コーヒーを知る「実験室」。OGAWA COFFEE LABORATORY 下北沢
桜新町店に次いで、先月30日、下北沢reloadにオープンした「小川珈琲」のフラッグシップショップ2号店をカフェという意識で訪れると、いささか混乱するに違いない。
もちろんコーヒー豆を販売していて、バリスタがいて、おいしい一杯にありつける。ただ、必ずしもその一杯を淹れるのがバリスタとは限らないからだ。
自宅で飲むコーヒーを、諦めない。
“体験型ビーンズサロン”をコンセプトとする「OGAWA COFFEE LABORATORY 下北沢」は、コーヒーをおいしく淹れるメソッドが学べる空間。カフェでもコーヒースタンドでもなく、「小川珈琲」はこれを「実験室」と位置付ける。
同店でのコーヒー体験は、コーヒー豆をセレクトして購入するところから始まる。
では、その一杯をどういただくか? 目の前でバリスタの所作をじっと観察することもできる。だが、ここで体験していただきたいのは……自分で淹れる、だ。
どんなに質のいいコーヒー豆を手に入れたとしても、その扱い方次第では、風味も味わいもガラリと変わってしまうもの。ショップで飲むコーヒーと自宅のそれが同じにならないのは当たり前。
でも、それを当然としていては、豊かで奥行きあるコーヒー体験を自分だけの空間に持ち帰ることは、いつまで経っても叶わないまま。
「OGAWA COFFEE LABORATORY 下北沢」は、それを実現させるための場所。
道具を知り、メソッドを知る。
もちろん、自分一人というわけじゃない。焼いて、挽いて、淹れる、すべての工程において、トップバリスタが目の前で実演をし、選んだ豆に最適な道具を紹介し、その使い方を指南してくれるのだから心配は無用。
おいしいコーヒーを淹れるため、プロの視点でセレクトしたコーヒー器具は約40種。そのすべてを試すことが可能だ。彼らとのコミュニケーションを重ねながら、最良の一杯を自らの手でつくりあげる。ゆえの「実験室」というわけだ。
はたして、それはニッチなコーヒーラバーだけの悦楽か?
主観に頼るだけでなく、実際に体験して味わって、納得のいった豆を手に入れる。そうやって店で飲む味に近づくことができれば、コーヒーのある暮らしはもっと豊かなものとなるに違いない。
コーヒー豆のリザーブシステム
さて、もうひとつ同店におもしろい取り組みがある。コーヒー豆の「リザーブシステム」だ。
とにかくコーヒー豆は管理が難しい。そこで、購入した豆を持ち帰るだけでなく店舗で最適な状態のまま保管(リザーブ)が可能。鮮度を保ったまま、飲みたいときに飲め、自宅へ持ち帰りたい量だけ持ち帰ることができるというのも新しい。
味わいの先にある体験価値
ところで、一部のセレクト商品を除き、コーヒー器具の販売は公式Webページを通じて。それもリンク先の多くはメーカーサイトへと誘導されている。
「自分たちが扱う商品はコーヒー豆」。そこに京都の珈琲職人の信念を感じた。
道具やメソッドを知れば、自宅で飲むコーヒーは何倍にもおいしくなる。それを伝える手法としてリソースやノウハウを抱え込むのではなく、コーヒーそのものを体験価値として共有し、同時にユーザーの探究心を刺激する……。
一見遠回りにも思えるが、あえてそれをオープンソースとすることで「小川珈琲」は、新たなコーヒーコミュニティの醸成に挑んでいる気がしてならない。そう考えると、「実験室」が妙にしっくりくる。
読みかけの本のページをめくったり、気心知れた友人との会話を楽しんだり、あるいはひとり思索にふけようと思うなら、「OGAWA COFFEE LABORATORY 下北沢」はおすすめしない。その際はぜひ、桜新町のもうひとつの旗艦店へ。
『「OGAWA COFFEE LABORATORY 下北沢」概要』
【住所】東京都世田谷区北沢3-19-20 reload1-1
【TEL】03-6407-0194
【営業時間】8:00〜20:00(L.O. 19:30)
【URL】oc-ogawa.co.jp/ocl-shimokitazawa/