【スリープツーリズム】質の高い「睡眠」を求めて旅に出よう

スリープツーリズムは、良質な睡眠を目的とした新しい旅行スタイルです。本記事では、その概念や背景から、国内外の最新事例、さらには未来の展望までを詳しく解説します。快眠を求める方におすすめの情報が満載です!

スリープツーリズムとは?
現代人に求められる新たな旅の形

「スリープツーリズム」とは、良質な睡眠を最大の目的に据えた新しい旅行形態のことを指します。

多忙な現代社会では、長時間労働やデジタルデバイスの過剰使用、ストレスによる慢性的な睡眠不足が社会問題として浮上。特に、「経済協力開発機構(OECD)」のデータによれば、日本人の平均睡眠時間(7時間22分)は先進国の中でも最低水準に位置しており、健康への悪影響が懸念されています。こうした状況下で、2023年ごろより単なる観光ではなく「眠ること」を主軸に置いた旅行が注目を集めるようになりました。

「ウェルネスツーリズム」との違い

スリープツーリズムは「ウェルネスツーリズム」の一部として発展しており、旅行中の特別な環境で睡眠の質を高めることを目指しています。

睡眠は健康維持の三大要素のひとつとされており、適切な休息を得ることは心身のリセットに不可欠です。米国では、休暇中に睡眠を優先する旅行スタイル「Sleepcation(スリープケーション)」が人気を博しており、短期間でもリフレッシュ効果を得られる施設がZ世代やミレニアル世代を中心に注目されています。

また、ホテルチェーン「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」が実施した調査(「Sleep Tourizzzm 2.0」)でも、旅行者の70%が「睡眠アメニティが充実した宿泊施設を選びたい」と回答しており、このトレンドの拡大が予想されています。

睡眠不足の背景に見る
「スリープツーリズム」の台頭

日本でスリープツーリズムが求められる背景には、都市生活者を中心とした睡眠不足の深刻化が挙げられます。厚生労働省のデータによれば、成人の約40%が日常的に睡眠不足を感じており、特に20代から30代の働き盛り世代においてその割合が顕著。この層は、デジタル機器の多用やストレスの増加により、睡眠の質が低下している傾向にあります。そうした背景からも質の高い睡眠を追求する旅行は、新たな解決策として関心を集めているようです。

また、Z世代やミレニアル世代の特徴として、モノよりも体験に価値を見出す消費行動もスリープツーリズム拡大に寄与していると考えられます。この傾向に合わせて、宿泊施設や旅行代理店は「快眠」をテーマにしたサービスを拡充しつつあります。

たとえば、「東京プリンスホテル」では、「やさしい快眠サポートステイ」プランを提供。快眠セラピスト・三橋美穂氏監修のもと、特別な寝具や快眠アロマを活用した体験を提供しています。さらに、睡眠解析サービスを行う日本初のウェルネス・カプセルホテル「ナインアワーズ」では、最新の睡眠解析技術を活用し、個々の睡眠パターンをデータ化することで、短時間滞在でも質の高い休息を可能にしています。

こうした背景には、コロナ禍を経て「自己ケア」や「ウェルネス」への意識が高まったことも影響しています。多くの人が自身の健康やメンタルヘルスを見直すなかで、スリープツーリズムは心身のリフレッシュを提供する新たな選択肢となりつつあります。

スリープツーリズムの未来
拡大する可能性と進化するサービス

スリープツーリズムは、今後の旅行業界やウェルネス市場においてさらなる成長が見込まれます。「矢野経済研究所」による調査によると、国内のスリープテック市場は2023年までに175億円規模、2026年には175億円に達するとの推計も。これに伴いスリープツーリズム関連のサービスも急速に進化すると考えられます。

また、地方創生の観点でもスリープツーリズムは重要な役割を果たしています。たとえば、長野県や沖縄県では豊かな自然を活用したウェルネスリゾートが次々とオープンしており、地域活性化に貢献しています。これらの施設では、自然との共存をテーマに、五感を刺激する快眠体験が提供されています。

さらに、技術革新もスリープツーリズムの未来を形作る重要な要素。AIやIoTを活用したスマートベッド、個々の睡眠パターンに基づいたオーダーメイドのサービスが普及することで、旅行者は自分に最適な睡眠環境を選ぶことが可能に。ヒルトンやマリオットといった国際ホテルチェーンでは、既にこうした技術を積極的に取り入れ、差別化を図っています。

スリープツーリズムは、健康意識の高まりとともに単なる旅行スタイルを超えた「自己ケア」の象徴としての地位を確立しつつあります。こうした流れは、旅行業界に新たな価値観を提供することになるはずです。

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