ロングスリーパーは改善できる?現代社会で快適に過ごすには?【専門家監修】

休日、ちょっと気を抜くと10時間近く眠ってしまう。そんな自分のことをロングスリーパーだと感じている方も多いのではないでしょうか?しかし、それだけではロングスリーパーであるとは言い切れません。

本記事では、上級睡眠健康指導士の加賀照虎先生にロングスリーパーの特徴や、改善するための方法があるのかをインタビューし、その様子を会話形式でまとめています。長時間睡眠してしまう自分に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

加賀照虎(かが ひどら)

上級睡眠健康指導士(第235号)。睡眠に関する専門的な知識を身につけ、多くの方に正しい睡眠情報を発信している。『プレジデント誌』や『日刊SPA!』、『NHKあさイチ』など多数のメディアに出演。
1,000万PV超の睡眠メディア「快眠タイムズ」を運営中。InstagramTwitterYouTubeでも最新情報を発信中。

ロングスリーパーとは?

ロングスリーパーとは?

──なんとなく睡眠時間が長い人というイメージなのですが、具体的にロングスリーパーとはどのような人なのでしょうか?

 

睡眠時間が長い人という認識で間違いありません!わかりやすく説明するため、まずは睡眠のタイプから紹介します。

睡眠のタイプはショートスリーパー、ロングスリーパー、あとは中間型のバリアブルスリーパーの3つがあり、ほとんどの方が中間型のバリアブルスリーパーとされています。

平均的な睡眠時間はショートスリーパーが6時間未満、バリアブルスリーパーが7時間30分程度であるのに対して、ロングスリーパーは日本だと9時間以上、アメリカでは10時間以上と言われています。

つまり、一般的な方よりも1時間30〜2時間程度睡眠が長いことがロングスリーパーの特徴といえます。

 

──私も休日に9時間くらい寝てしまうことがありますが、それはロングスリーパーには当てはまらないのですか?

 

睡眠不足を解消するために、休日長く寝てしまう人はロングスリーパーではありません。

「自分ってホントはこんなに寝るタイプだったんだ。ロングスリーパーなのかな」という考えは間違いで、あくまで平日の睡眠負債を土日で返却しているだけでしょう。

本当にロングスリーパーの方は、平日も休日もコンスタントに9時間以上の睡眠をしなければ、睡眠不足を感じてしまいます。

僕たちにとっての7時間30分程度の睡眠が、ロングスリーパーにとっての9時間の睡眠なのです。

 

──なるほど......7時間30分程度睡眠を取ったとしても、ロングスリーパーからすると睡眠不足なのですね。

ロングスリーパーをなおすことはできるの?

ロングスリーパーはなおすことができるのか?

──睡眠タイプ(ショート・ロング・バリアブル)を説明いただきましたが、ロングスリーパーが別のタイプになることはできるのでしょうか?

 

ロングスリーパーもショートスリーパーも、遺伝子変容によって生まれると考えられています。遺伝子レベルで決まっていることなので、努力や慣れによって変更をすることはできないとされているんですよ。

ショートスリーパーに関しては特定の遺伝子が発見されているのですが、ロングスリーパーに関してはまだ発見されていません。ただ、現代の研究ではどちらも遺伝子によるもので、変更ができないとされています。

 ロングスリーパーの人口割合

──人口に対して、ロングスリーパーはどれほどの割合を占めているのでしょうか?

 

先程紹介した睡眠タイプのうち、ほとんどが中間型のバリアブルスリーパーとされています。実はロングスリーパーもショートスリーパーもほんの一握りしかいないのです。

書籍やネットメディアなどでロングスリーパーは3%程度、ショートスリーパーは5%程度と言われることがありますが、このデータは遺伝子レベルでの調査ではなく睡眠時間が長い人と短い人のデータに過ぎません。

 

──私も、自分は睡眠時間が長いと思っていましたが、ロングスリーパーではなく、中間の中でもやや長い位置にいるだけなのかもしれません!

 

そうかもしれませんね。さきほど、ロングスリーパーは遺伝子の突然変異によるものと解説しましたよね?

アメリカの機関の調査によると、現在知られているショートスリーパー遺伝子の突然変異が起きる確率は10万人に4人とされています。パーセントにすると0.004%です。

ロングスリーパーはかなりレアな存在であり、研究がなかなか進んでいないため、正確なデータを用意することはできませんが、3%は多過ぎるかなと自分は考えています。

ロングスリーパーであることのメリットとデメリット

ロングスリーパーのメリット、デメリット

──ロングスリーパーであることのメリットやデメリットはあるのでしょうか?

 

一般的な人が長時間寝てしまった場合、翌日入眠までの時間がのびるなどのデメリットがありますが、ロングスリーパーにとって長時間の睡眠が最適なため、とくにデメリットはありません。

またロングスリーパーが遺伝子的に何かが劣っている、優れているということもありません。そのため「早死する?老けない?」みたいなことはないと考えています。

しいて言うのであれば、社会的な理解が得られにくいことくらいでしょうか。

さきほど解説した通り、ほとんど100%の方がバリアブルスリーパーである以上、10時間近く睡眠が必要な方はどうしても一般的に「おっとりしている・だらけている」という印象を持たれてしまいます。

ロングスリーパーが短い睡眠で快適に過ごすためには

ロングスリーパーが短い睡眠で快適に過ごすためには?

──現代社会で生きている限り、ロングスリーパーが毎日9〜10時間程度の睡眠を確保することは難しいと思います。ロングスリーパーの方が短い睡眠で快適に過ごすためにできることはあるのでしょうか?

 

睡眠の質を上げるなど多少の工夫はできますが、基本的には最適な時間眠ることがベストです。

なので、短い睡眠でどうにかする方法を探るより、睡眠時間を確保できるライフスタイルに変更することが一番の解決策だと思います。

確定的な話ではありませんが、ショートスリーパーは政治家、ロングスリーパーはクリエイティブ職に多いなんてのも聞きますね。

幼少期〜学生時代などで自分がロングスリーパーであることがわかった人は、芸術やデザイン、プログラミングなど自宅で1人で制作できる職種など、睡眠時間の確保ができる人生を歩むことが大切です。

なので、職種や会社を自分にあったものを選ぶということが重要になります。

 

──今、大人でライフスタイルの変化が難しい人たちはどのようにすればいいのでしょうか?

 

大きく変化することは難しい場合、会社に近くに引っ越して通勤時間を短くするなど、できる限りの工夫をするべきです。

それでも最適な睡眠時間を確保できない場合は、土日で睡眠負債を返すことや、多少の昼寝をすることなどを心がけてください。

まとめ

・ロングスリーパーとは睡眠時間が長い人のこと

・ロングスリーパーの平均睡眠時間は日本では9時間以上、アメリカでは10時間以上といわれている

・休日に寝過ぎてしまう人はロングスリーパーではなく、睡眠負債を返しているだけと考えられる

・ロングスリーパーは遺伝子レベルで決まっているため、努力や慣れによって変更することはできない

今回のインタビューを通じて、平日の睡眠不足が原因で土日に眠り過ぎてしまうことから、ロングスリーパーであると勘違いしている人が多いことがよくわかりました。

土日眠り過ぎてしまう方は、日頃から十分な睡眠を確保することを、意識してみてください。

また、本当にロングスリーパーの方も睡眠時間を縮める努力や我慢をするのではなく、職種や働き方、勤務地や住む場所などを可能な限り工夫して、睡眠時間をなんとかして作る努力してみるのがオススメです。

All photo by ©iStock.com/CSA-Archive
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。