Licaxxx、岩崎拓馬インタビュー。自分らしく歩き続けられるワケ

いつの間にか当たり前になったマスクや、透明のパーテーション、画面越しのミーティング。海の向こう側では、大統領選だってかつてないほどの大混乱。

ドラスティックな変化が多い世の中で大切なことはなんだろう——。

ミレニアル世代のロールモデルともいえるLicaxxxさんと岩崎拓馬さんにインタビューを敢行。

 

KEEP WALKING。

 

前向きに歩み続ける2人に話をうかがい、自分らしさを見つめ直す。

Licaxxxが貫く自分らしさ。

能力と憧れのギャップに気づいた。

DJ、ラジオパーソナリティ、編集者など、多彩な顔をもつLicaxxxさん。雑誌やウェブメディアのプロフィールには“マルチ”や“幅広い活動”と書かれることが多いが(今回もそう書かせてもらう)ご自身のことは何と名乗るのだろう。

 

「肩書きを聞かれたら、DJと答えますね。自分の活動の軸は、現場でDJすることだから。 その他色々やっていますが、やっていることは手法を変えて音楽を伝えたり説明したりすることです。 それにDJって肩書きは結構便利で。どういう出方をしても、音楽を紹介する人だというのはなんとなく伝わる」

 

マルチに活動する人は増えているが、Licaxxxさんからはあれもこれも手当たり次第という感はない。根本にある人間として厚みやリアルさを感じる。

 

「DJとして人前に立つことは、毎回が実験。お客さんが変わって場所が変わって。その中でどうしていこうかって模索することが楽しいんです。自分がその日持っている曲のなかから、最適だと思う音楽をかける。決め打ちがひとつもないんです。会場に着くまでに何となく予測していたことを全くやらない日もあれば、狙った以上にDJブースから楽しんでくれているお客さんが見えたりもするんです」

DJやラジオパーソナリティとして自ら表舞台に立ちながら、編集、執筆、ストリーミングラジオの運営などもおこなっている。

 

「裏方気質なのかもしれないです。大学生の頃から人前に立つことはあったけど表100%でやってくイメージはなかったですね。表をできる人はもっといるから、DJをやりつつ、その特性を生かして裏方の部分やパイプ的な役割も担う方が向いているんじゃないかと。でも、完全に裏方にまわるのは遠回りだなと。両方ともやっている人にしかできないこともありますしね」

 

“力は弱さから生まれるもの”なんて箴言もあるが、できないことを認識することはなかなか難しい。Licaxxxさんは自分の強みだけではなく、自分にできないことも理解している。

 

「大学でプログラミングを勉強して、能力と憧れにギャップがあることに気づきました。どれほど頑張ってもコードを速く書ける人には追いつかないんです。速さでは勝てないけど、つくりたいものがあるという点では自信があった。それなら、必要な人材を集める側のほうが自分には向いている。職人気質な人たちへ憧れはあったけど、自分はそうではなかったなと。その分、自分の強みを理解できたんです。あのとき気づいたおかげでいまのかたちがあると思います」

遊んできた場所を守り続けていきたい。

2020年はクラブシーンもしかり、大きな変化がたくさん起こった年だ。

 

「変わることは嫌いじゃないし大胆な風に見えるかもしれないけど、実は割と大きな変化に慎重というか。わたしは“石橋を叩いて渡らない”パターンもあります。とりあえず パッションで動くというよりは、後付けでもパッションの目的と手段を明確にするタイプかな」

 

と、話すLicaxxxさんだが、けして変化を恐れているわけではないよう。

 

「自粛解禁後、都内の小箱やミュージックバーに、20代前半くらいの子たちが増えたように感じます。『とりあえずクラブいこうぜ』ってなるカルチャーに興味ある新しい世代の人たちの登場が自粛前より顕著だなと。 これは正直予測していなかったし、クラブシーンだけでなくエンターテイメントの進化が問われ、みんな試行錯誤している。 自分のモチベーションはそんなに変わってないし、時代の変化を目の当たりにできていることもレアな世代だと思う。単純に悪いことだけじゃない。」

「クラブは溜まり場の代表かなと思うんです。やったことないけどいきなりスケーターのコミュニティに入るのは日本では難しそうだなあと思うし。クラブは好きな音楽を媒介に、ざっくり趣味の合う人が自然に集まってくる所だということを知ってほしい。こういう環境は、学校や会社とはまた違うコミュニティを生んでいる。遊び続けてたらひとりでふらっと遊びに行っても、大体友達がいる。今日はこの人がDJだから誘わなくても来るだろうとかね。それでいて、音楽以外の政治からくだらない話もできたり。 そういう広がりのコミュニティは風通しがよく、生活の中で欠かせない対話が行われています」

 

最後に、今後挑戦していきたいことも聞いてみた。

 

「これからの挑戦は、いままでやってきたことをこれからも続けること。簡単そうに聞こえるけど、結構大きな挑戦だと思っていて。表舞台からいなくなることと、いままでいたコミュニティから遠ざかっていくことって全然違いますよね。要するにコミットの仕方が大事かなと。オーガナイザー、DJ、レーベル、対話する人……その他いっぱいあると思います」

 
「DJを引退するから幕引き、みたいな感じでコミュニティから遠ざかっていった方々を見てきましたが、自分がいなくなっても愛した音楽やコミュニティが形を変えて広がり続けることを望みます。なので自分が遊んできた場所をいろんな形で盛り上げ続けて、勝手にずっと広がっていくような枠組みをつくりたいです」
 
 
自分の活動だけではなく、Licaxxxさんの強い眼差しはシーン全体に向いている。

Licaxxx(リカックス)

1991年生まれ。東京都出身。DJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティ。ビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰を務めるなど、国内外問わず活躍の幅を広げている。
Instagram:@licaxxx1

ジャケット(UJOH|エム)/シャツ、パンツ(ともにFACETASM|ファセッタズム 表参道)Hair&Make:NORI(Jari)  Styling: Ai Suganuma

  

 

岩崎拓馬であるために。

自分らしく駆け抜けた20代。

名だたるトップメゾンの広告でモデルを務め、俳優としても活躍の幅を広げている岩崎拓馬さん。モデルの道を歩み出したきっかけをうかがった。

 

「最初は単なる憧れで。地元は京都の田舎だから、芸能界なんて夢のまた夢でね。寝ているときに見る夢と一緒で実在しないものって感じだった。19歳のときに東京へ出てきて、アパレルで働き始めてからフリーでモデルすることが多くなって『あ、実現できるかも』って」

 

しかしその後、3年間東京を離れて名古屋で活動をしている。

 

「本格的にモデルをやりたいって思ったけど、東京は右も左もわからないし、人の多さに疲れちゃった。それで場所を変えようと思って、東京と地元・京都の間、じゃあ名古屋かなあなんて安易な考え方で(笑)ありがたいことに名古屋で仕事をもらえたし、モデルとしての基礎力や自信も名古屋時代に培った。名古屋にいるのは3年って決めてたんだ。東京はファッションに限らず流行の発信地だし、やりたい仕事も東京にあったからね」

岩崎さんはご自身でスタイリングも手がけている。表現者としてのインスピレーション源はどこから来るのだろうか。

 

「何かいいものをみたら、無意識にパクっちゃう気がするんだよね(笑)いいものには惹かれるし、真似したくなるでしょ。だから、何かから着想を得るというよりも感覚を大事にしている。ブランドのディレクションをするときは、妄想と自分が欲しいものとかこうだったらいいなって思うことを掛け合わせるかな。その妄想のアイディアは人とのコミュニケーションからもらうことが多いけどね」

気さくで人見知りしない人柄からか、遊びやプライベートな場での繋がりで仕事に巡り会うことも多いそう。じつは今回のインタビューも、岩崎さん行きつけのスナックで出会ったことがきっかけだ。

 

「〈ソルト〉ってブランドは友人とふたりでやっているんだけど、彼女とは青山のスナックで出会ったんだ。あ、そういえばこのインタビューだってそうじゃん!だからどこに何があるかわからないよ。それが面白いんだよね。どんな無謀に思えることでも、口にしていたらいつかは叶うって変な自信みたいなものもある。頭の中で考えるだけじゃなくて、それをちゃんと口に出す。言霊は結構大切だと思うよ」

 

年齢やキャリアにとらわれず、自分らしい方法で夢を実現させている。

 

「昔は焦ったりもしたけど、焦る時間があれば楽しんでたいなって思えるようになったよね。薄っぺらく聞こえるかもしれないけど“人生楽しんだもんがち”でしょ?『拓馬って悩み事とかなさそうだよね』って言われたら勝ちかなって思ってる(笑)」

自分を慈しんでいれば、
まわりの人にも寄り添えるはず。

最近は、人との関わり方や考え方にも少し変化があらわれてきたよう。

 

「以前は、常に新しい出会いを求めていたけど、最近はいままで出会ってきた人たちを大切にするほうが強いかな。出会いは求めてなくても必然的に訪れるでしょ。あと、自分の時間を大切にするようになった。考えるより、まずは行動!って感じだったけど、自分のペースで歩むことが増えたかな。ちょっと落ち着いたのかもね」

 

それから、コロナ禍で考えたことを正直に話してくれた。

 

「もちろん大変なことはわかっているし、俺の知らないところで悲しいことがたくさん起きているのも知ってる。でも、何事にもネガティブにはなりたくないから、いい面を見つけるようにしているんだ。何が自分にとって、かけがえのないものが何なのか見つめ直す機会だったと思う。本当に会いたいと思う人にだけ会うようになったし、本当に行きたいと思うところにだけ出かけるようになった」

一方で、変わらないことについてもたずねてみた。

 

「変わらないことは、常に変わり続けることかな。って禅問答みたいだね。当然、その日の体調や天気によって、考えていることも気分も違う。それに成長って変わることだと思うんだ」

 

岩崎さんの次なる一歩は、どこにあるのだろうか。

 

「何か新しいことに一から挑戦するじゃなくて、いままでしてきたことを続けていきたいな。そこに付加価値を生み出すのが次の挑戦だと思う。モデルは一生続けたいけどね。おじいちゃんになっても好きな服を着ていたいな。最近思うのは、完成なんてものはないってこと。やりたいと思っていたことは着々と実行できているんだけど満足はしてない。まあ、やりたいことなんていっぱいあるからキリがないんだよね(笑)」

 

「あくまでも俺が考えていることだから……」と前置きしたあとで、力強く語ったことが印象的だった。

 

「結局は自分の人生でしょ。自分のことすら大切にできない人が、他人を大切になんてできないだろうし、自分のことをよく知らない人が、他人を知るなんてお門違い。自分を見つめていれば、人に寄り添うこともできるようになるって思っている」

岩崎 拓馬(いわさき・たくま)

1989年生まれ。京都府出身。モデル、俳優、〈re:tack〉、〈SOLto〉ディレクター。東京で活躍するミレニアル世代として〈ティファニー〉のショートムービーに抜擢される。
Instagram:@takuma_iwasaki

ジャケット、パンツ(ともにJ.PRESS ORIGINALS)/ニット(BANANA REPUBLIC)/パール(MIKIMOTO)/ブーツ (RANDOM IDENTITIES)

 

 

歩いていこう、その向こう側へ。

遡ること200年前。1819年、ジョン・ウォーカーが大きな一歩を踏み出した。

以来、“KEEP WALKING”のブランドメッセージのもと、前向きに歩み続けた「ジョニーウォーカー」。スコットランドから始まった旅は世界中に広がり、今日では世界中で愛されるスコッチウイスキーに。

——僕たちの旅はどんな道のりになるだろう。

でこぼこ道かもしれないけど、歩き続ければきっと一筋の光になっていくはず。

→詳しくはコチラ

撮影協力:RECORD BAR analog(Licaxxx)、Coffee Supreme Japan(岩崎拓馬)