7万人が目撃した「奇跡」と封印された「聖母マリアの予言」

何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。

それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。

アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?

ファティマの聖母が出現

世界各地には、いくつものオカルト現象やなかば都市伝説化した言い伝えなんかが存在します。ただ、UFOやUMAをはじめとするそれらは、決まって目撃情報や詳細が乏しかったりするものですよね。

でも、ここに紹介する“奇跡”は、数万人の群衆の目の前で起こったもの。

のちに「ファティマの奇跡」と呼ばれる出来事のはじまりは、1917年の5月13日のこと。

ポルトガルの山間部サンタレン県に暮らす、羊飼いの3人の子どもの前にその日、聖母マリアが現れました。突然、強い閃光が走ったかと思うと、柊の木の上で聖母マリアは彼らにこう告げました。これから6ヶ月間、毎月13日にここに訪ねてくるように。

加えて彼女は、こう伝えたそうです。「来月、すべての人が信じるようにひとつの奇跡を見せましょう」。

子どもたちはそれ従い、妨害がありながらも毎月、聖母に会いに柊の木を訪ねました。そこで聖母から様々なメッセージを受け取るのでした。

メッセージは大きく分けて3つ。

1つは、死後の世界。聖母が放つ強い光の中に子どもたちが目にしたものは、悪魔や人間の姿をした霊魂が絶望と苦悶のうちにもがく地獄の様子。傲慢や現世的な罪から回心しない限り、人は死後に地獄を経験すること。

2つめは、大戦争の終焉と勃発です。ときは第一次世界大戦の只中。その戦いは間も無く終わりを迎えるけれど、人々が生活を改め罪を悔い改めないならば、さらに大きな戦争によってたくさんの死者が出ること。

そして3つめは、1960年になるまで誰にも言わず秘密にしておくようにと、子どもたちのなかで最年長だったルシアに厳命したそうです。

さてこの話、彼ら3人だけの言い伝えかといえばさにあらず。3回目の出現となった7月には、子どもたちのほかに1000人近い人々が聖母の出現に立ち合い、翌8月にはその数は2万人ほどに膨れ上がっていたんだとか。

そして、6か月目の10月13日がやってきました。

噂が噂を呼び、聖母マリアの出現をひと目見ようと集まった約7万人の群衆の眼前で、その奇跡は起こりました。

この日、朝から降りしきる雨のなか現れた聖母は子どもたちに自分は「ロザリオの聖母」だと告げ、ここに自分を称える聖堂を建てるように、日々、聖堂を訪れ祈りを捧げることで戦争は終わると告げました。そして、去り際にルシアを促し群衆に向かってこう叫ばせたのです。

「太陽をご覧なさい!」

すると、降り続いていた雨はとたんに止み。雲の切れ間から太陽が顔を覗かせました。さらに太陽は色とりどりの光線を放ったかと思うと、まるでダンスを踊るようにときにジグザグに動き、ときに急降下を繰り返したそうです。

それは、およそ10分間も続いたんだとか。

超常現象と呼ぶのでしょうか。ただ、それを一度に7万人近い人々が体験したのなんて、後にも先にもこの一度きりなんじゃないでしょうか。

群衆のなかに居合わせた新聞の記者らが、奇跡の体験を翌朝の新聞で大きく報じ、ポルトガル全土に「ファティマの奇跡」は広まることとなりました。

いったい、それはなんだったのか?

ポルトガルの山間部で起こった奇跡は、1930年になってようやく現地管区レイリア司教が聖母の出現を公に認めることとなります。また、それを受けてカトリック教会・ローマ教皇庁も一連の聖母出現を公認。正式に“奇跡”を認めることとなったのです。

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ところで、聖母が授けた3つめのメッセージ、のちに「ファティマ 第3の預言」と呼ばれるようになったあの秘密とは、いったいどんな内容だったのでしょう。

じつは、ルシアはその後修道女となり、聖母のメッセージを教皇庁に届けていました。聖母の伝言では1960年にそれを発表するようにというものでしたが、その年がきても教皇庁はこれを公表しませんでした。

その内容というのが……。

内容を知ったローマ教皇ヨハネ23世は絶句。情報が漏れることを恐れ封印したとか、次代のパウロ6世もあまりの衝撃に卒倒し数日間寝込んでしまったなんて話も。

結局、2000年になりようやく教皇庁が公式に第3の預言について公開。内容は、1981年5月13日に発生した教皇暗殺未遂事件についてだと発表しました。

ただ、これがルシアが伝えた内容なのかについては定かではありません。聖母が啓示した先の2つのメッセージと比較してインパクトが弱すぎるなど、かなり懐疑的な見方が強く、結局のところファティマ 第3の預言が何を意味するのかは謎のまま。

ただ一人、それを知るルシアも2005年、97歳でこの世を去りました。

バチカンが認めたファティマの奇跡、それから100年以上過ぎた今も認めることができずにいる(かもしれない)3つめの預言。謎は深まるばかりです。

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