「昆虫」を用いたペットフードが注目されているらしい
「Pet Humanization」という言葉をご存知だろうか?
直訳すれば、ペットの家族化/人間化といったところか。昨今のペットビジネスにおけるトレンドで、要するにペットも家族の一員としてというだけでなく、人間と同じように健康に気をつかい、おいしい食事をとり、豊かに生きようとする考え方だ。
こうしたトレンドが定着した背景には、新型コロナウイルスによるパンデミックで精神のバランスを保つのにペットの存在が重要であることを、あらためて人々が実感したことが大きい。現に、アメリカではパンデミックのさなか、およそ2300万世帯があらたにペットを自宅に招いていたことが「米国動物虐待防止協会(ASPCA)」の調べで明らかになった。
そうして、現在ペットフードにおける高品質化、健康志向が進んでいる。こうしたある種“プレミアム化”は、市場を大きく成長させる要因ともなっており、ペットフード業界だけみても2026年にはおよそ820億ドル(約11兆円)規模まで成長するとの推測もある。
そんななかで今年5月に開催された国際ペット産業展「Zoomark International」において、フランスのメーカー「Ÿnsect」から驚きの新ブランドが発表された。
「Sprÿng」、それは昆虫を用いた新たなペットフード。
ミールワームをベースにつくられたSprÿngは、環境負荷が少ないことが特徴だ。一般的にペットフードの原料として用いられるビーフやチキンといった動物性タンパク質と比較しても、排出される温室効果ガスは極端に少ないという。
ある研究によれば、ミールワームに2kgの餌を与えるだけで1kg相当の食用タンパク質を得ることができるそうだ。これをビーフで同じ量のタンパク質を生産しようとした場合、およそ10倍の食物と飼育スペースを必要とし、約18倍の温室効果ガスを排出することになるというから、数字だけ見てもたしかに環境上の利点は大きいと言えよう。
需要増加、健康志向、そして高まる環境への意識は、徐々に「ペットフードにも昆虫食」という考え方をスタンダードへと変えようとしているのかもしれない。
昨今、昆虫食におけるアレルギー問題が懸念されているが、犬や猫をはじめとするペットには、はたして問題ないのだろうか?
「Pet Humanization」があくまで人間主体の考え方であることは理解しつつ、ペットフード業界も大きな転換点を迎えていることは確かだろう。