眠を取ったうえでの取り組みとなります。
睡眠時間に関する豆知識
睡眠を取る時間帯
──同じ時間でも睡眠の時間帯によって効果は違うのでしょうか?(24時〜6時の6時間と6時〜12時の6時間)
眠りの質に影響します。眠りってすごい体温の動きが大事なんですよ。
体温には日中から夜にかけて高く、深夜にかけて下がっていき、明け方から徐々に上がっていくというリズムがあるんですよね。
人は体温が下がることで眠くなり深い睡眠に入ることができるのですが、たとえば朝方に寝てしまうと、人の体温リズムと上手に噛み合わいません。すると深い眠りに入ることができず、眠りの質は下がってしまいます。
──体温の関係上、遅すぎは良くないのですね
ただし、成長ホルモンに関してはどの時間に眠っても、眠り初めの3時間は成長ホルモンは出るといわれています。
結論、夜に眠って朝方に目覚めた方がいいということは変わりませんが、「成長ホルモンの関係上、夜ふかしはよくない」みないなロジックは間違っていると思います。
体温の関係上、
──ちなみに何時に眠るべきなのでしょうか?
睡眠時間と「寝溜めや昼寝」との関係
──寝溜めや昼寝をすれば睡眠時間は短くても良いのでしょうか?
昼寝をすればその分、夜の睡眠は短くはなるんですけど......しない方がいいですね。
昼寝って前日の睡眠時間が足りなかった人が、強い眠気を解消するために行うものなので、昼寝して今日の夜寝る時間短くするために行うのは間違っていますね。
夜に寝る時間を確保できるのであれば、昼寝に頼らず夜に寝た方が断然良いです。そうすれば、そもそも昼に眠くなることも少なくなると思います。
あとは寝溜めですね。
人は寝溜めができないので、今日いっぱい寝たから明日は寝なくていいということにはなりません。
ただし、今日活動をいっぱいしたから、明日は長く寝るというのは間違いではありません。寝溜めって両方のニュアンスがありますが、
もちろん、次の日返済すればいいという考えは持たず、毎日しっかり眠る方が一番いいです。
──なるほど、「睡眠時間の貯蓄はできない、返済はするべき」なんですね。
年齢により最適な睡眠時間の変化
──子供の頃って今より寝てた記憶があるんですよね。なので年齢によって最適な睡眠時間とかも変わってくるのかなって思ってるんですけどどうですか?
変わりますよ!全然違います。
3歳ぐらいまでは、1日の半分ぐらい眠っていて、そこからどんどん減っていく傾向があります。
なので言語など新しく学ぶ必要がある幼少期は睡眠時間が長く、年取ってくると睡眠時間が短くなります。さらに歳を取ると、運動をしなくなるので体の休息の必要も減ってきますよね。
2つの理由から、年を取ってくると睡眠時間が減ってくるだろうという風にいわれてますね。
季節により最適な睡眠時間の変化するのか
まとめ
・一般的に平均の睡眠時間は7時30分〜8時間といわれているが、最適な睡眠時間は人によって異なる
・自分にとって最適な睡眠時間を知るためには「日中の眠気」と「入眠時間」をチェックすると良い
・日中(食後を除く)に眠気を感じる場合は睡眠が足りていない可能性が高い
・寝つきにかかる時間は10〜15分前後が良いとされている
・睡眠時間が長い人は直接的な健康上のリスクはないとされている
・睡眠時間が短い人は健康上のリスクが高いとされている
・睡眠の質よりもまずは睡眠の時間を確保することが重要
世の中には「◯時間でスッキリ眠ることができる方法」など様々な情報があり正直、何を信じて良いのかわからずにいました。
今回のインタビューを通して、本当に大切なことは変わった工夫をすることではなく、最適な睡眠時間を知り、なんとしてでもその時間を確保することであるとわかりました。
質を上げるための細かな努力をして、睡眠不足解消に失敗してしまっていた人は、まずは睡眠時間に目を向けてみてください。