正月に飲む日本酒=お屠蘇(おとそ)じゃないって、知ってました?
今、「お屠蘇(おとそ)」がただのお酒じゃないということを、どれくらいの人が知っているのか気になっています。
私はてっきり、お正月に飲む日本酒=「お屠蘇」だと思っていたのですが、きっと同じように思っている人も少なくないのでは。いやきっと大体の酒飲みは、私と同じ認識でいたはず(しかも、お屠蘇は縁起がいいお酒だからいくらでも飲んでいい、たくさん飲むことにより邪気が払われるんだ!わはは!みたいな認識……ですよね?)。
それがですね、先日神奈川県大船にある杉本薬局の三代目・杉本格朗さんの某イベントにお伺いした時に、お屠蘇の意外な真実が明らかになったのです。
お屠蘇って、「薬膳酒」
だったのか!
お屠蘇は、屠殺の「屠(と)」に、蘇ると書きますが、これは、一年の邪気を払って、新しい年を健やかに過ごせますようにという意味。そんな思いが込められているお酒を、日本では元日の朝、おせちをいただく前に、家族の年少者から順番に飲んでいくという習しがあります。元は中国から伝わって、日本では皇族などの風習になり、のちに庶民に伝わったとも言われています。
ここからが大事なんですが、このお屠蘇、じつは「屠蘇散(正式名称は屠蘇延命散)」という漢方で作るお酒(薬膳酒)なのです。
お正月の前日、12月31日の大晦日に、日本酒かみりん、またはその両方を合わせたものに、漢方の素材を数種類ブレンドしたものを漬け込んで、一晩おく。これが、本来のお屠蘇なのだというのです。
漬け込む漢方素材は作る人によってさまざまなのですが、山椒、桔梗、乾姜(ショウガ)、防風、白朮、丁子(クローブ)、桂皮(シナモン)などが基本。それを元に、薬局独自で生薬をブレンドしたものを作っているところもあるとか。オリジナルのお屠蘇が作れるワークショップが開かれることもあります。
ちなみに薬局では、「屠蘇散」という形で一袋300円ほどで売られています。
「ラム」でも「ウイスキー」でも
なにで作ってもいいと思います
薬局などで売られている屠蘇散は、大体このようにティーパックに入った形になっているのでそのまま漬け込めばいいのですが、杉本さん曰く、日本酒があまり得意でないという人は、ラムやウイスキー、ジンなどに漬け込んで作ってみるのもいいのでは、とのこと。
以前伺ったイベントでも、スコットランドのスコッチ・ウイスキー蒸留所、WOLFBURN(ウルフバーン)のウイスキーに、ヨモギやナツメなど、杉本さんがオリジナルでブレンドした漢方素材を漬け込んだ薬膳酒を飲ませていただいたのですが、これが意外なことにかなりの美味。そこは杉本さんのブレンドセンスと、漬ける塩梅も素晴らしかったのだと思うのですが、WOLFBURNの最高責任者・アンドリューさんも大絶賛、私もおかわり2杯。
だからきっと、ウイスキーで作るお屠蘇も美味しいはず。
ちなみに、スコッチ・ウイスキー自体も、昔はスコットランドの修道院で「薬酒」として作られ、飲まれていたんだそうですよ。
さてさて、そんなわけで今回お屠蘇の真実を知ったからには、是非とも屠蘇散をゲットして、12月31日に自分で漬け込んだお屠蘇で新年を迎えてみてほしいと思います。
現代に伝わる昔ながらの風習には、どれもそれをする意味が込められているもの。若い世代もそういったことを知り、大切にして暮らしていくのは、なかなかカッコイイことだよなあと思います。