「42歳で米大統領になった男」と「手負いの子熊」の物語
何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。
それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。
アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?
TEDDY BEAR'S DAY
(テディベアの日)
朝晩だけでなく、日によっては日中もすっかり肌寒くなり、どことなく人肌恋しい、この季節。
話し相手やハ(グ)フレ(※1)としてはもちろん、見ているだけでほっこり温かな気持ちにしてくれる「ぬいぐるみ」の存在に救われている人も少なくないのでは?
今日は、そんなぬいぐるみのアイコンともいえる「テディベア」を記念して設けられた「TEDDY BEAR'S DAY(テディベアの日)」です。
記念日を定めた「日本テディベア協会」によると、10月27日は、テディベアという呼び名のきっかけを作ったとされる、42歳という若さで米第26代大統領となったセオドア・ルーズベルト(※2)の誕生日なのだとか。
「大統領の誕生日とぬいぐるみに、どんな関係が?」......いやいや、大いにかかわっているんです、これが。
英語圏では、名前のスペルや音をベースにした定番のニックネームが存在します。たとえば、「Alexander(アレキサンダー)」であれば「Alex(アレックス)」、「James(ジェームス)」なら「Jim(ジム)」、「Lawrence(ローレンス)」は「Larry(ラリー)」といった具合に。そして「Teddy(テディ)」は「Theodore(セオドア)」の定番のニックネームであることを、まずは覚えておいてください。
さて、ときは1902年。当時の米大統領“テディ”・ルーズベルトと側近たち一行は、山へと狩りに出かけました。軍人であり自然主義者であり、作家でもあった彼は、政界でもその名を知られる腕利きのハンターでもあったのです。
思うように獲物を仕留められない一行でしたが、山中の茂みに怪我をおった一匹の子熊(※3)を見つけます。が、ルーズベルトは「手負いの動物を仕留めるのは、ハンター精神に反する」として手をかけることはありませんでした。
そんな彼の行動が有力紙『ワシントン・ポスト』に掲載されて話題となるのですが、ちょうどそのころ、ドイツのぬいぐるみメーカー「シュタイフ」が、はからずも、熊のぬいぐるみをアメリカに向けて輸出開始。
アメリカ国内で子熊と大統領にまつわる心温まるストーリーがトピックとして扱われているタイミングで発売されたぬいぐるみは、「テディベア(セオドアの熊)」として大ヒットを記録するのでした。
2002年には、オークションにて1929年製造のものが2000万円以上で落札されるなど、いまだ高い人気をほこるテディベア。
奇跡のタイミングによって“ただの熊のぬいぐるみ”が世界中で愛される癒やしのシンボルになったように、よくもわるくも、時代とは「運」や「巡り合わせ」の連続といえるのかもしれませんね。
※1/「ハグフレンド」の略。
※2/米国史上、最年少で大統領に就任。
※3/「同行者が仕留め損ねた」など諸説あり。