史上最高にクリエイティブでコスパのいいアソビ
拝啓、田中偉一郎さま。
正月の真っ只中に失礼いたします。
新しい年を迎え、まだ2日ではございますが、どうやら今年も止められそうにありません。
なにがって?
「ストリート・デストロイヤーごっこ」です。
路上のひび割れやブロック割れを使ってポーズを取り、あたかも自分の打撃によって破壊したかのように見せ、それを写真におさめる。
こんなにも、クリエイティブでコスパのいい遊びがほかにあるでしょうか?
路上のダメージを見つけては、角度を決めてスマホを構えて、パシャリ。あなたさまが生み出してくれた「ストリート・デストロイヤー」で、容量の数パーセントが埋められたデストロイヤーな写真をつまみに飲むお酒がたまりません。
週末の外出時にパシャリ、旅先でパシャリ、もちろん初詣ついでにもパシャリ……。
目を凝らせば、世の中はヒビや割れ目で溢れています。これを道路整備工事が追いついていないと不満をもらすのか、クリエイティブの原資と捉えるかでは大きな違い。
今日も今日とて、ストリート・デストロイヤーごっこなわけであります。
ご存知ない方のために、軽くご説明をすると放送開始以来、長きに渡って子どもたちを(のみならず大人も)“シャキーン!”と目覚めさせてきたNHK Eテレの人気番組『シャキーン!』の1コーナーに存在したのが、美術家でクリエイティブ・ディレクターでもある田中偉一郎さまが展開する「ストリート・デストロイヤー」。
ちなみに、こちらが本家。
的確にひび割れを捉える拳。そこへと力が一直線に向かう構え、腰のポジション。ため息が出るほど美しい……。もはや“型”を通り越して、“道”。
人間の美しさや力強さを表現したというならば、それこそダビデ像に軍配が上がるかもしれない。けれど、そこにユーモアとクリエイションを掛け合わせたストリート・デストロイヤーは、もはや現代における美学的思想の象徴。とは、いささか言い過ぎでしょうか。
こう仰る田中偉一郎さま。
一見、意味のないものに“意味ありげ”な世界を生み出す。古い価値基準が音を立てて崩れゆくこの時代、無意味なことにも、なぜだか新たな価値を見つけようとしてしまう。
でも、きっとそんなことすらどうでもいいのでしょう。
いつもの街角を笑えるアートに! ひびを見つけてポーズを決めれば君もストリートデストロイヤーだ!
この遊びを知ってしまうと、ふと目にした足元のひびや割れを素通りできない。ただ、それだけのことなのですから。
「おやつなトピック」って?
Z世代のインターンから、この道うん十年のベテラン編集者まで、TABI LABO“ナカの人”がリレー形式で担当するコラムです。
「おやつなトピック」
甘いものに手を伸ばす代わりに
小腹を満たすコラムはいかが?