【フィギュアスケート】年齢引き上げのワケ
「国際スケート連盟(ISU)」がシニアレベルのフィギュアスケートに関して、年齢制限を15歳から17歳に引き上げると発表した。
新ルールは2024-2025シーズン以降に適用されるそうだが、それまでの2023-24シーズンは16歳と段階的にステップを踏むとのこと。
年齢制限の改正についてISUは、「選手の身体やメンタルヘルス、ウェルビーイングを守るため」と、先月タイ・プーケットで開催された総会にて説明。投票は賛成100、反対16、棄権2で承認されたそうだ。
ちなみに「年齢制限の引き上げ」は、スピードスケート、ショートトラック、シンクロナイズドスケーティングにも適用されるため、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックのスケート競技は、17歳以上のアスリートに出場資格が与えられることとなる。
ところで、議論の焦点となった「選手のメンタルヘルスとウェルビーイング」。年齢制限との関係性をあらためて考えてみよう。
10代のアスリートにとっての身体は、まだ成長過程。過度なトレーニングは骨や関節、靭帯へのダメージを引き起こすばかりか、疲労の蓄積によりスポーツ障害を誘発する可能性も少なくないという。
先の北京五輪ではドーピング疑惑の渦中にいたフィギュアスケーター、カミラ・ワリエワも所属するロシア名門スポーツ校「サンボ70」は、徹底した体重管理と厳しい練習で知られるロシア・フィギュアの虎の穴だ。
だが、ISUの発表を受け「Newsweek」が公開した記事では、同施設が10代の選手らに対し行き過ぎた指導があったことを指摘している。
脂肪がつきやすくなる年齢に達する前段階で、女子選手らに四回転など高難度のジャンプを飛ぶよう指示したり、水分も自由に摂れない徹底管理を強いているといった証言が複数選手から噴出しているんだそう。
さらには、ドーピング疑惑……。優勝候補筆頭だったワリエワに出た陽性反応が大会期間中に判明するも、スポーツ仲裁裁判所は出場継続を認めた。しかし、15歳の少女の心はすでにリンクから離れてしまっていたのかもしれない。ショートプログラム1位からまさかのフリー演目でメダルを逃したのは、記憶に新しい。
若いうちに一流選手と肩を並べスターダムへ。「勝利至上主義」が選手の心と身体にもたらす影響は想像に難くない。今回の新たなルール適用により、多くの選手が健全に自らのゴールを手にするチャンスが増えますように──。