登頂は、さらに困難な偉業に……。エベレストが新たに身につけた「予測不可能な気象条件」

いま、ヒマラヤ山脈での登山がますます困難になっている。

米『ABC News』によると、今年の登頂中の事故による死者は17人。これはシーズン平均である4~6人に比べ、明らかに異常な数字だ。

理由は複合的なものと考えられるが、ネパール政府は死者が多発した主要因を気候変動の影響としている。

ヒマラヤ山脈での登山をより困難にする気候的な要因は、いくつか存在する。

まず、 巨大な氷河が安定性を失ってしまったこと。

最近の研究より、ヒマラヤの氷河は年々薄くなっていることが明らかになっている。ある研究者によれば、ヒマラヤ地域一帯を襲った大幅な気候変動が、氷河の後退と永久凍土の融解を引き起こしているそうだ。

ヒマラヤ付近の一般的な登山ルートは氷河に依存しているため、現在は氷河の安定性が欠けたことで利用が困難に。登山者は、常に手探り状態で前進することを余儀なくされているという。

次に登山客を困らせるのは、気象パターンの複雑化だ。

ヒマラヤの気象条件は以前にも増して不安定になっており、登山客は安全な遠征を計画することが困難に。

例年では、5月15日〜30日の間、モンスーンの季節が近づく影響でエベレスト山頂に存在するジェット気流が押しのけられ、その地域の風が奇跡的に弱まる“魔法の時期”があるらしい。

しかし、気候変動の影響でそんな魔法の時期のタイミングも不安定になってしまい、信用しづらくなってしまったのだそう。

専門家によれば、これらの影響はヒマラヤ山脈に限らず、世界中のほとんどの氷河山岳地帯で起きているという。温暖化が進むにつれ、標高の高い山に挑戦するリスクはますます高くなってしまうかもしれない。

TABI LABO編集部

ベテラン登山家でも、気候変動まで読み取るのは至難の業に思います。

変わってしまった気候を元に戻すのは難しいですが、人類は不安定な気象パターンに対応していく術を、新たに身につける必要がありそうですね……。

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