本物の“棺で熟成”したウイスキー……?アメリカでとんでもない熟成酒が登場
“死の水”たるブランド名で常にマーケティングの常識を破壊してきた「Liquid Death」。
彼らが次に仕掛けたのは、そのブランドイメージを文字通り体現するかのような、前代未聞のアルコール飲料だ。
アメリカのプレミアムウイスキーブランドと手を組み、本物の“棺”で熟成させたウイスキーを限定発売した。
斬新すぎる「棺で仕上げた」ウイスキー
Liquid Deathの次なる一手は、ライ・ウイスキーのトップブランド「WhistlePig」との共同開発で生まれた『WhistlePig GraveStock Wheat Whiskey』。
その最大の特徴は、常識を打ち破る製造プロセス──オーク樽で熟成させたウイスキーの仕上げとして、特注された木製の“棺”に移して約2週間追熟させるという大胆なものだ。
もちろん、中に本物の遺体が入っているわけではない。
CNNによると、その味わいはブランド名から連想されるイメージとは裏腹に、スイカズラやビスコッティ、バタースコッチのような甘いノートを持つ、アルコール度数43度の飲みやすいスピリッツに仕上がっているらしい。
低迷する市場への挑戦、コラボレーションに託す狙い
この奇抜な企画が生まれた背景には、アメリカの蒸留酒市場が直面する厳しい現実がある。
コロナ禍の巣ごもり需要で活況を呈した市場も、ブームが落ち着き、現在は売上が低迷しているとのこと。WhistlePig Whiskeyの新しいCEO、Charles Gibb氏は、業界が厳しい時期にあることを認めつつも、これを「機会」と捉えているようだ。
今回のコラボレーションは、ウイスキーに馴染みのない新しい消費者、特にLiquid Deathが抱える若いファン層を、プレミアムウイスキーの世界に引き込むための戦略的な一手。Gibb氏によれば、あえて軽やかで飲みやすい味わいに仕上げることで、初めてWhistlePigを試す人々への入り口となることを意図したという。
“話題性”を武器に戦う、両ブランドのDNA
こうした大胆なパートナーシップは、両ブランドにとって得意技。
企業価値14億ドルとも報じられるLiquid Deathは、これまでも化粧品ブランドや著名人と提携し、常に話題を提供してきた。一方のWhistlePigも、F1チームやロックスターと組んで限定商品を開発した実績を持つ。
Gibb氏は、それぞれのブランドが持つ独特のファン層にアプローチし、互いのDNAを掛け合わせることで、人々の興味を惹きつけ、新たな顧客を開拓できると語る。
奇抜なアイデアは、厳しい市場環境を生き抜くための、計算されたブランド戦略なのかもしれない。一見すると突飛なこのウイスキーは、消費者が味だけでなく、その背景にあるユーモアや物語を求めていることの証左ともいえそうだ。