神経科学者が唱える、意外にストレスが多い
年末年始を乗り切るための3つの方法
年末年始、いかがお過ごしだろうか。
仕事や学校から逃れてやっとリラックスした時間を過ごせると思いきや、実際は帰省や旅行の予定がぎっしり詰まっていてパツパツ……なんて人も多いはず。
それもそのはず。この時期の私たちは、案外多くのストレスや不安、フラストレーションを経験するのだ。
では、具体的には何がストレスをもたらし、脳のどの部分に影響を与えているのか?『The Conversation』が公開した生物学教授シーナ・マシュー氏の見解を基に、場面ごとにご紹介。
Case1. 旅行中のストレス
旅程の遅延や、混雑した空港、渋滞した高速道路……。積み上げられていく小さなストレスは、あなたが家族や友人と過ごす時間を静かに蝕んでいく。
このような種類のストレスに関与しているのは「視床下部」だという。
視床下部は脳の底部に位置しており、自律神経系を調整する機能をもつ。飛行機の遅延や欠航の知らせなどの急なストレスを感じたとき、視床下部では「コルチゾール」や「エピネフリン」などのストレスホルモンの放出が刺激され、発汗やフラストレーションなどの生理学的反応を引き起こすそうだ。
そんな時に役立つのは、深呼吸。
当たり前のように思えるが、焦っている時は意外と忘れがちな動きだ。ゆっくりと深呼吸をすることで副交感神経系が活性化され、神経を落ち着かせてイライラを軽減できる。何事も、まずは落ち着くことから。
Case2. 家族とのストレス
休暇中に家族と集まると、性格の対立や未解決のアレコレ、気まずい家庭関係が生じて溜め息が出るような場面もある(かもしれない)。
このような複雑な感情を生み出すのが、「前帯状皮質」という独特な領域。
認知プロセスの監視と調整、対立解決、エラー検出に特化しているこの領域では、期待と結果の間に矛盾がある場合のフラストレーションを処理する役割を担っている。
このような状況でイライラしている時には、否応なし。その場から離れて短い「休憩」を取ることが大切になる。
気持ちを落ち着かせることで新鮮な視点が得られ、より明確な考え方で立ち直ることができるそう。これもまた斬新なものではないが、科学的に証明されているのだから信頼性は間違いないだろう。
Case3. 孤独によるストレス
いやいや、一緒に過ごす人もいないし特に予定もないんだけど……という人も一定数いるはず。
または、仕事に追われて休みが取れず“ソロ年越し”となる人もいることだろう。そんな人たちは、心のどこかに孤独感や孤立感を秘めているのではないだろうか。
こうした状況には、「デフォルトネットワーク(DMN)」という領域が関連する。
このネットワークは扁桃体を含む脳領域で構成され、将来の計画や回想、想像などの思考に関与している。特に扁桃体は大脳辺緑系の一部で、予定が思い通りにならないイライラ刺激に対する「否定的な感情の処理」を行う。
そこでマシュー氏がオススメするのは、定期的な運動習慣をもつこと。
関係ないじゃん……!と思ってしまうが、気分を改善しフラストレーションを軽減するにはコレが最適らしい。中でも、有酸素運動は扁桃体間および扁桃体内の接続を調整し、憂鬱感を軽減することが研究で分かっているそうだ。
結局は、周りは変えられないから自分が変われ、といったところか。
これらの実践法は、どれも簡単で、すぐに実行できそうなものばかり。
「覚えておくべき最も重要なことは、脳のトレーニングは“短距離走ではなくマラソンに近い”ということだ」と、マシュー氏は語っている。
問題の根源を特定して自分なりの対処戦略を見出すことに集中すれば、時間の経過とともに必ず解決できるそうだ。
それでは、ストレスから解放された素晴らしい年末年始を。