90歳で修士課程を卒業「生涯学習」を体現するミニー・ペイン
過日、ノース・テキサス大学で行われた卒業式にて、ある卒業生が注目を集めた。
彼女は、90歳のミニー・ペインさん。高校を卒業してから73年後の2023年に「Interdiscipinary Study」の分野で修士号を取得。れっきとした“卒業生”だ。
同大学で修士号を取得した人としては、歴代最年長である。
ペインさんのアドバイザーを務めたノース・テキサス大学付属のビリー・レスラー大学院副学部長は、彼女が生涯学習者を体現していると讃えた。
そんな偉業を成し遂げた彼女は、一体どのような人生を送ってきたのか。なぜ、ここまで“学び続ける”ことを辞めなかったのだろう。
生涯学習時代の到来が叫ばれる昨今、ペインさんが考える「学び続ける」ことの意義には、人生における欠かせないヒントが散りばめられていた。
サウスカロライナ州の織物工場で働く貧しい家庭で生まれ育ったペインさん。幼少期は教育とは無縁だった。1950年に高校を卒業して短期大学に少し通った後、不動産会社に事務員として勤務を開始。その後、亡き夫デールと結婚した。
2人の子どもが生まれるまでは、サウスカロライナ州産業委員会の法廷記者として従事。数年間の専業主婦ののち、臨時教師として復職。教師を辞めた後も30年間、法廷記者、テープ起こし、代用教員など、いくつかの業種に就いたようだ。
68歳のとき、彼女は人生における大きな転換点を迎えた。続けてきた仕事から完全に離れ、テキサス女子大学に入学。
「いつも言葉を使って仕事をしていたし、文章を書くのも好きでした。それでも学校に戻ることを決意しました。自分自身をもっと向上させたかったから」
地元ニュースメディア「WRAL」にそう振り返るペインさん。そうして2006年、御年73歳となった彼女は大学を卒業、一般教養の学士号を取得した。その後、ふたたびフリーライターとして活動を始めたというのだから驚き。
だが、彼女の学ぶ姿勢はそれだけでは終わらなかった。今度はジャーナリズム修士号取得を目指し、ノース・テキサス大学の修士課程に進むことを決意。体に鞭打って、徹夜で勉強をした日もあったそうだ。
いったい、なぜそこまでして修士課程にこだわったのだろう。
ペインさんは語る。自分と自分のまわりの人たちの人生をより良くしたいという強い信念が自身を突き動かしていた、と。
こうして昨年、修士課程を修了した彼女だが、学び続ける志に終わりはないんだそう。これからも、何らかの形で学びを続けていきたいと大学側に話しているという。
人生100年ともいわれるこの時代、アンラーニングを続け自身をアップデートし続けるペインさんの姿勢に何を思うだろう。
日々是精進──。
言うは易く行うは難し。誰もが理解していることを生涯学習の精神で体現するスーパーおばあちゃん。学びを止めない、その意義とは何かをいま一度、自身にも問うてみたいと思う。